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第1話ー2

 私は、さい美奈陽みなひ。新緑高校の二年生で、生徒会長を務めている。両親は十年前に亡くなり、去年の春までは施設で暮らしてきた。今は、学校の寮で一人暮らし。


 均整のとれた体型で、出るべきところはある程度出ているし、締めるべきところは締めている。身長は170センチ程度で、女としては大きい方だけど、ただそれだけ。スカートは規定の長さだし、外に出ることが多いので、髪は日焼けして茶色がかっているショートカット。


 特徴と言えば、それぐらいかな? ――ああ、そういえば、友人と呼べる人がいない。表面的な付き合いはあるけど、親しい人はいない。


 それは、世界の崩壊日から復興が完了するまでの10年間、私は一人で生きてきたから。




 日本は、政治家が満足に活動しないことから、大半の土地が無法地帯になっていた。ひどいところでは略奪が横行していた。弱い者が虐げられ、強い者が生きるという弱肉強食の世界。


 両親が亡くなり、また孤児が入所できる施設のほとんどがなくなっていたので、私を護ってくれる人は誰一人としていなかった。


 私は、世界の崩壊日に出会った?神?から現れた青年に、もう一度会いたかった。その一心で、私は生きてきた。貰ったペンダントを肌身離さず持ち、使えるものは何でも使い、生きるためには何でもしてきた。


 だからこそ、私は何でも一人で解決してきた。もちろん、一人にできることは限りがある。だけど、他人に頼らないことで、裏切りを受けることもないし、油断や甘えというものを覚えずに済む。


 そのせいか、必要以上に人と親しくすることを避けてきた。施設の人とも、まったくやりとりはない。今では施設に名前を登録してあるだけで、学校が長期休暇の期間に入っても、去年から一度も戻っていない。


 でも、後悔はしていない。他人から見れば、私が一人ぼっちの哀れな小娘に思えるとしても、それが私なのだから。そして、最後に頼れるのは、やはり自分なのだから。


 それから、今私がいる場所は、A県新緑町の国立新緑高校。A県に唯一ある高校。


 10年前――西暦2030年。未知の機械による侵略によって、日本の半数以上の都道府県が壊滅した。A県も多大な損害を受け、大半の市町村が消えた。しかし、新緑町は、奇跡的に損害が軽微な場所だった。


 そして、現在――新西暦10年12月の日本は、10年が経ったというのに、未だに復興を遂げていない。他の国は、その半分以上が復興を完了しているというのに。


 その違いは、決断力にあった。


 全世界は、規模の大小の差はあるものの、多くの道路が荒れ果てていた。そのため、大型の工作機械を運用することができず、復興作業は主に人の手によるところが大きかった。


 でも、鹵獲した使い魔を解析して得られた知識によって、科学技術が格段に進歩した。非常に高性能なパワードスーツや、人間よりも遙かに効率よく作業する、使い魔を基にした人型ロボット――リバイブ。これらは場所を選ばず、また従来の大型工作機械を遥かに上回る成果を上げた。


 そういった機械が開発され、大半の国の復興はわずか1年程度で完了したが、日本は、そうはいかなかった。


 パワードスーツの類の開発は、日本が最初に成功したが、その活用ができなかった。政治家たちは、他の国がやっていないことや、敵の技術だからということで、頑として復興に役立つ機械の製造に力を貸さなかった。


 仕方なく、民間の手だけで復興に取り組むが、機械の量産体制が整っていなかったこともあって、中々進まなかった。


 結果として、日本が復興を果たすまでには10年の歳月がかかった。しかし、復興できたのは損害が軽微な都市――A県を含めたわずか10程度の都市だけ。かつて原子力発電所の事故で汚染されたB県や、世界の崩壊日で完全に消失した残る30余りの都市は、未だに復興がなされていない。


 そこで、私は政府に期待せずに、学校としてできることを考えた。次の冬休みに暇な人たちをかき集めて、各地に手伝いに行くことを計画した。今日の会議は、その計画を練りこむためのものだ。

 ただ、会議には、私にとって悩みのタネが2つある。1つは予算。そして――




 生徒会室に着くと、そこには既に、他のメンバーがそろっていた。


 会計のじん守人もりとと書記のだん涼姫りょうひは、席に座らずにイチャついていた。


「かいちょー。遅すぎませんかー? 生徒の模範たる会長がそんなんで良いんですかー?」


 涼姫は、私の方を見ながら嫌みを言ってきた。


「ちょっと、団さん。会長だって、色々忙しいんだから仕方ないだろ?」


「だってー、あたしたちもう20分も待ってるんだよ? ちょっとぐらい言ったって良いじゃない。そうでしょ、守人君?」


 たしなめてくる守人に涼姫が抱き着く。


「や、やめてよ団さん。これから会議なんだから」


「えー、だったら、会議が終わってからなら良いんだよね?」


「そういう意味じゃなくて……、ていうか胸が……」


「胸が、なーに?」




 これが、もう1つの悩みである。


 陣守人。――私の幼馴染で同い年。身長は私と同じか少し高いくらいで、一言で表すなら地味。性格は真面目で、制服を着崩すこともなければ、染髪やピアスをすることもない。短く切りそろえた頭髪で、清潔感のある格好。細かい所に良く気が付いて、私も結構助けられてきた。優しくて好感の持てる人物だけど、押しに弱く、優柔不断なきらいがある。


 彼は私の自宅の近くに住んでいたけど、世界の崩壊日の少し前にA県に引っ越してしまった。去年、新緑高校に入学した時、たまたま同じクラスに割り当てられていたので、入学式で再開した。私とは違って家族が存命で、幸か不幸かで言うなら、比較的幸せな男だろう。他人とは表面的な付き合いしかなく、友人がいない私に声をかけてくれる、数少ない人物。


 団涼姫。――同じく2年生で、守人とは対照的に、垢抜けた女。背は私より低く、多分160センチ強ぐらいだろう。髪は金髪をツインロールにしていて、両耳にピアスをつけているし、スカートは非常に短い。


 けど、彼女は見た目に似合わず、中々に使える人材だ。私の視界にいる時は遊んでいるようにしか見えないけど、会議では建設的な意見を出すこともある。


 ただ、なぜか彼女は、私に絡んでくる。最近では、守人にまでアプローチをかけている。


 正直なところ、なぜ彼女が守人に手を出すのか理解できない。涼姫はスレンダーな美人で、いわゆるモデル体型だ。おまけに父親が政治家、母親が資産家で、引く手数多なのだ。


 加えて、私とは違って人付き合いが上手く、今までにも良い男とたくさん付き合ってきたらしい。なのになぜ、彼女の気質からして、一緒にいても楽しいとは思えない守人に手を出すのか。


 いや、そんなことは些細なことだ。問題なのは、生徒会室で、あんなにべったりとくっついていることだ。さすがの私も、沸点に達した。


「あ、あなたたち、真面目な議論をするこの部屋でイチャつくなんて、どういうつもり!?」


「す、すみません、会長」


 守人は涼姫を突き放し、席に着く。


「お堅いかいちょーですね。別に、ちゅーとかしてたわけじゃないのに……」


 ベロを出しながら、同じく涼姫も座る。


「はあ……。それでは、会議を始めます」

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