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第5話ー4

 生徒会室を出た僕は、まず電話をかけた。団さんの携帯電話は電源が切られているのか、それとも壊れているのか、つながらなかった。


「……おかしい」


 いかにも、何か怪しいことに関わっているような臭いがしてならない。彼女は僕と同じように寮に住んでいるが、おそらく今はいないだろう。


 実家かどこかに隠れられたら、探しようがない。特に彼女の場合、父親の職業柄様々な人間に狙われる危険があるので、学校でもその個人情報はトップシークレットにあたる。いくら彼氏だと思われている僕でも、教えてもらうことはできない。


   *   *


 午後6時。仕方なく、僕は帰路に立つ。司法機関を使ってのアクセスも、時間帯的に出来なさそうだからだ。


「……美味しそうな匂い」


 帰る道中、商店街に差し掛かり、甘い匂いが漂ってきた。色々考え事をしたせいか、異様に甘い物が食べたくなってきた。


「えーっと……」


 商店街には、飲食店の類がそれなりにある。僕は、キョロキョロと回りを見渡し、あるものが目に付いた。甘い香りを漂わせる、クレープ屋だ。


「すいません。バナナチョコください」


 一番安い品物を注文し、代金を支払う。バナナにチョコが絡んだクレープの甘さは、今日の疲れを吹き飛ばしてくれた。


 立ち食いを楽しんでいると、どこからか見られているような気がした。


「じー」


 後ろを向くと、擬音を口に出す子供がいた。銀髪の10歳ぐらいの少年だ。ダウンを着ているが、下は半ズボンで、寒くないのだろうか?


「じー」


 その子供は、僕が食べているクレープを見つめている。


「……」


 どうしようか。今食べているクレープは、既に半分以上僕の胃袋に収まってしまっている。あげても良いけど、なんとなくそんな気になれない。


「じー」


 どうしよう。僕が躊躇していると、子供とは別の視線が刺さってくる。よく見ると、その視線は、他の下校途中の学生から送られていた。


 逃げ出したいけど、周りの視線が痛くて逃げられそうにない。


「じー」


「……食べる?」


 食べかけのクレープを差し出した。


「半分じゃ足りないから、まるっと全部食べたいなー」


 要は『買え』と言いたいようだ。


「はあ……すいません、もう一つバナナチョ――」


「バナナチョコじゃなくて、一番高い、ロイヤルフルーツフラッシュください」


「な……!?」


 注文を遮って子供が注文した品は、通常より大きめの生地に多くのフルーツとアイスを入れ、店の特製ソースを絡めた、極上の一品。1000円もする、お金持ちが注文するような品。


「すいません、それキャンセル――」




「それを奢ってくれたら、良い情報あげるよ? たとえば、美奈陽おねえちゃんのこととか」




「え?」


 バナナチョコにしてもらおうとしたところ、子供は微妙に大人びた声で、僕に囁いてきた。その意図を考えようとしたところで、子供の手にバカ高いクレープが渡っていた。


「ああ……」


 泣く泣く、1000円を払った。僕の数少ない仕送りの生活費が……。今月を乗り切れるだろうか。

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