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第5話ー1

 1月8日火曜日。僕はいつものように、午前7時に起きた。4日前からの見舞いであまり寝ていないはずなのに、身体は習慣通りに起動してくれたようだ。


 洗面所で顔を洗って歯を磨き、制服に着替える。それからベーコンエッグを焼いて、パンをトーストし、食べる。


 いつも通りの行動。なのに、僕はミスをした。卵を焼く時に黄身を破いてしまうし、塩もかけ過ぎた。おまけに、ベーコンエッグを口に入れると、ジャリッという食感がした。僕は、不味い食事を泣く泣く食べている。


 こんな失敗をした原因は分かっている。それは、いつも冷静な会長――彩美奈陽が、突如怒り出したこと。その理由が、未だに分からないから。


 僕が、何か不用意なことを言ってしまったのかもしれない。そういえば、彼女は犯罪が発生しなくなったと報告しても、あまり嬉しくなさそうだった。


 何故だろう? 確かに、彼女はレイプされかけて、それは相当ショッキングなことだったけど、それ以外の何かがあるような気がする。


 考えてみても、結論は出なさそうだった。



   *   *


 食べ終わると、時間はいつの間にか午前8時を回っていた。僕は慌ててバッグに必要な物を入れて、寮を後にした。


 寮を出た後は、僕はそのまま学校に向かう。商店街には弁当屋もあるけど、別に学食で暖かい料理が食べられるし、値段も大差ない。だから、僕は商店街を素通りする。


 なので、徒歩10十分弱もあれば学校に着ける。でも、たいてい20分はかかってしまう。それは、あの人がいつも絡んでくるから。


「そろそろかな?」


 僕を遅らせる原因である人物を警戒し、周りを見る。でも、毎回定刻に出ている僕に合わせて来る彼女は、今日は現れなかった。


「……あれ?」


 喜ばしいことではあるけど、理由が分からなかった。いや、そもそも彼女が僕に絡んでくること自体、理由は分からない。けど、毎日続けているのに今日に限ってそれがないということは、不思議だった。


 そして、不思議なことはさらに続く。同じ学校の生徒と思われる少女とすれ違ったのだけど、やけにオシャレな感じで、目に付いた。それだけじゃなくて、横顔が想い人のような気がしたので、確証もなく、直感で尋ねてみた。


「会長?」


 呼ばれた少女は、僕の方を振り返る。その姿は、これまでの美奈陽とは一変していた。




 まず、髪がまったく違う。今までは耳にかかる程度の茶髪だったのが、今は腰まで伸びた緑色のストレートヘア。


 次に、今まではやけに規則に縛られてたのに、結構露出が増えてる。ニーソックスが結構長くなってるけど、スカートが異様に短くて、やけに脚に目が行く。それだけじゃなくて、胸も谷間が見えるぐらいボタンを開けてるし。


 さらに、今まではアクセサリーの類をつけていなかったのに、両耳にはイヤリングがある。宝石が4つ、鎖で直線状に繋がったもので、左耳には赤、黄、白、青緑色。右耳には、青、茶、黒、暗緑色と、やけにカラフルなものがつけられている。ここまで派手な格好は、今までオシャレにあまり気を使わなかった彼女からは、想像もつかない。


 それに、結構な傷を負っていたはずなのに、普通に歩いている。栄養補助食品と飲料水を入れたビニール袋を提げていることだけは、今まで通りだが……。




「おはよう、守人君」


「お、おはようございます、会長。怪我はもう良いんですか?」


「ええ、もう大丈夫よ。そろそろ始業時刻だから、急いだ方が良いわよ?」


 そう言うと、美奈陽は軽く早足で、学校とは逆方向へ去っていく。


「一体、どんな心境の変化が? それに、学校は?」


 昨日はあんなに怒ってたのに、今日はわざとらしいぐらいに、愛想の良い笑顔をしていたことが気になった。

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