第4話ー2
だいたい30分くらいで、事情聴取は終わった。
一応、私が9人の男たちをボコボコにしたことは問題になった。けど、あきらかに私が不利な状況下で、先手を打って攻撃したことは十分正当防衛の範囲内だった。だから、起訴されることはないだろう、と警察官は言っていた。
簡単な事情聴取を終えると、看護師が再び入ってきた。
「お疲れ様です。あと、彼にも一言かけてあげてくださいね。施設の方に連絡しても来れないということで、彼がずっと見守っててくれたのですから」
「彼?」
誰だろう? 疑問符を浮かべると、その人物は恐る恐る病室に入って来た。
「大丈夫ですか、会長?」
守人は、3日前から待ち続けていたと言うだけあって、目のクマが濃かった。寝てないわけではないようだけど、その顔色から、どれだけ私を心配してくれたのかが伝わって来る。
率直に言って、嬉しく思える。自分から他人を寄せ付けなかったとはいえ、唯一彼だけが、私を気に掛けてくれていることに。
「とりあえずは、ね。なぜか身体が動くから、すぐにでも身体を動かしたいと思うけど」
左腕を見せて、軽く揺らして示す。
「そうですか。でも、当面は僕たちで何とかしますから、会長は安心して療養してください。犯人は捕まってないけど、事件は沈静化しましたから」
「事件が沈静化?」
おかしい。そもそも、事前の情報では犯人は一人だけのはずだったのに、先日の暴漢は10人だった。いくらなんでも、情報に齟齬があり過ぎる。それに、事件から3日しか経ってないとはいえ、完全に事件が起きなくなると言うのも、妙だ。
「会長?」
思案に暮れていると、守人は私の顔を覗き込んできた。
「な、なにかしら?」
「いえ、大変な目に遭われたから、心配で。どうにか間に合ったから良かったですけど」
「……間に合った?」
どこが、間に合ったというのだろう。瀕死とは言わないけど、私は結構な重傷を負った――らしい。いや、なによりも、私はあの大事なペンダントを失ってしまっている。どこが、間に合ったというのか。
「か、会長?」
「……はい?」
守人の顔が、困惑に染まっている。
「何? 守人君」
「ど、どうしてそんな怖い顔をしてらっしゃるのですか?」
「怖い顔? どうしてだと思う?」
「わ、わからないです」
「そう。なら、教えてあげるわ」
「――あんたのせいで、私が大事な物を失ったからよ!」
左手で、近くにあったコップを投げつける。
「どこが間に合ったって言うのよ!? ふざけないで!」
近くにある物を手当たり次第に掴み、すべて投げる。
「出てって!」
最後に花瓶を投げたところで、守人は退散していった。




