第4話ー1
雪がすべてを包み込み、世界は真っ白に染まっていた。だが、それは爛々と輝いていた。
「これは何?」
手渡された物の美しさは理解できる。けど、それを私に渡すのはなぜ? 彼は、答えた。
「これは、御守り兼目印さ。これがあれば、いつかまた、君と会える日も来るだろう」
「ホント?」
「ああ、本当さ」
私は、彼の言葉を信じ、渡された物を肌身離さず身に着けておくことにした。一番大切な物。だけど彼は、それを否定するようなことを言う。
「でもね、美奈陽。これはあくまでも、物に過ぎない。物に固執してしまうと、代わりに大切なモノを失ってしまうかもしれない。決して、命や、他に大切にするモノと引き換えにしてはいけない。覚えておいてくれ」
「良く分からない……」
命は分かる。だけど、他の大切なモノとは何だろう? 頭を傾げる私の頭を、彼は優しく撫でてくれた。
「分からなくても良い。大きくなったら分かるから。だから、それまで――、――」
彼の声が聞こえなくなってきた。
「君が――なったら――、私の――」
何? 何を言っているの? 聞き返そうとしても、彼の声は聞こえない。彼は、踵を返して行ってしまう。
* *
「待って!」
雪景色があったはずなのに、目の前にあるのは狭い個室。部屋の中は薬品の匂いで満ちていて、窓から陽光が差し込んでいる。私は患者服を着て、ベッドに横になっていた。
ここは、どうやら居住区にある病院の様だ。
「つ……!」
突然、右腕に痛みを覚える。……そうだ、私はあの集団に襲われたんだ。その時、右腕をナイフで刺されて、それが痛みを発しているんだ。襲われた時のことを思い出していると、私はふと重要なことに気が付いた。
「……はっ、ペンダント!」
胸元を開いて見るが、そこにはペンダントはなかった。
「……………………取り返さなくちゃ!」
「ダメですよ、動こうとしちゃ」
ベッドから降りようとしたところで、看護師が入って来た。
「足の骨にヒビが入っていますし、右腕も動脈を切っていたんですから、動かしてはいけません。それに、両腕の筋肉が断裂しています」
「ヒビ? 断裂?」
そんなはずはない。そこまで酷かったら、さっきも服のボタンを外すことすらできないはず。
言われた箇所を確認してみると、確かに、右腕には縫った跡がある。でも、起きた時ほど痛みはないし、今では多少痛みがあるような気がするだけで、動かすのに支障はなさそうだ。
他の箇所も同じようで、特に問題はない。足を適当に動かしても、特に不都合はない。
「あれ? おかしいですね。搬送されてきた時には、ひどい怪我だったのに……まあ、後で再検査をしましょう。それで、彩さん。警察の方が見えていて、目覚めたら話を聞きたいということですが、よろしいですか?」
警察? そういえば、私が気を失う直前、警察官の姿を見た気がする。ということは、その事情聴取ということか。再検査もあることだし、時間的な不都合はない。
「良いですよ」
「分かりました。お呼びしますので、少しお待ちください」
看護師が扉を開くと、警察官らが待っていたかのように、入って来た。
「彩美奈陽さんですね? 3日前の事件についてお聞きしたいことがありますが、お答えいただけますか?」
「……ええ」
事件から3日も経っていたことを、今知った。




