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第3話ー12

 午後7時ごろ。私は、再び学校に戻ってきた。持ってきたのは、懐中電灯にホイッスル。できれば武器を用意したいところだったけど、さすがに包丁を持ち出すわけにもいかず、地獄を生き抜いてきた経験を信じて、徒手空拳で臨む。


 数分ほど待つと、守人と涼姫が遅れて来た。彼らもまた、私と同じ道具を持っている。


 お気楽な涼姫が他に何も持ってないのは分かるけど、あれだけ反対していた守人が同じ持ち物なのが不思議に思える。きっと、1人でなければ対応できると思っているからだろう。


「それでは、見回りを始めます」


 私を先頭に、まずは教育区の見回りを始める。もっとも、この時刻では、教育区にいるのは大学の研究者ぐらいなものだから、この地域を見回る必要性はさほどない。


 下校時刻を過ぎてもまだ学内にいる学生や、商店街で遊んでいる学生に注意をして、下校を促す程度のものだ。




 午後8時ごろ。一通り教育区を見回ったので、次は商業区に行く。


 商業区は、教育区とは違って、仕事帰りの人がそれなりにいる。特に狙われているのが1人でいる人であることから、私たちは該当する人物を探し、人通りの多いところまで同行する、という活動をすることにしていた。


 この活動は、それなりの成果を上げることができた。最近の事件の多発から、皆用心して2人以上で帰路に着いていると思っていたのだが、1人でいる人は意外にも多かった。




 午後9時ごろ。帰宅途中の人がほとんどいなくなったので、私たちは寮に帰ることにした。だが、その途中で、計画段階で危惧していた事態に遭遇してしまった。


 それは、ちょうど教育区の商店街に差し掛かろうとしたところだった。事前情報のように1人ではなく、10人ほどの男たちが商店街の付近で集会を開いていた。彼らの手には金属バットがあり、面構えも怪しそうだ。おそらく、学校からの遅い帰宅者を狙って待っていたのだろう。


 彼らは私たちに気づくと、立ち上がって近づいてきた。携帯電話で警察に連絡する余裕はない。商店街に人はおらず、周囲に人気はないので、ホイッスルを鳴らしても効果は望めない。




「2人とも、逃げて!」




 7人もの差があれば、多少の荒事の心得があっても、勝つ見込みはない。私は逃げの一手を選択し、2人に命じた。事前の打ち合わせ通り、危ない時は逃げるように指示しておいたので、狼狽えて立ちすくむということはなかった。


 私たちは、これまで歩いてきた道を逆走する。幸いにも、その先をしばらく走ると交番があるので、そこまで逃げ切れば、無事に帰宅できる。相手も同じく自前の足、しかもバットを抱えているので、特に問題がなければ、逃げ切れる距離だ。だが、


「うわ!」


 慌てすぎたのか、守人が転んだ。怪しい集団を発見した当時は100メートルほど開いていた距離が、どんどん詰まってくる。


「く!」


 仕方なく、私は守人を拾うために戻る。見ると、足をくじいたようだ。


「ほら、早く立って!」


 守人を起き上がらせて、その背中を押し、私は怪しい集団の方を向いた。


「会長!?」


 守人は立ち止まろうとするが、私はそれを許さない。


「いいから行って! その足だと、すぐに追いつかれる。私がなんとかするから!」


「で、でも……!」


「早く!」


「は、はい!」


 ようやく、守人は逃げ出した。

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