第3話ー11
しばらく議論は続いたが、結局は、アンの提案を採用することにした。
生徒会メンバーが3人以上で、犯罪の発生率が高い商業区と教育区をしばらくの間見て回り、問題がなければ有志を募って他の地区にまで手を広げる、という算段になった。見回りは本日から行われることになり、初日のメンバーは、私、守人、涼姫の3名になった。
会議はこの件についての議論で終わり、守人と涼姫は見回りの準備のため、早々に生徒会室から出て行った。
生徒会室には、私、メイ、アンが残っている。私は、アンに小声で、彼について尋ねた。
「ねえ、アンさん。さっき三人が入ってくる直前にミナハ君がいなくなったけど、彼がどこに行ったか知ってる?」
「あの方なら、すぐそこにいますよ」
アンは、私の方を示してきた。後ろに振り向くと、そこにはミナハがいた。
「やあ、おねえちゃん。ボクをお探しかい?」
「……一体、どこに行ってたの?」
突然現れるミナハに、私は驚くどころか、逆に淡々と聞いてしまった。彼の異常な行動は、私にとっては既に、当たり前になっているのかもしれない。
「ボクは、ずっとそばにいたけど。それにしても、おねえちゃんがイライラしているのを見られなくて残念だったなー」
確かに、この場にいたようだ。珍しく今日は、私はイライラさせられなかった。
「ところで、そこの88のおねえちゃんは、ほっといて良いの?」
88? 誰のことだろうか。いや、私とアンでなければ、残るのは1人しかいない。
「美奈陽さん? その子がなぜ、ここにいるんですか?」
すっかり忘れていたメイが、ミナハのことを尋ねてきた。
「あ、この子はそのー、なんというか……」
突然過ぎて、頭が回らない。アンの時は、なぜかスルーされてしまったが、考えてみれば、聞かれて当然のことだ。対策を考えていなかった私が間抜けだった。
でも、聞くなら『その子がなぜいるのか』じゃなくて、『その子は何者なのか』では?
「ねえ、メイさん。あなた、彼のこと知ってるの?」
質問に質問で返してしまった。テストでこれをやったら零点だが、気になってしまった以上、聞かざるを得ない。
「ええ、知っていますよ。ねえ……ミナハ」
「…………そうだね」
おかしい。いつもなら、セクハラ的なことをしそうなのに、今回に限って、彼がそれをしないなんて。しかも、今の間は何だろうか。
疑問を持つが、ミナハは私の質問に先んじて動いた。
「悪いけど、おねえちゃん。ボクはちょっと、この2人と話があるから、先に帰ってくれる?」
「私がここにいては、何か問題でも?」
私を帰そうとするが、彼の態度が普段とは微妙に違うので、是非とも聞いてみたい。だが、
「申し訳ないですけど、美奈陽さん。私としても、内緒話がしたいのでお引き取りいただけると幸いなのですが」
アンが丁寧に私を追い出しにかかり、
「私も同意見です。美奈陽、あなたは今日の担当ですから、早く帰って準備をしないと」
メイもまた、私を追い出そうとしている。というか、メイとアンも互いに知り合いなんだ。
私としては、3人がどんな会話をするのか非常に興味深いが、3人とも私がここにいることを望まない以上、出て行かざるを得ない。
「分かったわよ。ミナハ君、帰ったら話を聞かせてくれる?」
「……すまないけど、これも、いつか機会が来たらとしか言えない」
「……そう」
残念だけど、彼がそう言う以上、無理強いはできない。私は生徒会室を後にした。




