第3話ー7
「それじゃあ、放課後はよろしくね、美奈陽ちゃん」
お辞儀をして、アンは去って行った。彼女とは、放課後に学校を案内することと、生徒会の会議を見学させることを約束した。
「それにしても、お嬢様だと思ってたのに、中身はかなり違うんだ……」
しばらく話していて、率直な感想がそれだ。外面は絵に描いたようなお嬢様なのに、親しい人にはかなりくだけた感じになっていた。まあ、それは良い。問題は、
「それで、どうして君はここに来たの? ミナハ君」
当然の如くこの場にいるミナハだ。彼の首根っこを捕まえて、尋問にかかる。
「どうしてって言ってもねえ? 別にボクは、おねえちゃんと一緒にご飯が食べたかっただけなんだけど」
「朝は一緒に食べたでしょ?」
「いやー、ボクは寂しがり屋だからね。おねえちゃんと一緒で」
「はあ……まあいいわ。それで、君はこれからどうするの?」
「そうだね。ボクとしては、おねえちゃんとご飯を食べたら、さっさと帰るつもりだったけど、学校での様子を見るのも面白いかも」
微笑を浮かべるミナハ。今回は、学校での私の様子を見て、陰で楽しむつもりだろうか。
無論、そんなことを許すつもりはない。
「帰りなさい」
「えー」
「君は、自分の立場が分かってるの? このまま学校にいたら、そのうち誰かに捕まって、施設に送られることになるのは、目に見えてるわよね?」
「大丈夫だよ。そんなヘマはしないから」
どこからその自信は来るのだろう。でも、いつ学校に来たのかは知らないが、未だに騒ぎになっていないことから、発見されて即連行というパターンはなさそうだ。
「それでも、君がここにいて面白いことはないでしょ? だったら、大人しく寮に戻って、私の帰りを待ってる方が良いと思うけど」
「そんなことはないよ。おねえちゃんが素を隠してクールぶってるところを見て、本性とのギャップを楽しめるよ」
――やっぱり、そういう企みか。
「それじゃあ、どうしたら君は帰るの?」
私は諦めて、妥協案の模索にとりかかる。
彼は、一度決めたことは基本的には曲げない。私がこれ以上交渉しても、すぐには帰らないだろう。妥協案を探す方が得策だ。
「そうだね。それじゃあ、一度寮に戻るから、おねえちゃんが生徒会の仕事をし始めたら、戻ってくるよ」
なぜ? 奇妙な提案を出され、私の頭はクエスチョンマークでいっぱいになる。
「何で、そういう案が出てくるわけ?」
「だって、ボクとしては、おねえちゃんの面白いところを見たいからここにいるわけであって、一番面白いところは生徒会でしょ? だったら、それまではここから消えてあげるってことにすれば、おねえちゃんも多少は妥協しやすいでしょ?」
まさしくその通りだ。かなり不満は残るが、とりあえずはそれで納得せざるを得ない。もうすぐで昼休みも終わりだ。
「分かったわ。とりあえず、寮に帰ってちょうだい」
「りょーかい」
微笑を浮かべて、ミナハは颯爽とその場を後にした。
ミナハのいなくなった屋上で、私はつぶやく。
「やれやれだわ」
放課後が来ないで欲しいと思ったことは、初めてだ。




