第3話ー2
20分後。ミナハに制裁をして浴室から追い出し、私も浴室を出ると、テーブルには食事が並んでいた。
「あらためておはよう、おねえちゃん」
「どうしたの? これ」
私としては、いつも通り、栄養補助食品で軽く済ませるつもりだった。けど、テーブルにはオムライス、コーンスープ、サラダ等が並んでいる。
「おねえちゃんが手抜きしているから、見るに見かねてだよ。おねえちゃんは多分、料理できないから、そういう食事してるんでしょ?」
微笑を浮かべるミナハ。今回は、私の手抜きを非難することと、私の栄養を心配してのもののようだ。
「できないわけじゃないけど、面倒だからしないだけなんだけどね。まあいいわ。せっかく作ってくれたんだから、ありがたくいただくわ」
手を合わせてから、箸をとる。まずはサラダをつつき、続いてスプーンに持ち替えてオムライスを口に入れていく。
「いかがかな? おねえちゃん」
「……美味しい」
正直に言って、ミナハの言う通り、私は料理ができない。大雑把な物なら良いけど、技術が必要なものや、細かい加減が要るものは苦手だ。
それもあって、毎食とも栄養補助食品か外食で済ませている。だけど、あまりよろしくない味覚をしている私ですら、この食事は美味しかった。味付けは、鈍い私でも味が分かるように工夫してあるし、火加減――特にオムライスのとろとろ具合は、虜になりそう。
「君は、料理人でもやってたの? 家庭料理のようなアバウトな感がまったくないけど」
「いいや。ただの、お子ちゃまさ。ただ、障害を負ってからのリハビリの一環として、料理をやってたから、ちょっとこだわりがあるぐらい。大したもんじゃないよ」
「ふーん」
本人にとっては、本当に大したものではないのだろうけど、私には謙遜しているようにしか聞こえなかった。
ちなみに、彼の言う障害というのは、ミナハはかつて、左脳を失っていたらしい。さらに、左脳が再生して、両方の脳が独立して一個の脳として機能しているとか。到底信じられない話だけど、休み中にトランプの遊びを数種類やってみて、その超人じみた片鱗を垣間見たので、私は信じ始めている。
「ごちそうさま」
ミナハの料理は、あまりにも美味しいものだから、ものの数分で平らげてしまった。
「片付けは私がやろうか?」
「いいよ、ボクが勝手にやったんだから。そろそろ学校に行かないといけないんじゃないの?」
空になった食器を流しに置き、片付けようとしたが止められた。実際、登校時間も近いので、私はミナハに従った。
「それじゃあ、私は学校に行くから、留守番よろしくね」
「りょーかい」
トラブルはあったけど、美味しい朝食を食べて、清々しい気分で登校できそうだ、そう私は思った。
だけど、私を送り出す直前のミナハの顔が、例の微笑を浮かべていた。私としては、そこには何らの意図も見いだせなかったので、ただ気持ちよく送り出してくれたのだと思っていた。だが、実際には企みがあったことを、後に知ることになる。




