空の下 冒険者ダカム 外伝1
いつものことだもの。
何気なく空を見上げながらそうつぶやいた。
青いはずの空が少し赤い。
夕焼けにはまだ早い時間だ。
西から小さなものが飛んできていた。
戦闘機だ。
ぼんやりと見ているうちに戦闘機は過ぎ去り、薄紫の空に消えていった。
やがて東の空に煙があがった。
直に見なくてもわかる。また街を攻撃している。
くやしいと思いつつも、自分のいる場所が爆撃されなかったことにほっとした。
そして恥じた。
自分は被害にあっていなくとも、同胞が殺されている。
また生き延びたのだと。
煙はやがて夕日の色とともに消えていった。
ちくしょう。何でこんな事で悩まなくちゃいけないんだ?
戦争を始めたやつらが悪いんじゃないか。俺たちには関係のない事だ。
いくら声高に関係ないといってもいずれは召集される身にはかわりがない。
自分のような一般人は大抵最前線に送り込まれてぼろきれのようになりながら死んでいくのがオチだ。
そう思ったら涙が出た。
必ず死ぬ自分のために。
生きて、死ぬまで生を全うするはずだった自分が憐れに思えて。
その場に膝をつき、たぶん一生のうちに一度だけの涙を流した。
叫んだ。
嗚咽がとまらなかった。
声は誰もいない森に響いた。
答えはなかった。
空全体が藍色に変わりつつあった。
煙の上がっていた方向にはひとつ、星が見えた。
でも。
俺は泣きながら考えていた。
戦争を始めた奴らは俺達の「代表」なんだよな・・・。
上半身を起こし、夕日が沈み、最後の赤が夜の色になるまで、ぼんやりと西の空を見つめていた。
何を考えればいいのか。膝に手のひらを押し付け、いつまでも見ていた。
顔を上げることが出来ないまま、家路に着いた。
家に帰って俺は自分への召集令状を見た。
もう、何も考える事はなかった。
念のため、R15・残酷描写ありの警告を入れてます。