解説 “逆回転の歯車”
そろそろ彼の話をしよう。
名を來生賢人。年齢は18歳。体格は中肉中背。
頭は悪いが身体能力は標準強。
目の前で女性が傷付く事を極端に嫌う。
特技として動体視力が優れている。
『自他共に認める駄目人間』を自称する。
ここまでが彼が自分で認識している來生賢人と言う人間像である。しかし、彼の本質はそんな所にあるのではない。
駄目人間だと、自らを表現するその彼の言葉は奇しくも本質を突いていると言えなくもない。しかし、それは本質と言える中での表層、氷山の一角でしかないのである。
世界に存在する全ての人間を歯車に例えるとするならば、つまりこの世にいらない人間などいないという説を肯定的に捉えた仮定で考えるならば、彼の存在はすなわち『逆回転の歯車』であるといえる。
きっちりと噛み合い、それぞれが互いの動きを補助しながら複雑な役割を作り出す歯車の中に、ポツンと一つだけ独立して逆回転する歯車の様な存在。それこそが彼の本質なのだ。それも、単体で回っているのならばまだしも、その存在は他の歯車と下手に噛み合ってしまうのだから性質が悪い。
いらないどころの話ではないのである。
彼一人がそこに存在するだけで、この世の全てを狂わせる。誰も彼もが彼の前では所謂『いつもの自分』を保てない。誰も彼もが不安定になる。誰も彼もが不安になる。自分は絶対にこんな奴に劣っていないと信じ込みたくなる。信じ込まなければ自我が保てなくなる。
そういう意味での駄目人間。「こんな奴に自分が劣っているわけがない」と、意識的にしろ無意識的にしろ相手にそう思わせる。意図せずして人間の深層心理に自らの存在を捻じ込むような、そんな特性。
彼が謎の声に導かれ世界を渡ってからも、その彼の特性に何人も犠牲になっている。
シュレン=クル=ルグタンス――サレファー=クグ=バリアン――ウェルストン=バダ=ユカール――トール=テン=ハリエニーラ――そして、リザ。
その全ての人間が、彼の前でいつもの調子を崩されている。それは彼らだけではない。その影響は大なり小なり、彼と言葉を交わした人間……否、彼と擦れ違った人間全てに現れている。
そういう星の元に生まれている。神に操作出来る確率の範囲外。天文学的確率なんて生易しい数字を遥かに超越する確率のもと、彼はこの世に生を受けたのだ。
繊細な世界の機構に仇なす存在。いるだけで人の輪を乱す逆回転の歯車。これでは神に、引いては世界に嫌われざるを得ない。
かと言って、全員がその影響を多大に受けているわけではない。一部、殆どその影響を受けていない人物がいる。
語るまでもない。代表例はフィニフィアン・シュルツである。他にも数名。彼の影響にはかなり大きく個人差がある。その差がどこに現れているのか、定かではないのだが……
勿論、世界を渡った程度で彼の本質は揺るがない。渡った先の世界でも、彼は変わらずその『逆回転の歯車』としての性質をいかんなく発揮し、人の精神を狂わせる。
フィニとは違う意味で世界を揺るがしかねない様な存在を、なぜ謎の声の神は彼の世界の神から受け取ったのか……『逆回転の歯車』が新たな世界で何を為すのか、どのような影響を残すのか、それは今はまだ分からない。
すいません、この章の文章に滅茶苦茶手間取ってました。そう、滅茶苦茶手間取ってました。はい、大事な事なので二回言いました。
……ってな感じで、更新が遅れた件について誤魔化されてください^^;
嘘です、ごめんなさい。勿論これからもがんばるので見捨てないでください。
さて、ここにきてやっと、物語の根幹に関わる主人公の特性についてちょっとだけ明かしました。
ちょっとと言いつつ、結構色々言いましたが^^;
まあ章自体は短いですし、実はこの章を読まなくても暫く話の展開で困る事は全くなかったりするんですが(ォィ
実際、この章の最後に言っている通り、物語の進展については一切触れていませんし、こんな主人公とあんなヒロインの『神に嫌われ主人公ペア』がこの先どんな風に活躍していくのか、あれこれ想像してみたら楽しいんじゃないかと思います^^
でもあんまり深読みし過ぎると、浅い展開に失望、なんて事にもなりかねないので程々に……(ぇ
まあこんな感じです。
感想、評価など常に大歓迎ですので、この小説を読んで何か気になった事などありましたら一言だけでも感想ページに残して頂けたら嬉しく思います。
では、今回はこの辺で。