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二十三章 “ルヴィス皇室晩餐会 其の参”

 状況を説明しよう。


場所:豪華でだだっ広いとすら表現できるホール……披露宴の会場?


俺:間抜け……仕方ない


フィニ:可愛い……特記事項無し


目の前の男:名前はウェルストン。気障、短気、フィニに色目を使う、フィニの手の甲にキスをした……百万回殺しても足りない


皇帝:穏やかな顔でウェルストンの肩に手を置いている……ウェルストンの顔が良い感じに青褪めている。ざまぁ



 概ねそんな感じだ。

まあルヴィス皇室晩餐会なんて、いかにも伝統のありそうなこの場で魔術(?)をぶっ放そうとしたのを皇帝に制されているのだから、この世の終わり見たいな顔になるのは仕方ない。


 大体、フィニの手の甲にキスしたりするから、俺の怨念によって罰が下されたのだ。

フィニの手の甲にキスしたりするから……フィニの手の甲にキスしたりするから……フィニの手の甲にキスしたりするから……


 だから、後でネルグラン伯爵にも天罰が下ると嬉しい。


   「二人とも、晩餐会は楽しんで貰えているかな?」


 皇帝にそんな事を問われた。


 正直に言えば楽しめていない。

ありえないくらい浮いていて気まずいし、高級料理の美味しさなんて分からないし(果物とかお菓子の類は美味しい)、挙句の果てにはウェルストンとかいう意味分からんのが出てくるし……


 フィニに目配せをする。が、フィニはいまだ興奮冷めやらぬ怒り心頭の表情でウェルストンを睨んでいた。よほど俺が馬鹿にされた事が許せないようだ……嬉しい。


   「はい、楽しいです。わざわざご招待いただき、ありがとうございます。」


 しかしそこは流石フィニ、皇帝相手に怒りをぶつける様な事もなく、素晴らしい大人な対応で皇帝に礼を言いながら頭を下げた。


   「それは良かった。さて、ウェルストン君。」

   「は、はい……」


 皇帝がウェルストンにゆっくりとした口調で話しかける。肩に手を置いたまま……ってか見てたのかよ。


 ウェルストンはビクビクしながら皇帝に応えた。


   「公衆の面前で我が客人を罵倒し、さらにはこの晩餐会の会場内で魔術を放とうとするとは、当然罰を受ける覚悟はあるのかな?爵位剥奪も当然視野に入れて検討するが?」


 皇帝の言葉は氷のように冷たい。

言葉の温度を測れるのなら、それはもう摂氏何度なんてレベルじゃなく、十二分に絶対零度にまで達していたと言えよう。怖すぎだ。


   「う、それは……」


 ウェルストンが若干涙目になりながらフィニを見る。


 まあ確かにウェルストンにも言い分はあろう。なんたって確かにウェルストンは俺を罵倒したけれど、先に手を出したのは……先にウェルストンの頬を引っ叩いたのは何を隠そうフィニなのだから。


 まあフィニはそのままアッカンベーとか言いながら下を突き出しそうな可愛い表情をしていたが……いや、フィニの性格上アッカンベーなんてやるとは思えないんだけど、これがマジで可愛いんだって!


 というのは可愛らしい描写で、実際のフィニはまだ俺が罵倒された事を根にもった様子でウェルストンを睨んでいたのだが。


   「ふむ。まあ男女の諍いという物はどうしたって感情的になってしまう物だ。魔術も未遂である。」


 唐突に皇帝はウェルストンを庇う様な口上を述べ始める。


 その言葉にウェルストンは光明を見た、というような輝かしい顔を浮かべた。

分かりやすい奴。


   「かと言って、それで不問にしてはフィニ殿も収まるまい。」


 同時に皇帝はフィニの方にも目配せする。


   「さて、どうしたものかな?」


 さらに皇帝が何を言うのかと思えば、特に何も言わず思案するように右手を顎に当てた。

無責任な皇帝である。


 俺としてはどうでもいいのだが、皇帝がこちらの方にかまけているせいで、皇帝に挨拶できていない他の貴族の方々が何とも気まずそうにしている。


 こういう場での皇帝ってさ、なんていうかこう……一段高い所にある豪奢な椅子でふんぞり返ってるもんじゃないの?

何をこっそりとパーティーに忍び込んでいるんですか?


   「フィニ殿。」


 不意に皇帝がフィニに声を掛けた。


   「何ですか?」


 フィニはウェルストンを睨むのに夢中だったためか、やや憮然とした態度で皇帝に言葉を返す。


   「この男、どうしたい?」


 ウェルストンの肩に手を置きながら皇帝はフィニに、まるで夕食の献立でも聞くかのような気軽な口調でそう問うた。


 なんだ?フィニが死刑にして欲しいって言ったら死刑にしてくれるんだろうか?

まあフィニの場合は、フィニが本気で≪死刑≫って言ったら、その場で死刑になっちゃうけどね。


   「ケントを馬鹿にしました。許しません。」


 でも何でフィニは俺が羽蟲呼ばわりされた程度でこんなにも怒ってくれるんだろう?フィニが優しいから?優しいだけで俺みたいなやつの為に怒るか?

それとも、現代で馬鹿にされるのに慣れまくっている俺の感覚が鈍磨しているだけで、実際は『羽蟲』なんていう言葉はブチギレるくらい酷いものなんだろうか?


 でもなぁ……自他共に認める駄目人間な俺だぜ?

羽蟲なんて言われるよりも相当酷い暴言は色々と言われているんだけどなぁ……


   「許さないだと?それはこちらの台詞である!よくも高貴なる私の顔に傷を……」

   「ふむ。色々と言いたい事がありそうだな。」

   「あ、いえ……その……」


 フィニの許さない発言に対してウェルストンは憤慨したが、皇帝の絶妙に割り込んだ言葉に後が続かなくなった。


   「なるほど。両者ともに言い分はあると。」


 いやいやいやいや皇帝さん。

両者の言い分は明らかにウェルストンの方が悪いですよ!


   「貴族は誰も例外なくその背に家の名を背負っている物だ。貴族に対して危害を加えるという事は、いかなる事情があろうと、その家に剣を向けると同じ事。顔に泥を塗られれば、貴族は当然名誉を挽回せねばならないのだ。故に、ウェルストンとて頬を張られれば、家名のためにも怒らないわけにはいかんのだ。」


 俺はよほど不満な表情をしていたのだろう。背後からサレファーが俺に向かって耳打ちをしてきた。


 っていうかいつの間に俺の背後に!?

子供だから体重が軽くて足音がしなかったのか?


   「男女の諍いは当人同士が納得する方法で決着をつけるもの。」


 皇帝はどこかいたずらっぽく俺に向かってニヤリと笑ってからそう口にした。


   「どうやら互いに相手に対して強い敵意も持っている様子だしな。これは、ルヴィス帝国古来よりの伝統として決闘で決着をつけるしかあるまい。」


 ふ~ん。


…………………………………………


………………………………


……………………


…………


……って……ぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええ!!!!!?????

ずいぶん遅れて申し訳ありません(汗

また頑張って更新していきますのでどうか見捨てずにお願いします。

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