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回想 “駄目人間とは俺の事”

 例えば、人よりちょっと勉強ができなくて、人よりちょっとスポーツが苦手で、人よりちょっと変なポリシーを持っている男がいるとしよう……つまり俺だ。


 ちなみにここでいう“ちょっと”とは、蟻と百階建て超高層マンションの身長差くらいだと考えてくれて良い。


 勉強は、平均点が70点のテストで赤点スレスレを低空飛行。平均点が60点を割るようなテストだと一桁だって珍しくない。

お、俺が勉強出来ないんじゃないんだ……周りが出来過ぎるだけなんだ……


 運動についてだが、身体的能力は決して低くは無いと思う。

50メートル走のタイムでいえば5秒台前半を叩きだせる。

高校生としては中々な数値なはずだ。拍手されたし。


 さらに俺には特技がある。

名を『動体視力』……動きながら物を見る力、及び動いている物を見る力だ。

何故かやたらこの力が発達しているらしい俺は、あらゆる物の動きが写真送りゆっくりに見えるのだ。

本気を出して一つの物に集中すれば、130km/hくらいの速度なら止まって見える。


 ただ、生来の不器用さゆえかボールを使った競技など大の苦手。

バットを振れば幼稚園児だってヒットが打てそうなスローボールを空振り、サッカーボールを追いかければドリブル中にボールを踏ん付けて転び、卓球をやった時などボールの代わりに台を打って手首を捻った。

……こういうの、宝の持ち腐れって言うんだと思う。


 高校は中退。大学には行かず絶賛ニート街道爆走中。

何故かというと、つい一週間前、教師の一人を顔の形が変わるまで盛大に殴りまくったからだ。


 うわー……なんという不良……

自分で思って自己嫌悪。

でもあの時は仕方なかったんだ。

あの教師、女の子に暴行しようとしてたし……


 途中で他の教師が介入してきて三人がかりで俺を抑えつけた為に事なきを得たが、もしあのままだったら教師は死んでたかもしれない。

一応女生徒を助ける為だったということで、本来なら警察沙汰になるところを放校処分という温情措置で済んだらしい。

ってか「どうせその成績じゃ卒業できないし、金の無駄だからさっさとやめろ」って親にまで正面切って言われた。

……これはやめざるを得ない。


 そう、俺には『俺の前で女の子が傷つくことを許さない』というポリシーがある。

ポリシーというか、もはや体質という次元にまで昇華しているといっても過言ではない。


 キレるのだ。

女の子が傷つくという状況に遭遇すると、俺はキレてなんとしてでも女の子を助けようとするらしい。

らしい、というのは時々記憶が飛ぶくらい完全にブチギレることがあるからで、今回の教師の件はそれ。


 心配しなくてもほとんどの場合は理性を保っている状態での行動だ。

俺は自分で考えて自分で行動した結果、なんとしてでも女の子を守るために行動をする男なのだ。


 そんなポリシーがあるのならさぞかしモテることだろう、と思うかも知れない。

が、残念ながら彼女いない歴『生まれてから今この瞬間まで(絶賛記録更新中)』である。


 なぜか?

俺が訊きてえ!!


 強いて考えればキモいのだろう。

俺はブサイクではない(と信じている)が、決してイケメンという容姿ではない……中の下といった感じだと自分では評価している……いや、これは重要な事じゃないな。


 俺にとって『女の子を助ける』という行為に特別下心があるわけじゃない。単に幼い頃より女性を守るのは男の務めだと教え込まれていたことが原因である。

しかし彼女たちには、ちょっとしたことでも全力で助けようとする俺が気持ち悪く見えるのだろう。ってか、そうとしか思えない。そうでないと困る。それ以外の原因なんて俺には思い付かない……まあつまり、(良心的に解釈して)俺はせいぜい良い奴どまりなのである。


「ハァ……」


 必殺『溜息トルネード』

効果:幸せが逃げる(自分のみ)


「もしかして、俺って究極の駄目人間なのではないだろうか?」


 と、マイホームの自室で一人ごちる。

週に七回くらい疑問に思う内容だ。


-おい、駄目人間-


 なんか聞こえた。


「誰だ!駄目人間を俺なんて呼んだ奴は!!」


 どこから聞こえたのかも分からない不気味な声に俺はいきり立つ。

馬鹿にされて黙っているほど俺は温厚じゃない。


-逆だ、逆……ツッコミどころ満載な奴め-


 なんか姿無き声にまで呆れられた?


-まあ良い……おい駄目人間、一つ訊いてやる-


 なんか随分偉そうだ。

誰だよ?お前。


-チッ、面倒くさい奴……こっちでは先に名乗らないといけないのか……-


 なんかぶつくさ言ってるけど、名乗るのは重要な事だぞ!


-神だ-


 ありがとう。

どこか遠い世界で幸せになってくれ。


-待て待て!貴様の様な駄目人間に呆れられたとあっては末代までの恥になってしまう!話は最後まで聞け!!-


 仕方ない、聞いてやろう。


-なぜ貴様、そんなに偉そうなのだ-


 聞かなくてもいいんだが?


-うわ!待て待て!話す話す!!話を聞いてくれ!!-


 分かった分かった、焦らなくて良いから。

そんなに俺に呆れられるのが嫌なのか?


-クソッ……まあ良い。我はある世界を支配する神だ-


 ………………寝て良いか?


-駄目だ。さて、名乗ったところで一つ訊いてやる。―


 全然、納得できないんだが……


-黙ってろ。おい駄目人間。貴様、やり直したくは無いか?-


 うん?

どういうこと?


-つまり、勉強はできず、スポーツでは折角の特技を持て余し、おまけに奇異な信念のせいで人には忌み嫌われる……-


 待って!?俺って忌み嫌われてるの!?ショックだ……


-ああ、死んだ方が良いとまで思われてるようだな。貴様、友達いないだろう?-


 言われてみれば、俺に友達……いたっけ?


 ………………………………いない。


「鬱だ。死のう。」


 俺はタンスに仕舞ってあるタオルを適当に捩ると首に巻き付け……


-待て!だから、そんな駄目な人生を別の世界でやり直してみたくはないか?と訊いたのだ!!-


 俺はその言葉を聞き、ゆっくりとタオルから手を離すと、


「やり直したい!」


 即座に答えた。


-良かろう-


 そんな満足そうな姿無き声が聞こえた後、俺の目の前の風景がグニャリと歪み、やがて視界がホワイトアウトした。



…………………………………………


…………………………………


………………………


………………


………



 現在に至る……意味わかんねぇ!!

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