『普通』が終わった日
朝起きて、朝食をすませ学校に行く。学校でも誰にも相手にされずい静かな時を過ごす。家に帰っても一人。そんな「普通」の日々が変わったのは、あの日だった。
いつも通り学校に向かっていると一台の車が飛び出してきた。本に夢中になった私は気づくのか遅く気がついたころには車はもう目の前にあった。ぶつかると思い目をつぶったが、痛みはなかった。ぶつからなかったわけはない。相当なスピードでこちらに向かっていたからだ。恐る恐る目を開けるとその光景は異様な物だった。まるで時が止まったみたいだった。だがそれは一瞬のことですぐにもとにもどったが目の前の車が消えてる。なにかおかしいと思ったが時計を見てはっとした。このままでは学校に遅れてしまうと思い、学校へ急いだ。
学校に着いたころにはもう廊下には誰もおらず、静まり返っていた。教室に入るとホームルームが始まっていた。何事もなかったように席に座ろうとしたが、先生に
「おい宮路、なに勝手に席に座ろうとしているんだ。遅れた理由を言いなさい。」
と怒られてしまった。それに対して私は、
「車に轢かれそうになって。」
と言ったが通じない。
「『車に轢かれそうになった』なら轢かれていないんだろ。だったら大丈夫だろ。とりあえず座りなさい。」
理由を聞いてきたのはそっちだろ。と、思いつつ座ったが、クラスメイトからの悪口がいくつも飛び交う。
「車に轢かれたとか嘘でしょ(笑)。」
とか
「目立ちたいだけだろ。」
とか、いろんな声が聞こえるがいつものこと。
まぁ、メガネの陰キャだし、いじめられているのもしょうがないが、先生が助けてくれるわけでもないし、注意するわけでもない。それに、なにかがおきるとだいたいなにも関係がなかったとしても、私のせいにされて説教される。
いじめの内容は酷いもの。弁当捨てられるのは勿論のこと、体育倉庫に閉じ込められたり、暴力、暴言など。
学校ではいつも一人だから、本を読んでいる。
そんなことを考えているうちに、ホームルームが終わり、1時間目が始まった。1時間目は、校庭で高跳びだった。私は運動が得意な方ではなく、むしろ下手でいつも周りに笑われる。そんなことには、もう慣れたけど、一番低いところに行こうとすると、いつものように色々言ってきた。
「あんたさ、一番低いところに行くつもり?ダッサ。」
「まぁ、低いところでも飛べないだろうけど。」
別に気には留めない。そうやってからかわれたっていい。
「ちょっとあんた聞いているの?!」
聞いていないふりをしていると、私の眼鏡をとりあげた。
「返して!」
そう訴えかけても、相手は気にもとめない。
「なら、あんたぁ、この眼鏡をかえしてほしかったら、あたしよりも高いところを跳んでみなさい!」
すっごい小学生みたいな脅し方。と思ったが口をつぐむ。
それよりも眼鏡を返してもらわないといけない。
「わかった、やるよ。」
ということで、私は高いところを跳ぶことにした。
ちなみに相手が先で、130センチを跳ぶらしい。
タッタッタと助走の音が響く。ポンっと着地した。跳んだようだ。
これで私は130センチ以上を跳ばなければならなくなった。
「あんたは、150センチを跳んでみなさい。できないだろうけど(笑)」
助走に入ろうとすると、急に身体が軽くなった。
なんだか跳べる気がする。だが、この感覚は今朝も感じた。
周りの視線が私に向く。タタタタタッと助走をつける。
そのまま、勢いよく踏み切り、片足をあげ着地する。跳べた。
相手は私が跳んだことに驚いているが、私自身も驚いている。
「負けたから…、眼鏡を返してあげる。次こそは!」
そう言ってほかのところに行った。その後に150センチを跳ぼうとしたが跳べなかったから、やっぱり不思議なことが起こっていると確信した。
だが、これだけでは終わらなかった。
「みんな気を付けて帰れよ~。」
とホームルームが終わり、先生がそう言った。私は席をたち教室を出ようとすると後ろから悲鳴が聞こえた。
「ギャァァ‼」
驚いて振り向く。そこには苦しそうにもがいている女子クラスメイト、その後ろには足がない女の人がいた。ただ恐怖は感じなかった。周りには見えていないらしくもがいている彼女に野次馬が集まっている。その女の人は音もなく移動して、一人の男子の肩をポンと叩いた。すると、その男子ももがき始めた。
二人が突然もがき始めたことで、教室は騒然となった。きっとこのまま帰ったらみんながおかしくなってしまうと思った。
私は、どうすればいいのかわからなかったけど、一歩一歩、女の人に近づいた。残り1メートルになった時、ゆっくりとその首がこちらへと向いた。眼球はなく、漆黒のようなどす黒い不気味な顔がこっちをみた。一瞬戸惑ったが、身体が軽くなった。その後、なにが起こったか覚えていないけど、その幽霊が消えたことだけは覚えている。




