六、霊力の相性
師匠の言葉は本当で、次の日から陽葵の席には旭の名前が書かれた依頼表が必ず置かれるようになった。
その傍らで、護符の練習もして、それも笑顔で旭は引き取っていった。
「ちびがこんなにでかくなって…」
「立派になるんだなぁ、これから」
「頼もしいぜ」
兄弟子たちはそう言うが、内心では哀れんでいるのがわかる。
師匠の言うように、旭の注文量は多く、在庫には回せない。
なんなら、注文量でさえ作るのがやっと。
兄弟子に聞くと、毎回旭はお礼とともに喜びの声を伝えてくれるのだとか。
「多分相性だな」
霊力、と一言言っても、人間それぞれで少しずつ違う。
たまにこうやって霊力の調子が合う人がいるのだと。
陰陽師は、調子の合う霊力を見つけると、戦いやすくなり、霊力も節約できるらしい。
事実、兄弟子たちも、何人か指名をもらうことがあるという。
「がんばれ、陽葵」
そう言われて数日後。
「ん。合格。護符も商品としてだしていい」
「ありがとうございます!」
旭に回収される前の護符を師匠にチェックしてもらい、ついに許可がでた。
「あれだけの量に対応していたのに、丁寧な練習をしたなぁ」
「がんばりましたぁ」
「でも」
師匠のにやりとした笑みが広がる。
「これで終わりじゃないからな」
本当に忙しくなるのは、ここからだということを、陽葵はまだ知らなかった。
* * *
「なぁ、旭」
「どうしたぁ?」
その日のあやかし退治を終えた陰陽師一行。
話しかけられた旭は仲間を振り返った。
よく一緒に仕事をこなす仲間たちはげんなりした様子で旭をみている。
「最近前より調子よくなってね?」
「なんで?俺たちと同じぐらいしか働いてないだろ。なのになんでそんな元気なんだ?」
「朝も早く起きてるし」
「なんだろうなぁ」
陽葵の札を使うようになって、ずいぶんと仕事が楽になったと旭は思う。
自分の霊力が抵抗なくあやかしに当たっている気がする。
「相性のいい道具屋を見付けた」
「それだけで、そんなに変わるのか?」
「まぁそこなんだよね」
旭も腑に落ちないところがある。
前は気絶していたように寝て、気がつけば朝だった。
だが、この札を使い始めてからなんだか様子がおかしい。
あやかしを退治したあとも少し元気で、朝の目覚めもよくなった。
「試しに使ってみるか?」
旭は好奇心に負けて、自分の持つ霊符を一枚、仲間に差し出した。




