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四、陽葵の霊符

霊符を探すため陽葵が振り返った先に人の姿はなく、虎の(しっ)()がひらりと視界から消えたところだった。

(あっ)()にとられてからはっと我に返る。


「あれ……」


お代は確かにカウンターにおいてあった。しかも十分すぎるほど。

奇妙なのは、陽葵が見本にしていた霊符がカウンターの上に残っていること。

持って行かれたのが陽葵の書いた霊符だと気づくまでに時間がかかった。


「ああああ‼」

「どうした、ちび」


ひょこっと顔を出した師匠に、陽葵の(ぜつ)(ぼう)が増す。


「し、師匠……」

「今の、旭か?」

「はいぃ…」


カウンターに入ってきた師匠の目線がカウンターに置かれたお金に目がいく。


「忙しそうだなぁ。そんなに札が必要だったか」

「それが、霊符二、三枚っていって…」

「おいおい、こりゃ霊符なら十枚分ぐらいだぞ」

「あの…私が書いた霊符を持って行きました…」


今の時間で書いたのは五枚ほど。

しかし、陽葵の書いた霊符はまだ不安定。

本当は師匠のチェックを通そうと思っていたのに。


「まぁ…大丈夫だろ」

「へ?」

「おまえの書いた札なら、大丈夫だろ。まぁこれだけのお金をもらうのはいただけないから、明日ぐらいに()(ぶん)は返金しよう」

「だ、大丈夫ですかねぇ」


自信がないわけではない。

どの札も心をこめてかいたもの。

霊力も込めている。

しかし、できることなら自分の自信を裏付ける確証がほしかった。


「俺がおまえを引き取ったのは、元々持っている霊力を認めているからだ。だから、大丈夫だ」

「は、はいぃ…」


孤児院で育てられていた陽葵は、昔からほかの人と異なる世界がみえていた。

そんな私を拾ってここまで育ててきた師匠。

(めい)(わく)はかけたくない。


「護符の練習も始めるといい」

「わかりました」


表情が変わらない師匠に安心感を抱く。

見慣れた猫背で作業場に戻る師匠を、陽葵は見送った。

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