「俺の部屋の近くで話すな…。」とトマスが言っていたらしい。
お手に取って下さりありがとうございます!!
「コール船長!」
ネイアは驚いたように言った。
「おう、君らの大好きなコール船長だぞ。」
「あのう、コール船長。
僕の部屋、ここじゃなかったみたいです。」
スターリィは少し緊張していながらもコール船長に訴えた。
「そうなのか?」
コール船長はネームプレートを覗き込むかのように見る。
「違うな。」
申し訳なさそうな顔をしている。
「…はい。」
「すまん、間違えた。」
コール船長は私とスターリィ2人に謝った。
「全く、コール船長ったら。」
ネイアはそう言って笑う。
ネイア…さっき言ってたけど、もしかしたらこういう人の方が好みなのだろうか。
「スターリィは、こっちの部屋だな。」
コール船長はそう言って、私の反対側の部屋を開けた。
それを見たネイアはこちらを向いた。
「じゃあなんだかんだあったけど、この部屋がテトの部屋だよ。」
「ありがとうね、ネイア。」
「いいのよ、この部屋の隣の部屋が私の部屋だからね。」
「良かった、それなら安心。」
「うん、何かあったら私の部屋の扉叩いてね。」
「部屋の中には基本的な家具とかがあるけど、シーツとかは多分リネン室に置いてあると思うから、そこから勝手に取ってってね。」
「はーい。」
私は自分の部屋を眺めながらネイアに返事をした。
私の部屋は2段ベッドになっているシングルベッドとその下に机と椅子、それに小さな引き出しのある棚がある部屋だった。
妹と弟といた家もこのくらいの部屋に雑魚寝していたから、一人でこの部屋が使えるとなると、この部屋が急にとても広く感じる。
「実は、さっきお風呂案内する!って言ってたんだけど…お風呂とかは、正直水が厳しいから無いんだ…。でも、水道は少し使えるから。
そこで髪洗ったりしている人もいるよ。
最近はその生活に慣れちゃってお風呂って言っちゃったけど…。」
体は昔は毎日洗えてなかったから問題はない。
「あ、でも補給中あまり時間は無いから急ぐことになっちゃうけど、一応港町の近くに浴場があれば入りに行けるよ。」
ネイアは優しいことにそんな事を教えてくれた。
風呂場か。
ある程度の清潔感を求められそうなこの職場では配達前には行った方がいいのだろう。
だけど、お金がないんだよなあ…。
そうちょっと落ち込んでいるとネイアが
「あ、そうだ。
次の目的地であるドトタル市の前に、補給を1回挟むんだけど、確かそこには港町に浴場があるのよね!
テマ、一緒に行かない?」
そう言ってくれた。
けれども…
「誘ってくれたのは嬉しいことなんだけど、私はここにくるまでに結構お金使っちゃってお金が無いんだよね…。」
と、私はネイアにそう白状した。
「ふふ、でも大丈夫よテマ。」
ネイアは不思議そうな顔をしている私を横にコール船長に目線を向けた。
「あ、ネイアちゃん言ってなかったの?」
そうコール船長は驚いたかのようにネイアに言った。
「あれ、私てっきりコール船長が事前に説明してくださったのかと。」
「あれ、ああごめんね。
うっかりしていたみたいだ。」
コホン、とコール船長は咳払いをする。
「うちの会社、もといブリーズでは提携している浴場が多くてね。
大体どこでもこの社員証明カードを見せれば入れるよ。」
「社員証明カード…?」
「ああ、そういうものがあるんだ。
それを見せればどこの店でも無料で入浴できるよ。」
「す、すごいですね。」
私はブリーズの福利厚生に驚いた。
「それだけじゃないよ、色々宿泊施設とかでも使えるから遠方の方に配達に行く時などはどんどん使うといいよ。」
ネイアはそう言った。
「わかりました。」
「ちなみに、その社員証明カードはどこで手に入れればいいのですか?」
「ああ、それは私の船長室にあるから
これからあげるね。もちろん、スターリィも。ついでに操縦室も近くにあるから見ていくといいよ。」
「はい。」
そう私とスターリィは言った。
コール船長の案内のもと、私とネイアとスターリィは船長室へと向かった。
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