ダンディライオン号
手に取っていただきありがとうございます!
「ここが、食堂よ。
料理が出来たら、鐘が鳴るからね。
料理は当番制なんだ。この食堂の中にある掲示板に一日の当番表があるから、あとで確認するんだよ。」
食堂の扉をネイア先輩は開けながらこちらに可愛らしくお茶目にウインクしながら言っている。
ほんと綺麗な人だなあ。
「案外、中綺麗なんですね。」
私はその綺麗さに思わず目を逸らしてしまって、変な事を言ってしまった。
飛行船で、船長があれだから
てっきり少し小汚いのかと思っていた。
「まあね、これも当番表のおかげかな。
あと、配達員にとって清潔感は大事だしね。基本だよ、基本。」
「そうなんですね。すごいですね…」
ああ、やっぱり
言葉が硬くなってしまうな。
「あ!私そういえば今日の夕食担当なんだよ。私の手料理楽しみにしていてね。」
「はい、楽しみにしていますね。」
私は微笑みながらそう返した。
どうしたらいいんだろう。
仲良くなるには。
せっかく、ずっとバイト漬けで、友達と呼べる人も居なかった私にとっては、言葉が硬くなってしまわないようにするにはどうしたらいいのかが分からない。
あと、先輩だから
言葉遣いを間違えてしまうのも怖いし。
「次行こっか!次はどこ行こうかなー。
お風呂とテマちゃんのお部屋ならどっち行きたい?」
「そうですね…先輩はどちらに行きたいですか?」
「先輩?」
ネイア先輩はこちらを見た。
「嫌でしたか…???」
「そういうことでは無いのだけれど…。
なんというか、私ここに就職してから2ヶ月しか経ってないから、先輩っていうほどじゃないのよね。」
「な、なるほど」
「だから、出来ればネイアって呼んで欲しいな…。ダメかな…?」
先輩は目をうるうるさせて私を見つめた。
こんなの、断る方が難しいだろう。
「わ、わかりました。ネ、ネイア…。」
「もう、敬語も外していいから!」
「わかったよ、ネイア。」
そう私が困った顔をするとネイアは
「よし!」
と少し嬉しそうにしながら言った。
これは、少し仲良くなったと言っていいのだろうか。
まあ、とにかくこの流れに身を任せて
仲良くなれたらいいな。
「テマちゃんがどっちでもいいなら、先に部屋を案内しようかな、着いてきて!」
そう手を引っ張ろうとするネイアにふと聞いた。
「私はネイアのこと呼び捨てにするけど、私のことは呼び捨てで呼んでくれないの?」
ネイアは少し間を置いてから
「あっ」
と、今更気がついた。
「ほんとにごめん、気がついてなかった。
そうだよね。
テマちゃ…いや、テマ。」
「うん、嬉しいな。」
私は満面の笑みを浮かべてそう言った。
「〜〜!!!!!!
テマ大好き!!!!!」
そう急にネイアが抱きついてきた。
「ネ、ネイア!?
どうしたの!?」
ネイアのいい匂いが香ってくる。
「あのね、私就職してから
ずっとこの船所属だったから、
友達と呼べる人が居なかったの。
地上に降りるのも一瞬だしさ〜〜!」
「そ、そうなの?」
「そう!!!!!
だからすーっごく寂しかったの。」
「ふふ、私に会えて良かったね。」
「ほんとうにそうよ!!」
そう2人で抱きつきあっていた。
すると、私の後ろから声が聞こえてきた。
「あなた達、通行の邪魔ですよ。
どいてください?」
振り返ると、そこには
私の妹や弟と同じ年齢くらいの印象を持つ、男の子が立っていた。
お読み下さりありがとうございました。
メイアちゃんはテマのひとつ上の歳です。
大人っぽく見えるので、実年齢より高く見られるのがちょっと本人的には気に入っていません。




