ボスバストンの風を感じて。
お手に取ってくださりありがとうございます。
テマ×トマス先輩がメインの間章「ボスバストン編」です。
「ドトタル市編」に繋がる2人のお話となっております。お楽しみください。
新規様は出来ればエピソード4からこの最新話までお読みいただいて欲しいです…!
話の流れが掴みにくいかもなので。
「寝れない。」
私はそう言って起きてしまった。
寝よう寝ようとしても、何故か寝れない。
おそらくダンディライオン号に乗って何日か経つが、疲れが今まで感じてなかっただけで溜まっていたのかもしれない。
私は疲れすぎているとむしろ寝れないタイプになるので、目が覚めてしょうがない。
クリュスタに居た頃は弟と妹を起こさないように慎重に歩きながら街を少し歩いて、街の高台に登って、街の景色を一望したりしていた。
「どうしようかな…。」
でも、ここはダンディライオン号の中だし、外へでも出れないので困った。
こんな深夜なので誰とも話したりも出来ない。
ネイアはもう寝ているだろうし、スターリィはさっきカカラックさんと食堂で酔い潰れていたし。
トマス先輩は…よくわからないし。
コール船長もシェータリさんも寝ているだろう。
「…そうだ、ボスバストン、日の入り間際に入港したからあまりよくは街並み見れなかったんだよな、見に行こうかな。
まあ、船からだけど。」
そう思って私は部屋の外を出た。
「うう、やっぱり寒いな。」
ダンディライオン号の廊下は少し肌寒い。
「ていうか、何となく廊下に出たはいいものの…どこに行けばいいんだ?
機関室の方…は、多分シェータリさんとカカラックさんが居るだろうし。
操縦室…は、コール船長の部屋と近いし。
どうしよう。」
そう私が考えているとふと後ろからスタスタと足音と明かりが近づいてきた。
「?」
私はその足音と光が気になって後ろを向いた。
そこには
「何してんだ、お前。」
と、ランプを持ちながら歩いているトマス先輩が居た。
「トマス先輩?」
私は1回聞いてみた。
「ああ、俺だが。」
何を言ってるんだ?とでも言いそうな表情をしてトマス先輩は言った。
「何してるんだお前…寝ないのか?」
「寝たいのですが…少し寝れなくて。」
「ああ。」
「少し、眠くなるまでボスバストンの風景でも見ようと思いまして。」
「お前もか。」
「トマス先輩も眠れないのですか?」
「ああ、なんだか目が冴えてしまってね。」
そんなトマス先輩を見て私は閃いた。
先輩はこの船にずっと乗っているんだから、船の中で1番街並み見やすいところ教えてもらえばいいじゃない。
「それなら先輩、どこかボスバストンの街並みを見れる場所あったら教えてくれませんか?
先輩は確かこの船にずっと乗っているのですよね?」
「いや、えーっと…俺はひとりで…はあ、まあ、いいだろう。」
やれやれとした顔をしながらトマス先輩は承諾してくれた。
「ありがとうございます。」
「ああ。まあ俺も寝れないし、しばらく付き合ってやる。感謝しろよ。」
「ふふ、先輩が居てくれるなら頼もしいですね。」
「は、当たり前だ。」
そんなことでトマス先輩と廊下を歩く。
互いに無言で少し気まずくなっている。
「おい、お前。」
「は、はい。」
「そういえばお前は、どこから来たんだ?」
「私ですか?私はクリュスタから来ました。」
「ああいやそれは知ってるんだが…聞き方を変える。先程は間違えた。
生まれはどこだって話だ。」
「生まれも育ちもクリュスタです。」
「そうなのか。」
「はい。」
また2人に沈黙が流れる。
「え、えっと、トマス先輩はどこ出身なんですか?」
「俺か?俺はアテスカットだ。」
「アテスカット…?なるほど。」
私は分からなかったが、わかったフリをした。見栄を張るために。
「嘘だろ、知らないのか?」
わかったフリが見破られてしまった。
なぜだ。
ふとトマス先輩を見ると、トマス先輩は驚いた顔をした。
「有名なところなんですか?
すみません、生まれも育ちも貧民街だったのであまり都市知らなくて。」
「…いや、別に知らなくていい。」
そう言って話を逸らそうとするトマス先輩に私は
「え、知りたいです。」
と、空気も読まずに言ってしまった。
あ、と失敗に気づいて、訂正しようとしたらトマス先輩は
「まあいいか、仕方ないから教えてやろう。」
と、言ってくれた。
「アテスカットはここ、ボスバストンなどがある大陸と違う大陸にあるんだ。
最近栄え始めた都市なんだ。」
「ここと違うなんて…。
では、かなり遠くないですか?」
「ああ、遠いぞ。」
「世界って、そんなにも広いのですね。
…自分の住んでいた世界がちっぽけに思えてしまいます。」
そう言う私にトマス先輩は
何か遠い目で廊下の先を見ていた。
「トマス先輩?」
「あ、ああ、すまん。
アテスカットの話だな。
アテスカットは今は観光業で栄えているんだ。」
「かなり色んな国が観光業で栄えているのですね。」
私はつい気になってしまい口を挟んでしまった。
「いい着眼点だな。
その通りだ。今は飛行船で各国を渡り歩ける時代だからな。観光業がその影響で栄えやすくて、どの国も観光業を今は伸ばそうと必死なんだ。
俺の生まれ育ってアテスカットも今はそうなんじゃないかな。」
まさかのトマス先輩に褒められてびっくり。
「あ、ありがとうございます?」
私もつい戸惑ってしまった。
先輩、世界の国や都市が好きなのだろうか?
そんなことを話しながら移動していたら、いつのまにか船の出入口まで来ていた。
「ここが街並み綺麗に見えるんですか?先輩?」
「まあ、着いてこい。」
そう言って先輩はドアを開けた。
「せ、先輩!?何してるんですか!?」
「何って…そりゃ、ボスバストンの街を見るんだったら、現地の方がいいだろう?」
「私はてっきり船の中から見えるとこかと…。」
「そんなのつまらないぞ。
あんな小さな窓で見るなんて勿体ないぞ?
世界は広いんだろ?」
「で、ですがコール船長が船の外に出るな、と言っていましたし…。」
「まあ、バレたらごめんなさいすればいいだろ。」
「そ、そんな軽い謝罪で済みますか…?」
「まあ、最悪俺が責任取るよ。
俺は1回来たことあるんだ。この街のことは
かなり知っていると思う。
街に行って後悔はさせないぞ?」
トマス先輩はどこから取りだしたのかは分からないが船の入口から下へとロープを垂らしながらそう言った。
「?来ないのか?」
そう言ってトマス先輩から差し出された手を
──────拒むことなんて、できるわけが無かった。
私も知らない世界をもっと見たい。
そんな好奇心に勝てるわけがなかった。
「よし、行くぞ。」
そう言ってトマス先輩は私を抱き抱えてロープをスルスルと降りた。
「〜〜!!!!!」
私はさすがに怖くって声にならない声が出た。
「はあ、怖かった…ちょっとですが…。」
「はは、やっぱりロープ遊びは楽しいな。」
「先輩ロープ降りるの上手いですね…。」
トマス先輩はものすごいスピードを出して私を抱き抱えながら地上へと一気に降りてった。
「アテスカットで身につけたからな。
それよりも、どこか痛むところとかないか?」
「?
ありませんが…。」
「ならいい。」
「は、はい?」
そう言ってトマス先輩は誰も居ない港をずんずん歩く。
港にはダンディライオン号だけではなく
目に見える範囲で10隻以上の船が停まっていた。
こんなにも船があるなんて。
これらも全てブリーズの船なのだろうか?
そう思いながらも迷わずに進むトマス先輩に少し不安を覚え
「ト、トマス先輩。バレませんか、これ。」
と、話しかけた。
「大丈夫だ。何かあったら俺の後ろに隠れればいい。」
「は、はい。」
──────そんなことを話していたら案の定衛兵が見回りをしていた。
こんな夜中にも見回りをしている。
今のボスバストンの入国制限が厳しいことが目に見えた。
「…どう切り抜けるんですか、これ。」
私とトマス先輩はそこら辺にあった大きな貨物の裏に隠れた。
「まあまあ、落ち着け。
まず街までの門は空いている。
あそこは多分…家が立ち並んでいるから衛兵が居れそうな場所は無かったはず。
ていうことは、ここにいる港を巡視している兵を切り抜ければいい。」
「先輩、こういうこと慣れています?」
「さあ、どうかな。」
そう言ってトマス先輩はチラリと衛兵の方を見た。
「衛兵は3、4…ご、いや、4人かな。」
トマス先輩は指をさしながら言う。
「どう切り抜けますか?」
「シンプルだが…上手く抜けて行くしかないな。」
口元に手を当てながらトマス先輩は何かを考えているようだ。
「緊張しますね、こういうの。」
「大丈夫だ。基本的に俺にピッタリ着いてくれば問題ない。」
そう言うトマス先輩に対して
「先輩の動きに合わせられるか自信ないです。」
そう私は不安を漏らす。
「ん。」
そう言ってスっとトマス先輩は手を差し出してきた。
「えっ?」
戸惑っている私に対してトマス先輩は
「動き着いてこれないなら、俺の手を握っていれば、着いてきやすいだろう?
ほら、握っとけ。」
その手を私はちょっと遠慮しつつ軽く握った。
トマス先輩は握っている手を確認し、
「…よし、行こうか。」
そう言った。
そう言ってトマス先輩と私は抜き足差し足忍び足で1人目の衛兵がこちらを見ていない瞬間に安全地帯の箱の裏に逃げ込んだ。
「こいつは大丈夫だな。
かなり眠いのか警備に対する集中力が散漫している。」
「じゃあ次、2人目、行くぞ。」
「はい。」
そしてまた私たちは2人目の目をかいくぐって
箱の裏に逃げ込んだ。
「少し楽しくなってきました。」
「そうか。」
そして3人目もなんとか見つからずに行けた。
「警備が手薄過ぎないか…?」
ここまで何も無く来れていることに対してトマス先輩が疑問に思っているようだ。
「急な入国制限だったのですかね。」
「そうかもな。」
そして、あと1人だ。
4人目の少し離れたところに箱があるのが見えた。
「準備はいいか?」
「はい。」
「よし…行くぞ。」
トマス先輩の手を軽く握りながら後ろと前を気にしつつ静かに忍び足で歩く。
そして、4人目の後ろをどうにかかいくぐって
箱の裏に入ろうとしたその時、私は足が木の板の間に突っかかり後ろに転びそうになった。
──────あ、これ、やばいかも。
物音を立てたら衛兵が気づいてしまう。
私が見つかったらトマス先輩まで見つかってしまう。
どうしよう。
そう思いながらギュッと目をつぶった。
──────その時だった。
繋いでいた手を強く握られた感覚がした。
トマス先輩は私をトマス先輩の方へと倒れさせた。
2人して床に倒れ込むが、トマス先輩が私のことを抱きとめたので物音はあまり鳴らなかった。
顔を上げるとトマス先輩が少し焦った表情をしながら衛兵の方を見ていた。
そして、私の方を見ると少しホッとした表情をした。
「大丈夫か?怪我は無いか?」
私は慌てて服の汚れを払いながら
「だ、大丈夫です。ありがとうございます。
おかげで怪我はしませんでした。」
私もさすがに少し焦った。
「それなら良かった。
…俺の見ているところでお前に怪我されたりなんかしたらネイアに怒られるからな。」
そうぶつぶつ言っているトマス先輩に対して私は未だに強く握られている手のことが気になってしまった。
「あ、あの。トマス先輩?」
「ん?なんだ?」
「手…もう大丈夫ですか…?」
「ん?あ。
すまん、気づかなかった。
焦っていたから手強く握ってしまった。
あと、もう繋いでいる必要ないよな。」
そう言って急いでトマス先輩の手と繋がれていた手は解かれた。
ふと、トマス先輩の方を見ると少し顔が赤い気がした。
それが寒さによるものなのかは分からない。
私の頬と繋がれていた手に吹いてくるボスバストンの風は足とかに吹く風はあまり冷たく感じないのに、どこか冷たく感じた。
お読みいただきありがとうございました!
いつも短い話ばかりの私ですが、この章だけはどうしてもこだわりたくて長くなってしまいました。後日ボスバストン編の続きが更新されます。
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