初の同僚
お手に取って頂きありがとうございます!
今回の初仕事の舞台は
ドトタル市だ。
ドトタル市は、私の住んでいたクリュスタ市から飛行船で向かうと、約10日ほどかかる。
なので、今日からの10日間
この飛行船、ダンディライオン号に乗って
過ごすことになっている。
途中途中補給をしたりする必要があるので、地上には降りるらしいが
そこまで長期滞在する訳ではないので基本的に港町の露店に寄るくらいしか出来ない。
まあ、この10日で少しでも同僚との人脈を広げられればいいのだけれど。
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「お、君が噂の新人ちゃん?
やっぱ可愛いね〜。」
「…え、噂?」
ダンディライオン号に乗船しようと船の近くで煙草を吸っている男の船長らしき人に声をかけようとしたら、あちらから声をかけてきた。
しかもなんですか、噂って。
「噂ってなんですか、てか誰ですか。お名前は?」
私は相手をじろりと睨んだ。
「はは、警戒されちゃってるかあ〜。」
40代、50代の人だろうか。
無精髭が生えているがある程度清潔感があり、少しおちゃらけている雰囲気だ。
「俺の名前はコールだ。船長を務めてる。
コール様、コールくん、ダーリン、好きな名前で呼んでくれ。」
「では、コール船長。
こんにちは、初めまして。
私はテマって言います。」
「つれないねぇ」
コール船長は少し残念そうな顔をした。
「…そういえば、噂ってなんですか。」
「ああ、君の噂のことね。
採用者が少し漏らしてたんだけど、ものすごく美人で体力があって少し無口気味な子がいるって言ってたんだよ。」
個人情報漏洩すぎて何も言えない。
「はあ…私、美人じゃないですよ。」
「いーや、美人だね。俺のお眼鏡にはかなうよ?
…美人というより美少女というのが正しいかもだけれど。」
「そうですかね、まあ、清潔感が汚点として言われてないのであれば良かったです。」
これはよく言われることだ。
だが、いつも貧乏だったからか清潔感が無いと言われるのがオチだったからか、少し驚いた。
………奮発して公衆浴場に入って、念入りに身体を洗ってきたおかげだろうか。
「まあ、外にいてもせっかくの美人さんに俺の煙草の匂いが着いてしまうし、何より寒いだろう、入るといい。」
コールは重そうな扉を一人で易々と開けた。
「ありがとうございます。」
「どういたしまして、テマちゃん。」
「…なんです、その呼び方。」
私は少し顔をしかめた。
「嫌かい?俺はいいかなと思ったんだけれど。」
「…ご自由にどうぞ。」
私はもう諦めて、中に入ろうとした。
「あ、そうそうテマちゃん。
この先にある扉を抜けたら、一人案内役で同僚の女の子が待っているから。
その子に部屋とか、色々設備とかは聞いてね。」
「分かりました。」
はーーあ、緊張した。
私はクリュスタ市の中でも貧乏人が集まるスラム街の人達としか今まで話してこなかったからか普通の人と話すと緊張で上手く喋れなくなってしまう。
まあ、むしろこの仕事にはもってこいだけれど。
私は船の中に入った。
すると、1人の女性が貨物の上にちょこんと座り、退屈そうにしているのが見えた。
「お、来た来た。
あなたが噂の新人ちゃんかな?」
暗くて先程はよく見えなかったが、すごくボブが似合っていて、モデルのような綺麗なお姉さんだ。
「は、はい、テマです。」
「ふふ、よろしく。
私はネイアよ。」
「じゃあ、早速だけどこの船を案内するわね。
と言っても、私もこの船には2ヶ月しか滞在していないのだけれどね。」
そう言って、私はネイア先輩に手を引かれて、ダンディライオン号の船内に入った。




