歓迎会
お手に取っていただきありがとうございます!
「トマス先輩、机拭いておいてもらってもいいですか?」
「わかった。」
トマス先輩はネイアの指示で水拭きを持ってテーブルへ向かっている。
「スターリィはトマス先輩が拭いたところにこの豆のトマト煮運んじゃって!」
「わかりました!」
スターリィはおそらくネイアが作ったであろう豆のトマト煮を持っている。
少し香りが漂ってきている。
少し香辛料が効いているのだろうか?
とってもいい匂いがする。
…今までの貧乏生活を考えたら信じられないほど豪華だ。
というか、私達機関室組が最後だったようだ。出遅れた。
スターリィとトマス先輩はテーブルの準備をしているのに、私は何もしていなくてどうしようか困ってしまった。
「あ!テマ来たのね!
料理運ぶの手伝ってもらってもいい?」
「わ、わかった!」
「ありがとうー!」
そんな私を見つけてくれたのか、声をかけてくれた。
「ごめんねネイア、来るの遅くなっちゃって。」
「そんなことないよー!
ただあの男子陣が早かっただけよ!」
食いしん坊なんだから、と不満を漏らすネイアだが、表情はどこか楽しそうだ。
「今日のメニューはどんなのがあるの?」
「今日はねー、さっきスターリィが持ってたの見たかもしれないけど、豆のトマト煮とクリュスタで買ったバゲットと、クリュスタの名物料理、オムレツを作ってみたよ!」
そうネイアは笑顔でフライパンの中に入ったオムレツを見せてきた。
たしかに、貧民街の私には縁がなかったが、クリュスタではオムレツが有名なのだ。
「今日は結構豪華にしたんだよ!いつも絶対卵なんか使わないし。
でも、テマとスターリィの歓迎会も含めているからね!豪華にしたんだよ!」
「そうなの?」
「そうなのよー、コール船長がカカラックさんに一瞬操縦代わって、私に2人の歓迎会したいから、料理豪華にしてってわざわざ言ってきたの。」
だから、カカラックは先程操縦室行ったのか。
そう話しながらネイアはサッとお皿にオムレツを乗っけた。
「じゃあ、これ机に運んでもらえる?」
「はーい。」
私はネイアが作ったオムレツを持って机に運んだ。
運ぶ途中、トマス先輩がこちらを見ているのに気づいた。
トマス先輩は瓶に入った飲み物を持っている。
私はオムレツを置いて、トマス先輩の方に向かった。
「なんですか?それ?」
トマス先輩は不思議そうに私を見た。
「ああ、お前か。お前は何飲む?
ミント水か、レモネード、どっちだ?」
「え、選んでいいんですか?」
「ああ、早く選べ。」
「じゃあ…レモネードください。」
「わかった。」
そう言ってコップにレモネードをトマス先輩は注いだ。
「ここに置いておくぞ。席は多分ネイアの隣の方がいいか?」
「あ、はい!ありがとうございます!」
「ああ。スターリィにも聞かないとな…。」
そう小さい声で言ってスターリィを探しに行った。
───少し経って準備が終わり、シェータリさんとカカラックさんも来た。
「さあ、食べようか。」
カカラックさんがみんなにそう言った。
ネイアが端に座り、私はそのネイアの隣に座り、その私の隣にスターリィが座り、そのスターリィの隣にトマス先輩が座っている。
そしてシェータリさんとカカラックさんが反対側に座っている。
その反対側に1席空いているのに気づいた。
その時、
「あれ?あの、コール船長は…?」
と、スターリィはネイアに聞いた。
「あ、そうだ、行かなきゃ!」
ネイアは厨房から小さい弁当箱のような箱を出して、オムレツとバゲット、豆のトマト煮を入れた。
そして、操縦室へと足を進めた。
お読みいただきありがとうございました!
今日は怒涛の4話連続更新です。




