カカラック
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カカラックはこの街で生きる普通の肉屋の息子だった。
とある日のカカラックは店で肉の販売を、
とある日のカカラックは露店で焼き鳥を売る
とある日のカカラックは
この後の人生が決まる、運命に出会う。
「町一番の美人、シェータリちゃんを知らないとは、こいつは珍しい。」
カカラックは目の前にいる、自称外国人のかなり整った身なりをしている同い年の男、コールを見ながら言った。
「その…シェータリちゃんはそんなに美しいのか?」
「ああ、とっても。最上級の女の子だ。」
「へぇ」
そう言うコールの顔は、シェータリちゃんが気になっていたのかが分からないが考え込んでいる表情をしていた。
「気になるか?」
俺はそんなコールをからかうかのように聞いてみた。
「…まあ。少しはな。
そこまでハードルを上げる程の美人のことなんて俺は知らないからな。
…そんな子と仲良くなりたいなんて、自然なことだろう?」
少し余裕ぶっているような感じで俺にそう言ってくる。
そう言うコールにカカラックは
「お前も男なんだな。」
と何故か返してしまった。
少し意外だった。
コールはどこか掴みどころがなく、何を考えているか分からなかったから。
「…うるさい。」
そうちょっと不貞腐れるかのように言うコールに
「はっ、案外ただの外国人のお貴族様かと思ったら、お前いいやつじゃないか。」
と、俺は興味を示した。
「お貴族様…。」
何故かコールはその言葉を反芻していた。
「お前、この後時間あるか?
あと少ししたら店を閉めて、余り物の肉をシェータリちゃんに届ける予定なんだ。
一緒に来るか?」
俺はシェータリちゃんを自慢したいという気持ちと、コールという男をもっと知りたいという気持ちから、気づけばそう言っていた。
「いいのか?」
少し遠慮がちにコールは言った。
「いいさ、多分ね。
あと少ししたら店閉めるから、5分…くらいかな?待ってくれるか?」
「わかった。
俺は近くの靴屋を物色しているから、呼んでくれ。」
「はいよ。」
そう言ってコールは反対に店を構えている靴屋へと向かって行った。
俺は、俺の大好きなシェータリちゃんのため宣伝をしながらだが、
少しでも、余り物が出るようにと願った。
「コール、お待たせ。」
靴屋で靴屋の主人と靴について話していたコールに声をかける。
「ああ、カカラックか。」
「何話してたんだ?」
「ちょっと、今の靴がボロボロになったら
ここに靴を買いに来ようかと思ってね。
ここは雰囲気もいいし、靴が俺の好みぴったりだからな。
だから参考にと売っている靴を眺めていたんだが…。」
「ほっほっほ。
ワシが話しかけたんじゃ。」
靴屋の老主人はそう言って笑った。
「ここの靴屋の足のサイズの測り方なんだが、実際の足に似せるようにどのようにしているのか気になってな。」
「普通じゃよ普通。
人間の足をじっくり観察して、ある程度触れば長年の経験から分かるんじゃよ。」
「凄いですね。」
コールは感心している。
「だから、わしの靴は履く人間の足をコピーしているのかと言われるほど精巧なんじゃよ。」
「確かに、老主人はかなりベテランですものね。」
「ああ。」
「まあ、とりあえずコールそろそろ行こ?
シェータリちゃんに肉届けたいし。」
「ああ、すまない。待たせてしまって。
老主人もありがとう。」
「いいんだよ。」
「ほっほっほ。こうやって靴に興味を持ってくれる人間は久しぶりだから嬉しかったぞい。」
老主人は少し手を振ってお見送りしてくれた。
「さ、シェータリちゃんの所へ行くぞ。」
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