シェータリの過去
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「領主に轢かれた…!?」
ネイアは少し怒ったような声を出した。
「ええ、昔のことだけれどね。」
「シェータリ…。」
カカラックさんが何か言いたげに口を挟んだ。
「ふふ、まあこんな暗い話をあなた達とするのも趣味ではないから、もう終わりにするわよ。」
シェータリさんはそう言って口を閉ざしてしまった。
「ま、まあ、今シェータリさんがお元気ならいいと思います!」
ネイアはそう自分に言い聞かせるかのように言ったが、表情は暗かった。
「あ、で、私達は機関室のお手伝い、何すればいいですか?」
私は少し戸惑いながらもここに来た本来の意味を思い出した。
ああ、と思い出すかのようにカカラックさんとシェータリさんは言った。
───トマスside
「トマス先輩、年下には見えなかったです…。」
2人で操縦室までの廊下を歩いている途中スターリィはふとそんなことを言った。
「俺もだよ。
お前よく若く見られるのか?」
スターリィのその顔はかなりの童顔という印象を受けたが、だけれども確かにどこか大人っぽくも感じる。
「んー、まあそうですね。
初対面の人で僕のことを知らない人には若く思われがちですね。
でも周りの人間は大体年齢知ってたので。」
スターリィは少し考え込むように唇に指を当てる。
やはりこいつ、どこか色っぽい。
「ああ、親戚とかの話か?」
周りの人間、というのがいまいちピンと来なかったので聞いてみた。
「いや、社交界全体で…。」
社交界だと?
社交界なんて、貴族しか行けない場だぞ?
「社交界?お前…。」
俺はいつの間にかそんなことを口にしてしまっていた。
「ふふ、やっぱりなんでもないです、よ?」
そう少し微笑みながらミステリアスな雰囲気を漂わせるスターリィは、やはりこう見ると
大人のように見える。
社交界のこと、なんでクリュスタ市からこいつが来たのか、お前はどんな人間なのか、
そういうのを色々聞きたい気持ちを───
「馬鹿なことを言うなアホが。」
───そんな気持ちをどこかに捨てて
スターリィの頭をポコっと軽く叩いた。
「先輩暴力反対!!!」
「うるせぇ。」
ここでは皆がブリーズの社員。
俺らに元の身分の何もない。
そう、自分に言い聞かせるようにした。
操縦室まではあと少しだ。
お読みいただきありがとうございました!
スターリィは沼男です。




