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第6話 私にだって、できないことだってあるわ

「その子って?」


 朝。

 電車のホームで、クラスメイトの如月絃葉(きさらぎ/いとは)と出会った。


「お、おはよう、如月さん。この子は、俺の妹で月空詩って言うんだけど」

「妹さん? 橋本君に妹さんがいたのね」

「そうなんだ」


 橋本悠一(はしもと/ゆういち)は、隣にいる妹の肩を軽く叩いて後押しする。


「初めまして。私、悠一の妹の月空詩です。それと、今年から同じ学校に通ってます」

「そうなのね。私は絃葉っていうの。よろしくね」

「はい。よろしくお願いします」


 妹は、礼儀正しくお辞儀をしていた。

 対する絃葉、愛想の良い笑みを月空詩(つくし)に向けていたのだ。


「悠一の妹さんって、しっかりとしてるのね」

「まあね、家の方では家事もこなしてるんだよね。物凄く頼りになってるんだよ」

「へえ、そうなの。ちなみになんだけどね、私って家事とか全然できなくて」

「え、意外だね」


 悠一からしたら、絃葉はなんでも卒なくこなせるイメージしかなかった事で驚きの方が勝っていた。


「月空詩さん、料理って得意なの?」


 絃葉は、妹の近くまで移動して話しかけていた。


「はい、私は得意な方だと思います」

「そう。じゃあ、後で料理を教えてもらおうかな」

「私は簡単な料理しかできませんけど。それでもよければ」


 月空詩は遠慮がちに言っているが、妹はアニメの影響で色々な料理に日々挑戦している。

 手の込んだ料理も普通に作れるのだ。


「月空詩さんは、どんな料理が好きなの」

「そうですね、オムライスとハンバーグですかね」

「それって作るの結構、難しくない?」

「そうですね。確かに難しいですよね。私も最初作った時は上手くできなかったです」

「そうよね。でも、月空詩さんは、どういう経緯で料理を作るようになったの? 学校の料理実習の影響かな?」

「私は、アニメの影響で」

「アニメ?」

「はい。アニメのキャラが料理をしている場面があって、アニメを見ている内に自分でも作ってみようと思って。それから本格的に始めたんです」


 月空詩はアニメの料理について語り始める。

 アニメの料理シーンや、キャラクターらが食事をするシーンの魅力について、絃葉に伝えていたのだ。


「そうなの。アニメがきっかけなのね」


 絃葉は相槌を打ちながら、月空詩の意見を聞いていた。


「私って料理が下手でいつも失敗してばかりなの。そろそろ、出来るようになりたいんだけどね」


 絃葉からしたら、かなりの悩みらしい。


「そうなんですね」

「月空詩さん、料理を作る上で良い練習方法ってないかな?」

「そうですね……レシピ通りに作ってみるとかですね」

「私、手順通りに作っても、料理を焦がしてしまったりとか、不味くなったりすることが多いの」

「それは難しいですね。んー、そうですね、後は練習あるのみだと思います。それが一番の近道かもしれないですね。とあるアニメキャラも言っていたんですけど、数をこなす事が大事だって。クオリティはある程度出来るようになってから気にするようにすればいいと思います。でも、すいません、後輩の私が、こんな偉そうな事を言って」


 月空詩は、絃葉に対して申し訳なさそうに頭を下げていた。


「別にいいよ。私の方が料理が下手だから。だから、今後一緒に料理をすることがあったら、よろしくね」


 妹と絃葉は、すぐに打ち解けて楽しく会話しており、悠一は彼女らのやり取りを後ろから見ていた。

 それから数秒ほど経った頃、電車がホームに到着する。


 電車内は混んでいた。


 会社や学校に向かう人ばかりで座る席なんてどこにもないのだ。


 絃葉と月空詩は電車のつり革を掴み、横に並んで料理の事について話し込んでいる。


 絃葉と妹が早い段階で打ち解けてくれて、悠一は個人的に嬉しかった。


 さっき、月空詩と一緒にいるところを絃葉に見られた時は、どうなるかと思ったが、しっかりと誤解が解けて良かったと思う。


 つり革を掴んでいる悠一は電車に揺られ、学校のある駅に到着したのは二〇分後であった。


「二人はバスに乗る派?」


 駅の出入り口を出たところで、二人の方へ視線を向ける絃葉から問われた。


「俺は徒歩だけど」

「私も、お兄ちゃんと一緒で徒歩ですね。絃葉さんはバスで行くんですか?」

「普段はね。でも、二人が徒歩なら私も歩こうかな」


 駅前発のバスもあるが、学校方面へ向かうバスに乗車する人は多く、基本乗車できないことの方が多い。

 徒歩でも問題ない事から、三人は駅前から歩き始めたのだった。


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