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第5話 俺は、妹と登校する事にした

 橋本悠一(はしもと/ゆういち)の朝は早い。

 学校がある日は、朝六時には起床しないといけないからだ。


 高校に入学した当初は朝食を食べずに地元の駅まで走って向かい、学校近くのコンビニでおにぎりを購入して午前中は過ごしていた。


 高校二年生になった今では、一回目の目覚ましアラームのコールで起きられるようになり、心地の良い朝を迎える事が出来ていたのだ。

 毎朝六時あたりに起きていると、体調管理もしやすく健康的にも良い。


「んー……朝食でも食べるか」


 悠一は背伸びをしながら、ベッドから立ち上がる。その後で自室を出て、階段を下って自宅一階のリビングまで向かう。


「おはよう、お兄ちゃん!」


 早朝から可愛らしい声が聞こえる。


「お兄ちゃんの分の朝食は出来てるからね」

「おはよう」


 リビングで朝食の準備をしている高校一年生の妹は、アニメキャラに登場するヒロインが描かれたTシャツを着ており、その上に無地のエプロンをつけている。


 妹の橋本月空詩(はしもと/つくし)は昔からアニメが好きなのだ。

 普段からスマホのゲームをプレイしていたり、深夜アニメを視聴したりして過ごしている。

 最初は、悠一が人気アニメを勧めたりしていたのだが、今では妹の方がアニメについて詳しくなっていた。


 今、妹は長い髪をシュシュで結んで束ねている。

 ポニーテイルヘアスタイルで、おかずが盛り付けられている皿をダイニングテーブルに置いていたのだ。


「今日はウインナーと、スクランブルエッグ。それからポテトサラダにしたんだよ。ご飯は自分でよそってね。味噌汁とご飯は、キッチンの方にあるから」


 悠一はキッチンにて、ガスコンロの上に置かれた鍋から味噌汁をお玉で掬い、ご飯は炊飯器からよそう。

 悠一は、トレーにご飯と味噌汁の茶碗を置き、リビングへ戻る。


「お兄ちゃん、いただきますだよ」

「いただきます」


 悠一は妹と向き合うように座る。手を合わせた後でダイニングテーブルに置かれていた箸を手に、月空詩が一生懸命に作ってくれた手料理を食べるのだ。


 普通に美味しい。

 去年の終わり頃から毎日食べているが、以前よりも上達していると感じる。


 月空詩は好んで料理をする方では無かったが、日常系アニメの影響で普段から料理をするようになった。

 どんなに下手でも、半年近く続けていると上達するものだ。


「お兄ちゃんに相談があるんだけどね」


 月空詩は上目遣いで、悠一の事を見つめてくる。

 瞳が潤んでいるのだ。

 何事かと思った。


「ど、どんなこと?」

「私、今年からお兄ちゃんが通ってる高校に通う事になったでしょ」

「そうだね」

「私、そんなに勉強が出来る方じゃないってわかるよね」

「た、確かに」


 月空詩はお世辞にも成績が良い方ではない。

 でも、アホでもないのだ。


「高校の期末テストが不安なんだけど、大丈夫そうかな?」

「んー、多分大丈夫じゃないか? 入学試験も真面目に取り組んでいたわけだし」

「そ、そうだよね。大丈夫だよね」

「月空詩は高校に受かったわけだし、自信を持っても良いと思うよ」

「ありがと、お兄ちゃん。そう言われると楽になるよ、私ね、テストの成績が悪くて留年したらどうしようって思ってたの」


 心配そうな顔つきだった妹の表情はパアァと明るくなる。


「まあ、アニメはほどほどにしていれば問題ないと思うから」


 月空詩は中学の頃、アニメばかり見ていて勉強が疎かになっていたことがあった。

 その影響で、中学時代の妹の成績は悲惨だったのだ。


 妹は両親の指示の元、中学三年の夏休み明けからは塾に通ったりして真面目に勉強と向き合っていた。

 昔よりは大分マシにはなっていると思う。


 何かあれば助けてあげればいいと、悠一はご飯を食べながら考えていた。




 ご飯を食べ終えた二人は食器を洗い、各々の部屋で学校指定の制服に着替える。

 ポニーテイルだった妹の髪型は、ツインテールになっていたのだ。


 悠一が自宅の玄関先で靴を履いた頃には妹も準備を終えており、通学用のリュックを肩にかけ、鏡を見て改めて髪型を整えていた。


 両親は出張で家にはいないが、二人は行ってきますと言い、自宅を後にする。


 地元の駅までは自転車で向かう。

 大体、一五分くらいはかかる。


 地元の駅は閑散としていて、駅員も必要最低限の人しかいない。

 定期券を持っている二人は改札口を通り、電車のホームまで移動した。


「毎朝電車に乗って学校に通学できるなんて、リッチでいいよね」

「そうかな?」

「そうだよ。中学時代は自転車通学だったし。アニメとかでも電車通学しているキャラがいるし、昔からの憧れだったんだよね」

「アニメの影響か。でも、確かに電車通学は洒落てる感じがするかもな」


 電車が来るまで二人で会話していると、悠一は誰かの気配を感じた。


「橋本君、おはよう。そちらの子は?」


 丁度、如月絃葉(きさらぎ/いとは)がやってきた。


 悠一は心臓が掴まれた感じに、ドキッとしてしまう。


 現在、絃葉から疑いの眼差しを向けられていたからだ。


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