第4話 橋本君、その子とはどういう関係なの?
「悠一君、また明日ね」
夜の街中にいた橋本悠一は、アーケード近くの横断歩道で莉愛と別れた。
杉本莉愛は手を振っており、悠一もそれに応じて手を振り返す。
横断歩道の信号が赤色になると車が行き交うようになり、反対側の歩道にいる彼女の姿は見えなくなった。
悠一は駅へと向かって歩き出す。
駅に到着した頃合い、スマホを確認すると電車が到着するまで少しだけ時間があった。
現在いる駅は程よく広く、コンビニ、立ち食いそば屋、本屋、和風の食堂、喫茶店などがある。
悠一は電車が来るまでの間、時間調整の為にコンビニへ立ち入る事にした。
コンビニに入り、店内を歩いていると誰かの視線を感じたのである。
「ん?」
店内の弁当、パン売り場にいる際に、悠一は隣を見やる。
「橋本君?」
「如月さん。まだ駅にいたの?」
偶然にも如月絃葉と遭遇した。
彼女は愛想の良い笑顔を見せて、軽く手を振って挨拶をしてきたのだ。
「私ね、学校帰りに友達とバッタリと出会って、今の時間まで街中で遊んでいたの。今から帰ろうとしていたんだけど。まさか、橋本君と会うなんてね」
「俺もビックリだよ」
「ねえ、橋本君、委員会の方はどうだった?」
「思ったより時間がかかった感じ」
「そうなんだ……あとね、聞きたい事があって、橋本君は一人で学校から来たの?」
「途中まで一緒の子がいて、その子と一緒にね」
「へえ……ちなみに、その人って男友達的な人かな?」
「えっと……女の子なんだけど……」
悠一はおどおどした口調になっていた。
彼女からの返答が気になるところだ。
「へ、へえ」
絃葉はジト目になっていた。
「ど、どうしたの?」
「別に、なんでもないけど……その子とはどういう関係なのかなって」
「その子とは去年から一緒に委員会活動をしている子で、如月さんが考えているような間柄ではないよ」
「本当?」
「う、うん」
悠一は首を縦に動かす。
「まあ、それならいいけど。私たち一応付き合っているでしょ。だから、あまり別の子と付き合ってほしくないの。でもね、友達とかなら別にいいんだけど。私、本当に橋本君を束縛しようとか、そういうのじゃないから。それは安心して。ちょっと不安だったから。それで質問してみたの」
「そ、そうか。その子とは疚しい関係じゃないし、俺は浮気なんてしないから」
「そう言ってくれるなら信じれるかも」
絃葉はホッと胸を撫でおろしていた。
「橋本君。ここで会ったのも何かの縁だし、一緒に帰ろ。向かう駅も同じでしょ?」
「そ、そうだね」
絃葉の方から積極的に誘ってきた。
彼女は急激に、悠一との距離を詰めてくる。
「橋本君は、何を買うつもりでいたの?」
「俺はこれかな」
コンビニ内にいる悠一は、棚に置かれているサンドイッチを見つめていた。
今日は大分遅めの帰宅になる事から、自宅での夕食時間も終わっている頃合いだろう。
悠一はサンドイッチを手に取る。絃葉も続けて、同じ商品を手にしていたのだ。
「私、悠一とお揃いにするね」
絃葉は他に、商品棚に置かれた五〇〇mlの苺ミルクの紙パックジュースを購入していた。
一通りの買い物を終えた二人はレジで会計を済ませると、コンビニを後にする。
二人は時間を気にしながら、駅の改札口まで歩く。
定期券を使って通り抜けると、電車が来るホームまで向かった。
「橋本君、これいる?」
「それは?」
「グミだよ、食べる?」
「一個だけ貰うよ」
悠一は、彼女から差し出されたグミの袋から一個だけ取り出す。
紫色をした小さな物体。
触ると弾力を感じられる。
実際に食べてみると、グレープの味がするグミであり、次第に炭酸の味が口内に広がっていく。
「どう、美味しい?」
「普通に美味しい。如月さんって、普段からお菓子を持ち歩いてるの?」
「念の為にね。ちょっとだけ小腹が空く時ってあるでしょ。非常食的な感じで、普段から持ち歩いているの」
「へえ。俺も今度からグミを持ち歩こうかな」
「私のおススメはグレープ系のグミかな。レモン系でもいいけど、あれは酸っぱいんだよね。他にも梅干しやコーラ味もあるけど、グレープが丁度いいって感じ」
「アドバイスありがと」
会話にひと段落ついたタイミングで、遠くの方から明かりが見えた。
電車がやってくる音が響き、その数秒後に二人の前に電車が停車する。
電車からは会社や学校帰りの人らが降りてきて、それから二人は乗車するのだった。




