第3話 今日は一緒に帰らない?
「じゃあ、今日は解散って事で! 明日からは二年生が、新入生に貸出の時のやり方を教えるように」
小鳥遊部長の声が、夕暮れ時の図書館内に響く。
そのセリフと共に、新学期初めのミーティングが終了したのである。
他の人らは帰宅準備を済ませると、次第に図書館を後にしていく。
室内の窓から見える景色は薄暗く、時刻も五時半だった。
思ったよりも、時間がかかったと悠一は感じていたのだ。
「悠一君、一緒に帰らない?」
テーブル前の席に座っていた悠一は、その場に佇んでいる杉本莉愛から話しかけられていた。
彼女はすでに、通学用のバッグを肩にかけ、帰宅する準備は出来ていたのだ。
「じゃあ、帰ろうか。ちょっと待ってて」
橋本悠一は席から立ち上がると、テーブル前に置かれたA4サイズくらいの用紙を手に取り、それをリュックにしまう。
その用紙には図書委員会として守るべき注意事項や、受付を担当するスケジュールなどが記されているのだ。
今週中から図書委員として、本の貸出の受付をしたり、一年生らに指導する事だってある。
これからは一年生らの見本にならないといけないのだ。
悠一は先輩になったのだと実感しながらリュックを背負うと、文芸部部長である小鳥遊先輩に挨拶をしてから、莉愛と共に図書室を後にした。
二人は昇降口まで向かい、外履きに履き替えると通学路を歩き始める。
これから二人が向かう先は街中だった。
「私、買いたい本があるんだけどいいかな?」
「いいよ。どこの本屋に寄る?」
二人はお店の明かりで照らされた街中に繋がっている道を歩いていた。
「アーケード通りの出入り口から少し歩いたところにある本屋さんなんだけど」
「あーあそこね」
「悠一君は時間的に大丈夫?」
「俺の方は……大丈夫だと思う」
街中に到着した悠一は、スマホの画面を確認する。
時間は六時一五分を過ぎた頃合いだった。
悠一は普段から電車通学をしているのだ。
いつもは五時五九分くらいの電車に乗り、帰宅していた。
六時の時間帯は二六分もあるが、今から走ったとしても乗り遅れてしまう可能性がある。
悠一は、その場に立ち止まり、スマホ画面を見ながら悩み込む。
七時くらいの電車に乗れればいいと自身の中で結論に辿り着き、今は莉愛と共に行動する事にしたのだ。
「莉愛さんが買う本って、漫画?」
二人はアーケード通りにある本屋の店内にいた。
「そうだよ。新刊が出たから買いたいと思っていたの。オンラインショップで購入してもいいんだけど。直接お店で購入した方が特典を貰えるし」
「確かに、特典を貰えるなら、お店で購入した方がお得だよね」
「そうそう。私、実はね、予約をしていたの。ほら、これなんだけどね」
莉愛は、予約伝票を見せてきた。
それは週刊系の漫画雑誌で連載している漫画の単行本だ。
学園を舞台にした異能バトル系の作品であり、主人公とヒロインが裏生徒会長に立ち向かっていくといった物語なのである。
「私、ちょっと会計してくるね。悠一君は、漫画コーナーで待ってて」
「わかった」
悠一は漫画コーナーへ移動した。
悠一も莉愛と同様に漫画が好きで読んでいる。
普段から好んで読んでいる漫画は、莉愛のような週刊系の漫画ではなく、ラノベ原作の漫画だ。
この頃は、小説を原作としたコミカライズ作品が増えている。
悠一は、原作のラノベを読みながらも、漫画版の方も目を通しているのだ。
同じ作品ではあるが、ラノベと漫画で表現の仕方が違ったりして、その違いを見て楽しんでいた。
悠一は漫画コーナーに設置された本棚を眺め、購入したい本を手にすると裏表紙のあらすじ部分を見ていたのだ。
これにしようかな。
悠一が本を購入しようと決意を固めたところで、予約した漫画の会計を終わらせた莉愛がやってきた。
「悠一君も何か買う感じ?」
「ああ。これにしようと思って」
「それって、アニメ化が決まったラノベ原作の作品でしょ。私も、その漫画を読みたいな」
莉愛は、悠一が手にしている漫画の表紙を見て、目を輝かせている。
「じゃあ、読んでから貸すよ」
「ほんと! ありがと」
悠一はその漫画を購入する事にし、それから莉愛と書店を後にするのだった。




