第81話 呼んだかの
久々に島に戻ると開拓が進んで家が増えていた。
希望する人たちは、共同生活から個人宅へと移り住み始めている。
私も資金の余裕があるため、農業、漁業を事業として立ち上げ、従業員としてみんなを雇い給与制に変更した。
いずれは私が経営する事業とは別に、自分たちの土地や船を持ち独立する人も出てくるとは思うが、今はまだ開拓が始まったばかりだから、このままでいく。
エクラ商会が支店を出してくれて、食料品も買えるようになっていた。
鍋や農機具などはガルシアさんたちドワーフが、剣やナイフを作る片手間に作ってくれている。
しかしガルシアさんともう一人はお酒造りに夢中になっているらしく、2人はあまり鍛冶をしていないらしい。
人を増やすにはもう少し住居が出来てからになっているが、募集は商業ギルドを通して始めていた。
「セド、留守中ありがとう」
セドとナディーヤに留守中の話を聞こうとすると、見せたいものがあると2人に連れて行かれる。
目の前には大きな厩舎? 小屋が出来ていた。
「ナナとメルの家にしては大きくない?」
「説明は中に入ってからだ」
セドが言いながら扉を開けて中に入ると、目の前には大きなライオン、いや羽がある。
「グリフォン?!」
私は思わず大きな声を出すと、2人が人差し指を自分たちの口にあてて静かにという仕草をした。
セドがグリフォンに話しかける。
「驚かせたらごめん。話していた、この島の領主だよ。今日戻って来たから挨拶にきたんだ」
セドたちはグリフォンが怪我で動けなくなっているところに遭遇して、ポーションをかけて助けたらしい。
そしたらセドに懐いてついてきたそうだ、しかもおそらく妊娠しているだろうとのことだった。
私はグリフォンに話しかける。
「子供が生まれるまで安心してここにいたらいい。なんなら子育てもここでしてもいいよ」
するとグリフォンが頭をさげた。
「賢いな、こちらの言葉を理解しているのか?」
「あぁ、会話はできないが首を縦や左右に振ってくれるから、コミュニケーションは取れるんだよ」
私たちは厩舎を出て私の執務室に行く。
「驚いたよ、まさかグリフォンなんて!」
「ダル、まだ王家に言わないでほしい」
セドは子供を産んで子供が空を飛べるようになったら、元の場所に戻るだろうという。
確かに残念だけど、強引に王家所有としてもグリフォンが暴れたら殺されるからな。
「わかった、グリフォンの意思を尊重する。だけど番いがいないのは何かに襲われたからか?」
そこはセドたちもわからないらしい。
セドたちが思いついて聞いても、グリフォンは首を振るだけで、すべて違ったようだとのことだった。
「亀様はグリフォンと会話できないのだろうか?」
「「あっ!」」
2人とも私の思いつきになぜ思いつかなかったのかという表情をする。
亀様を探そうと3人でソファーから立ち上がると、亀様がドアを開けて入ってきた。
『我を呼んだかの』
「亀様!」
私はグリフォンの怪我の原因と、番いが探しに来ないのか知りたいことを伝え、亀様がグリフォンと会話ができないか尋ねた。
『向こうが呼びかけに答えなかったら諦めてくれ』
「ありがとうございます」
『たいしたことではない。それにそなたがアグネスに土産で渡した物がどんな料理になるか楽しみだからな』
「苦い飲み物ですよ。ミルクを入れれば美味しかったですが・・・・」
アグネスが一緒に帰ってきたジョージさんを捕まえて、アイデアをもらっていたそうだ。
ジョージさんはヘレンが戻ってくるまでこっちにいるらしい。
亀様は窓を開けてグリフォンの厩舎に行ってしまった。
私はセドとナディーヤに、グレン商会との成果や王城の話をかいつまんで話していると亀様が戻って来た。
私はアグネスにお願いしていたお茶とお菓子をテーブルに置く。
『気が利くではないか。まずはお茶を飲ませてくれ』
ちょっとイラ立った声の亀様だったが、お茶を飲んで気分が落ち着いたようで話だす。
グリフォンと会話ができ、グリフォンが集団で過ごしている場所に来た密漁者に捕まったらしい。
人間は初めてだったそうだが、変なものを所持していて身動きが取れなくなってしまったそうだ。
番いが捕まったグリフォンを助けに来て檻から解放したが、逃げる時に番は羽を攻撃され飛べなくなってしまったそうだ。
そして自分に逃げろと子供を無事に産むんだと言ったそうだ。
巣に戻りたかったが、また襲われたらと思うと戻れなかったらしい。
「よくセドを信じてくれましたね」
私が感想を述べると、セドとナディーヤがうなずいた。
『疲れ果ててもう体力も限界だった時に、また人間と出会いここまでかと思ったそうだ。あと番いのことも心配だとな』
亀様の声が少し怒っているように聞こえた。
「助けに行きたいが、場所がどこなのかわからない」
「ここにいるグリフォンに教えて貰いたくても、出産間近で身動きとれないですものね」
セドとナディーヤも私と同じ気持ちだったようだが方法が見当たらない。




