第80話 商談(後編)
翌日、フェリクスが売却してもよいといった2隻を、グレン会長と一緒に見て回ったが、内部は新品同様だった。
「これは中古とは思えない奇麗さですね」
グレン会長が感嘆の声をあげると、フェリクスが説明を始める。
「船の骨格は防腐加工されていたそうですが、それ以外は新しいものと取り換えています」
だから普通の中古船より、売却価格は高くなるらしい。
隅々まで見て回ったグレン会長が話し出す。
「本当にこの船を売っていただけるのですか?」
グレン会長は気に入ってくれたようで、フェリクスが答える。
「船大工のスキルを持っている者が直した船ですし、走行も問題ありません。普通の中古船より高くなりますが、新品部分も多いため、お買い得だと思います」
グレン会長がうなずく。
「私も購入しようと色々見て回っていますからわかります」
グレン会長は2隻とも購入を希望した。
ただ今回2隻とも持ち帰るには船員不足のため、1隻だけで、もう1隻は次回の時にと仮予約になった。
「ダニエル様、1隻増えたので購入できる商品を増やしたいのですが・・・・」
元騎士だと言っていたが、やり手の商人さんだ。
空で持って帰るだけなんてもったいないよね。
「詳細はヘレンと話してください」
グレン会長は私が書いた手紙を持って、荷を持ってきていたエクラ商会の従業員と一緒にエクラ商会に行った。
私とフェリクスはグレン会長を見送っているが、フェリクスが口を開く。
「グレン会長は鍛錬を怠っていないようですね」
「海賊に遭遇することもあるからではないの?」
「それもありますが、海賊退治もしているのではないでしょうか?船員たちも手練れている者が多いように思います」
グレン会長はナビア王国の王族の血筋だし、国の手が回らないところをフォローしているのかも。
この周辺が安全に走行できるようになるのは歓迎だから、警戒する人ではないと思う。
「ところでいつの間にラクトゥーワ王国に仕入れに行っていたんだい?」
今回の我が領以外の品は、ラクトゥーワ王国の品物だったからだ。
「ダニエル様が王都に行っている間です」
フェリクスの奥さんの実家は商家らしく、そこで取り扱っている品物の在庫を売ってもらえる分や、周辺の商会からも船に詰め込めるだけ購入したらしい。
「もちろん、ヘレンさんが商品を確認してですが・・・・」
「ヘレンも思い切ったね」
「今回売れなくても国内で捌けるとおっしゃっていました」
フェリクスもコーヒーは、よく飲んでいたらしく、飲めるようになって嬉しいらしい。
「実はヘレンさんから、妻や船員の家族たちでコーヒー店を立ち上げて、サンドイッチやお菓子などと一緒に売ってはどうかと提案があったんです。妻たちもやる気なんで忙しくしています」
この土地に馴染んでもらうには、領民たちとの交流が一番いいし、ヘレンも勝算があるからの提案だろう。
この領にまた新しい名物が出来るのだからいいことだ。
ラクトゥーワ王国出身の島の住民たちに、コーヒーをお土産として持っていったら喜ぶかな?
あと冒険者パーティのグリントのメンバーたちも船の操縦にも慣れてきたらしく、次回の仕入れには同行させたいとのことだった。
「正式に従業員として雇わないといけないね」
「はい、よろしくお願いいたします」
契約も無事に済んだグレン会長は、翌日この地を離れたが、1か月後に船を引き取るために再び来るそうだ。
また2隻でくるらしく、3隻分の商品をよろしくお願いしますと言って帰っていった。
ヘレンが大喜びでフェリクスさんやグリントのメンバーたちを急き立てて、2隻の船でラクトゥーワ王国へ翌日出発していった。
しかもヘレンから私に、マジックバッグを購入かレンタルさせてほしいとお願いされたから1つ売却した。
ヘレンたちを見送っていると、ジョージさんがいつの間にか私の横に来ていた。
「ダニエル様、これからプロポーズする予定だったのに・・・・。ヘレンの気持ちが変わったらどうしてくれるんですか」
恨めしそうに言われた。
ヘレンも商品探しで、下手したらグレン会長が来るギリギリに帰ってくる可能性もある。
そしてグレン会長との商談になるし、最低でも1か月は空くな。
しかも忙しい時にプロポーズなんてすると、ヘレンが時を選べと言いそうな気がする。
「商談が成功すれば、ヘレンも気分がいいから、プロポーズ成功の可能性が高くなるのではないの?」
「そうですね。そう思わないとやってられません」
ジョージさんがいじけていた。




