第77話 グレン商会
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今回沈没した海賊船から回収したものに、高価なものはなかった。
私が海の中で拾った木箱の中身はほとんどが食料品だった。
密封状態のワインなどは、騎士団やフェリクスたちで飲んでいいと渡たす。
リカード隊長やフェリクスの見解では、我々を襲うだけの計画だったのだろうとのことだ。
戦闘途中で海にいる私に向かって叫んだ海賊や、魔道具を使って海に潜った連中のことを考えれば納得する。
私は気分転換も兼ねて、戦闘があった付近で高級魚を獲りながら、海賊たちの持ち物が落ちていないか確認することにした。
真っ先に遭遇したのは、例の海藻に擬態した生き物だ。
これがいると海底を探索できないため、他所へぶん投げた。
すると剣や短剣が落ちていたため拾っていくと、少し先に光る場所を見つけ近づく。
拾ったのは透明な石がついたごつい指輪だった。
さらにもうひとつ同じものを見つける。
その後も魚を獲りながら、島の周辺を泳いでいたら、また光って見える場所を見つける。
そこにも剣や短剣、そして皮袋が落ちていたため拾っていく。
そして子爵領に戻っている途中、海の中でまた光るところがあり近づくと、帆立貝に似た形だが、大きさは5倍以上大きく、貝殻の表面は白いモノがたくさんいる場所だった。
そしてそれがあちこちで口を開けると、白っぽいモノが吐き出している。
吐き出されたモノを拾うと、直径3、4ミリくらいの真珠に似たものだった。
周囲を見渡すとたくさん落ちていたため、拾えるだけ拾って帰える。
子爵領に戻って回収品を確認すると、ごつい指輪は水晶がついた魔道具、皮袋はマジックバッグと判明した。
マジックバッグには、サファイア、ルビー、ダイヤモンドが入った小袋と、金貨入りの中袋、紋章入りの指輪、書類が1枚入っていた。
書類は鉄鉱石、魔石、鉱物などや、リザード、アント、ビッグマンティスなどの固い甲羅の部分等が書かれていたが、商会名などは入っていなかった。
購入リストだろうか?
これは宰相様に回収した書類と一緒に渡そう。
そして真珠もどきをヘレンに見せる。
「これは装飾品として売れますよ。手に入るならもっとほしいです」
ヘレンが目を輝かしていた。
私は小粒なのにと思ったが、ヘレンには案があるようで全部買取ってくれ、追加依頼も受けたため、次の日潜って拾えるだけ拾って戻った。
10日後、王都では宰相様と面会し、報告と海賊から回収した品で、私では手に負えないものを渡す。
「これは書類のようだね」
ほとんど滲んで読むことが不可能な書類と地図、それからマジックバッグに入っていた書類計6枚と紋章入りの指輪、それと魔道具の指輪1つだ。
魔道具の指輪はジョージさんも興味を示したので、1つ渡している。
「王城でなら修復可能ではないかと思い持参しました」
宰相様は書類も一緒に引き取ってくれた。
「もしこの書類が修復できたらどうしたい?」
「地図が海賊の本拠地なら行きたいです」
「討伐したいということかね」
「はい」
私たちだけでは人数が少ないが、海賊たちが海の中を長時間泳ぐことが出来るようになる前に、出来れば潰したいと思っている。
「ところで王女様から報告で、神獣様がすこやかに過ごされているようで安心したよ。あと子爵領の急速な発展の手腕見事なものだ」
宰相様からお褒めの言葉をいただいた。
「ありがとうございます。しかし民の協力あってこそです。しかし王女様を危険な目に遭わせてしまい申し訳ございません」
宰相様からは王女様に押し切られた自分たちにも非があるから、気にしないようにとのことだった。
「それとナビア王国からの書簡だ」
渡されたのは紹介状だった。
「グレン商会?」
私がナビア王国にリクエストしていた信用できる新興の商会名で、来月私を訪ねて商会長自ら子爵領に来るとのことだった。
子爵領に戻った私に2週間後宰相様から手紙が届く。
滲んでいた書類と地図は復元できたが、地図は部分的にしか描かれておらず、どの地域なのか現時点では不明。
ただ調べは継続するため、新しいことをがわかれば連絡をくれるとのことだった。
今私はヘレンと一緒に子爵領の桟橋に来ている。
今日はナビア王国からグレン商会長がやって来たのだ。
子爵領の桟橋に船が接続して降りてきた男性は、20代半ばの商人というより、騎士か冒険者ではないかと思うような体格のいい男性だった。
そして私の目の前にやって来る。
「初めまして、グレン商会の会長を務めているロンバート・グレンと申します。以後お見知りおきください」
流暢な共通語であるラント語を話す。
共通語とは他国との会議や会談で使う言葉だ。
貴族や他国と取引のある商会は必須の言語である。
私もラント語でヘレンを紹介すると、ヘレンも流暢なラント語で挨拶をしていた。
ヘレンが話せるなんて知らなかったから驚きだ。
「いやぁー、これはいい取引になりそうだ」
品物を見せていないのに、グレン会長が満面の笑みを浮かべた。




