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第74話 滞在記(7)

芋虫の所から戻った翌日、今度はムームー見学だ。


ルドヴィカ王女様もアイリスも、体は疲れているはずなのにテンションが高い。


2人の会話からムームーを見るのが楽しみなようだ。



ムームー牧場といってはいるが、実際は放し飼いである。


ムームーをこの島で見つけた所に似ている場所が、私たちが住んでいる場所から比較的近くに見つかり、ルイスさんが毎日通うのもあってか、まったく逃げ出さないからだ。


王女様たちに合わせての移動のため、2時間ほどかけて着いた。


周囲は木々がほとんどない草ばかりの土地で、遠くを見ても草だった。



「木がほとんどない場所なんてあったんだね」


「ここは島の探検で見つけていたんだ」


私の感想にセドが側で教えてくれた。


なんでもムームーをここへ連れてきたとき、ムームーが夢中で草を食べだしたらしく、商業ギルドでムームーが好む餌を確認したところ、一致したのだとか。


最初にムームーを見つけた場所とここで、誰かがムームーを育てようとしたのではないかというのが、セドたちの結論だった。



「でも島の反対側まで、どうやってムームーを連れて行ったのだろう」


私はムームーが最初に見つかった場所が不思議だったのだ。


「海賊のアジトだった場所から近いんだ。だから海賊は放棄された場所を利用して活動していたのではないだろうか」



セドと話していると、ルイスさんがムームーの中でも比較的大人しい、群れの中で一番小さいムームーを連れて、ルドヴィカ王女様たちの近くまでやって来た。


ルドヴィカ王女様やアイリスは触りたいように見えるが、気性が激しいムームーなので、少し離れた場所から見るだけと事前に約束している。



「ムームーの毛刈りも見学したかったけれど、時期ではないようで残念ね」


「そうですね、でもこんなに大人しいのに、本当は気性が激しいとは、スキルの力はすごいです」


ルドヴィカ王女様とアイリスが会話していた。



ルイスさんがムームーを連れて離れて行ったが、ムームーに何か語り掛けた後で、頭をなでていた。


すると他のムームーが、ルイスさんの所へ来て囲まれてしまい、ルイスさんは困った顔をしている。


「どういうことかしら?」


ルドヴィカ王女様が呟いた。



同行していたルイスさんの姉であるルイーザさんが、発言許可を求めたため、ルドヴィカ王女様はうなずいた。


「弟がムームーの頭をなでると、他のムームーも自分たちにもしろと集まってくるのです」


緊張しながらもルイーザさんが説明してくれた。



つまりルイスさんは、うっかりムームーの頭をなでたということか。


この話を聞いて周囲にいる人たちみんなで笑ってしまった。


ああなるとムームーが満足するまで、頭をなでないといけないらしく、私たちはアステールのメンバーを残して先に帰ることになった。




翌日は、船でナビア王国のキャロライン王女様が亡くなった場所へ行く。


沈没船は引き上げているため、すでにないのだが、祈りをささげたいとルドヴィカ王女様の強い要望だった。


さすがに危険が大きくなるため反対したが、ルドヴィカ王女様は国王陛下たちから許可された書状を私に差し出したため何も言えなくなってしまった。



現状、2隻しか稼働できないため、リカード隊長の船にルドヴィカ王女様、アイリスたち、フェリクスの船に私やセドたちが乗っている。


沈没船を引き上げた場所に着き、ルドヴィカ王女は目を閉じ、祈りをささげたあとで、ピンクのバラの花束を海に投げたところを見ていた。



事前に聞いた話では、このピンクのバラは、王城で作られた品種で「キャラン」。


ちょうど我が国の王太子殿下とキャロライン王女様との婚約が決まったころにできた新種らしく、キャロライン王女様の名前から名付けたバラだとのことだった。


キャロライン王女様は、このバラを見るのを楽しみにしていたとか。


ナビア王国に運ぶ遺体の棺の中にも贈ったそうだが、ここにも持ってきたとのことだった。



「ダニエル様、こちらに向かっている船があるそうです」


フェリクスが私の隣に来て報告してきた。


「商船?海賊?」


「はっきりとは言えません。ただここを離れた方がよろしいかと」


「リカード隊長たちに連絡は?」


「あちらも確認できているようです」



周囲に緊張感が走り、船の移動を始めるが、相手の船はこちらに合わせて追って来ているという。


相手の船は戦闘跡が見えるため、もしかすると商船が救援を求めている可能性もあるとフェリクスが、船員たちに指示を出しながら私にも新しい情報を教えてくれる。


「それにしてはフェリクスは救援しょうとは言わないね」



「今回は王女様の安全が第一です。それに救援であれば信号弾をあげてもよろしいかと思います」


「海賊の可能性が高いということかい?」


フェリクスは海賊がよく使う手だと教えてくれた。



だから私たちの船が、王女様が乗る船の前に移動して相手の船を警戒しながら2隻並んで子爵領へ進む。


すると先方の船が追いかけてこなくなった。


「前方の島に2隻が隠れています」


見張り台から船員が叫んだ。



「しまった、罠か!!」


フェリクスが叫んだ。


船が方向転換している間に、島に隠れている船が我々の所へきてしまうだろう。


目の前の島は王女様の乗った船側だ。



「フェリクス、私が止めてくる。リカード隊長たちに連絡を」


私は海に飛び込んだ。


全速力で泳ぎ、海賊船の底に回り、まずは1隻を持ち上げ、私たちの船とは反対方向へぶん投げた。



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