第73話 滞在記(6)
周辺を見渡すが、親らしき芋虫は見当たらない。
「この芋虫たちの声が聞こえたのか。ミリア、痛い以外の言葉は聞こえないのかな?」
「ダニエル様、痛いしか聞こえないです」
「私たちで様子を見てきます」
私とミリアの会話の後で、アウローザのディアナさんが提案してきた。
アラン副隊長も「我々が・・・・」と言ってきた。
だけど冒険者としての経験値を信用してくださいとナディアさんが押し切り、アラン副隊長は引き下がる。
アウローザのメンバーは、芋虫が左右に動き回っているのをよけながら近寄り、そしてすぐに戻って来た。
「2体の芋虫の体にいくつか鋭いモノが刺さっています」
ナディアさんから報告があった。
原因はわかったが、問題は体を左右にくねらせ動き回っている芋虫をどうやって押さえて、刺さっているモノを抜くかだ。
「私が芋虫さんたちに、しばらく動かないように説得してみる!」
ミリアは芋虫にぶつからない距離まで近づいて、根気強く話しかけているが、子供芋虫たちの動きは止まらなかった。
すると大人の芋虫が1匹、子供芋虫に近い木々の間からやって来た。
そして2匹の子供芋虫の尾の付近を自分の体で押さえ込む。
子供芋虫たちの動きが緩やかになったというか、動けないのだろうな。
「今だ、みんなで手分けして急いで抜くぞ」
私の掛け声でみな走って子供芋虫に近寄り、刺さっていたモノをすべて取り除いた。
「ダニエル様、まだ芋虫たちが痛いって言っているんです」
「すべて取り除いたはず・・・」
ミリアの説明を聞いたが、私は原因が分からなかった。
「もしかしたら刺された箇所が痛い可能性はないでしょうか?」
ディアナさんが私の疑問に答えてくれた。
「ポーションが芋虫に効くか不明ですが、やってみませんか?」
ナディーヤが提案してきた。
大人芋虫がまだ子供芋虫たちを押さえてくれているので、ミリアが芋虫たちに状況説明をしていると同時に、ポーションを傷口にかけて回る。
子供芋虫たちの動きが完全に止まり、大人芋虫も子供芋虫たちから離れた。
子供芋虫は私たちがいる場所とは違う方向に糸を飛ばし、口から糸がでなくなるとこちらを向く。
そして顔を傾けたように見えたが、すぐに去っていった。
「キュ、キュ」
子供芋虫を見送っていたら、残っていた大人芋虫の声がする。
「糸を飛ばした先に、さっき抜いた棘みたいな物がある?」
ミリアが首を横に傾げながら、自信なさげだった。
そこで私たちは糸を回収し、その先を進むと、葉?と言っていいのかわからない不思議な植物がある場所につく。
1枚の直径50センチ以上はあり、肉厚、細くて長い鋭い棘がいくつもついている。
「これは見たことないものだね?」
私の隣にいたセドに話しかける。
「俺もこの島を見て回っているが、初めて見たよ」
子供芋虫は遊んでいて、勢い余ってこの葉にぶつかった可能性が高いな。
そうなると、大人芋虫からの依頼は、この葉をなんとかしてほしいという意味だろうか?
しかし葉1枚1枚が大きく、棘が鋭いから切っていくにしても時間がかかりそうだ。
アウローザのケイティの顔が赤くなり興奮し出す。
「ダニエル様!この葉、美肌になると鑑定が出て・・・・」
「なんですって!!」
「ケイティ、本当なの!!」
ケイティさんの話の途中で、ナディーヤやアウローザのメンバーがケイティさんを囲む。
ケイティさんのスキルで、この植物の鑑定をしてくれたようだが、女性陣の熱気が凄かった。
囲まれたケイティさんが女性陣に話している内容は私たちにも聞こえた。
効能:美肌とだけしかわからず、そのまま使用できるかまでは不明らしい。
でも美肌と聞き女性陣たちのやる気が凄かった。
「冒険者をしていると肌が荒れるわ。これは女性冒険者たちへの救世主になるかもしれないから、全部持ち帰るわよ!!」
アウローザのリーダーであるディアナさんが、アウローザのメンバーに向かって言うと、全員がうなずいている。
「ではみなさん、丁寧に切って葉をすべて持ち帰りましょう」
ナディーヤもアウローザの輪の中で話し、女性陣は棘に気を付けながら葉を剣や短剣で切り落とし始めた。
男性陣も女性陣の勢いのすごさに圧倒されていたが、葉を切ろうと木々に近づいた時に女性陣たちが叫ぶ。
「「丁寧にね(よ)!!」」
「葉の末端部分を丁寧に切ってください」
女性陣の真剣さが凄いので、男性陣は素直に従った。
私とセドはみんなが切り落とした葉をマジックバッグに入れていく。
ナディーヤから新鮮さも大事かもしれないため、すぐにしまって欲しいと依頼されたからだ。
「お疲れ様です。ダニエル、遅かったけれど、大丈夫だった?」
アイリスは私が野営場所に戻ると、すぐにやって来て声をかけてきた。
私はアイリスに顛末を話す。
「えぇー、美肌になる葉を見つけた?!」
アイリスの驚きの声が周辺に響く。
アイリスは慌てて口を閉じるが、マクファーソン伯爵や王女様に聞こえたらしく私たちのところへやって来た。
「すごく気になる話ね。詳しく教えていただけるかしら?」
私はアイリスにした同じ話を2人にもした。
「王城の薬草園管理者に見てもらうのはいかが?」
「いえ、お手数を煩わせるのは・・・・」
王女様の提案を私断りかけていたら、王女様がすごい笑顔で私を見つめている。
「・・・・3枚ほどでよろしいでしょうか?」
「ありがとう。結果は知らせるわね」




