第66話 報告
「事前に聞いていたが、詳細を聞くとさらに驚くな」
宰相様が苦笑している。
翌日、父上と王城へ行き、今宰相様に一通りの報告が終わったところだ。
宰相様からは、首輪を解除する魔道具を製作したジョージさんについて問われる。
私は写し玉をジョージさんが作った目的よりも、別で重宝されていることに本人が不満を思っていること。
ジョージさんは依頼品を作るより、自分が作りたいものを作りたい人であること。
子爵領内を中心に商会をしている女性に、女性の親族を味方につけて口説いている最中だと、知っていることを話した。
「王城にスカウトするには難しい人物のようだ」
私の説明を聞き終えた宰相様の呟きに、私は同意も否定もせずに話を続ける。
「ジョージさん本人から、首輪の解除魔道具の設計図を渡されました」
私は宰相様に、設計図を渡した。
「設計図の価値相当の報酬は払うと、製作者に伝えてくれたまえ」
私は宰相様にお礼を言いながら頭を下げた。
それからナビア王国と、ナッカリア王国からの褒賞が届いたと、目録が入った細長い小箱が2つ私の前に出される。
宰相様が頷くので、内容を確認する。
どちらの国も褒賞金と宝石類、勲章だった。
勲章は、ナビア王国、ナッカリア王国に貢献した人に贈られる物らしく、両国を訪れる時があればその勲章を見せるだけで対応がかなり違うらしいと、宰相様が教えてくれた。
「いいのでしょうか?褒賞金も多いように思いますが・・・・」
「国のメンツがあるから気にしなくていい」
さらに宰相様から、非公式でナビア王国の両陛下から、キャロライン王女の遺体を発見したことを感謝してくれているらしく、別に何か希望がないかとのことだった。
いや、貰いすぎです。これ以上は強欲と思われそうです。
「希望を出さないのもよくない」
宰相様に諭されて、私は領内の特産品をナビア王国と取引したい。
大商会ではなく、信用できる勢いのある新興の商会を紹介して欲しいと依頼した。
「絹よりも光沢のある生地や、大粒真珠、チエリ貝とかかね?」
私は大粒真珠については、王家に買取してもらったもの以外は見つかっていないこと。
絹なのだけれど、身にまとうと少しだけ暖かく感じる生地や、ムームーの生地を販売したいと話した。
「待ちたまえ、その話は本当なのかい?」
宰相様が改めて確認してきたため、父上を見ると頷かれた。
私は事前に用意してきた、通常の絹生地と暖かく感じる絹生地2つをテーブルに出した。
宰相様は私の説明を聞き、それぞれの生地を手で確かめる。
「うむ、確かに片方は暖かく感じるな」
「私も確かめましたので間違いないと思われます」
父上もフォローしてくれた。
「実は子爵領内に、糸鑑定というスキル持ちがいまして、その者にも確認してもらっています」
私は絹よりも光沢ある生地の糸が、微妙に色が違うことを発見した人物だとも付け加えた。
またムームーについても、リラックスというスキル持ちにムームーが懐き、ムームー牧場が出来たことを話した。
「ダニエル君だけでなく、君の領地では外れスキルと言われているだろう人達が活躍しているのだな」
宰相様が優しい顔つきをされる。
まぁ、海読みのハンス、獣語のリアム、継ぎ手のジェイ等々・・・・確かに自分のスキルを持て余していた人たちが、いつの間にか我が領内で活躍している。
「偶然だとは思いますが、みんな自分のスキルが活かせると喜んでいます」
「我々が使いかたを知らないだけで、すべてのスキルには意味があるということだ」
宰相様の言葉は、教会が苦しまぎれに言っていることだと私も思っていたが、正しかったということだろうね。
「あと神獣様について、昨日伯爵から手紙をもらってすぐ調べたよ。北の国でよく見かけられた神獣様ではないだろうか?」
宰相様の話では、ナビア王国よりも北にある地域で、人間と会話する亀の話がたくさんあり、とてもあがめられているとのことだった。
そして神獣様がよく現れた時代は、冬が長い北国でも豊かな国が多かったらしい。
「宰相様、今は北の国々は豊かではないということですか?」
ほとんどの国は、国力が多少落ちた程度だが、一つだけ厳しい国がある。
ナビア王国に隣接するアルム国、軍事国家といわれている国だ。
他の北国と比べて作物が育ちにくいのだとか。
ただ鉱山資源と、傭兵稼業が国を支えているとも教えてくれた。
「もしかして海賊たちは、アルム国出身者ですか?」
私は宰相様から聞いた話から思い至った。
やはり一部はアルム国出身者、海賊をまとめている者たちはアルム国出身者の可能性が高いらしい。
海賊たちからの調書を見ての結論だとのこと。
そして亀の神獣様の話で一番話が残っているのがアルム国・・・・軍事国家になる前の国の時代だそうだ。
そういえば亀様、嫌になったらその土地を離れるだけだと言っていた、だからアルム国にもいた可能性は高い。
私は宰相様に亀様の言葉を伝える。
「神獣様は北の国々で、あがめられていた亀の可能性がたかいな」
しばらく考えていた宰相様から、王家の代理人が亀様に挨拶に極秘で訪ねていきたい。
数日中に詳細を伝えると言われ、報告は終わった。




