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第64話 料理談義

早速、私は亀様と食堂に行き、アグネスを呼ぶ。


「ダニエル様、お帰りなさい。お疲れ……ギャー」


アグネスは空中に浮いた亀様を見つけたようで、悲鳴を上げた。



アグネスの悲鳴が聞こえたようで、厨房にいた女性2人もこちらに来て、亀様を見て手で口を押さえて固まっていた。


『驚かせてすまない、我は神獣である。そなたの料理が美味しかったのでな。お礼が言いたかったのだ』


アグネスがぎこちない動きで、私の方へ顔を向けた。



私も「ごめん」と言ってから、アグネスたちに説明をはじめる。


ガルシアさんたちと出会った島で、亀様に遭遇してアグネスの料理を供えたこと。


亀様がアグネスの料理を気に入ってくれて、この島にしばらく滞在されることになったから、挨拶に来たと話す。



アグネスは少し落ち着いたのか、小さな声でお礼を言い、亀様に向かって頭を下げた。


私は驚かせたお詫びとしてではないが、例のものをマジックバッグから取り出す。


「アグネス、ジョージさんが言っていた海藻だよ」



私は小さめの、それでも長さ3メートル以上はある海藻を1枚、アグネスに渡すとアグネスの目がキラキラと輝き出す。


「これが新しい調味料になるのですね。どんな料理ができるのかしら?」


すっかりいつもの調子のアグネスに戻ったようだ。



『クンプか、まずは日に当てて乾燥させるのが先だな』


亀様の言葉に反応したアグネスが、空中に浮いている亀様に詰め寄る感じで近づく。


「この海藻を知っているのですか?」



『クンプは場所によっては、昆布と呼ばれておる』


クンプ?コンブ?について亀様が解説を始めると、アグネスは急いで紙を取りだし書き出した。



「なるほど、沸騰前にクンプを取り出した液体が、鶏がらスープと同じような役割をするものだということですか」


『そうだ、ここには醤油の実があるようだから、混ぜると美味しいスープになるし、鍋から取り出したクンプも調理すれば美味しく食べられる』


「亀様、その料理のお話をもっと詳しく教えてください」



アグネスと亀様の料理談義は続くようなので、またしばらくしたら戻ってくると声をかけ食堂を出た。


しかし料理に興味のないような口ぶりだった亀様なのに、詳しいのは意外だな。




夕食時、島の住民全員が揃っているところで、亀様を紹介する。


空中に浮いている亀様に驚いた様子はないので、事前に聞いていたのだろう。



『みな、しばらく世話になる』


亀様がみんなに話しかけると、一斉に拍手が起こった。


「亀様、いつまでもいてくれてかまいませんよ」


「この島の守り神ですね」などの声が聞こえた。



『歓迎されるのは、気持ちがいいものだ』


ご機嫌の亀様は、ナナとメルを見つけ、ふわふわと空中を漂い、ナナたちの所へ移動した。


『ダニエルが言っていた女神のお気に入りか、このまましっかり生を全うすれば女神の元に戻れるぞ』


ナナとメルは亀様に頭を下げていた。



私はナナとメルと心配そうに見ているリアムを亀様に紹介する。


『そなたがナナとメルを導く者か。今まで通り仲良く一緒に働き、楽しく過ごしていけばよい』


リアムはあっけにとられた顔をする。


リアムに亀様から聞いた話をまだしていなかった。


あとで説明しなくてはいけない。




亀様とは夕食が出来るまでの間に話をして、この食堂の2階の空いている部屋を亀様の部屋とすること。


亀様が外出するときや、戻ってきたときは、必ず誰かに声をかけること。


食事はみんなと一緒に食べたいと希望されたので、亀様の席を私の隣にすることなど、簡単なルールを決めた。



亀様は私と最初に出会った時よりも、島では住民たちと気軽に話をしていて、正直驚いている。


私に自分の存在を話すなと言っていたのは何だったのだろうか?


亀様に確認したら、気まずそうに神獣としての威厳を出したかったらしい。


でもこの島の住民は、気持ち良い者ばかりだから仲良くすることに決めたとのことだった。




2日後、亀様も島に慣れ大丈夫というので、予定通り迎えに来た船に乗り、子爵領の屋敷で1泊してから王都へ向かった。


王都では実家の伯爵家に泊まる。


父上から今回の話を詳しく聞きたいと手紙が来ていたからだ。


亀様のことも報告しないといけない。相談が増える一方だ。




伯爵家の屋敷の中に入ると、兄上がちょうど2階から階段を降りてくるところだった。


今回はいたのか・・・・。



「時期伯爵様は忙しいようで何よりだな。宰相様とお会いするそうではないか、いやはやすごい出世だ」


私は思いっきり嫌な顔をわざとする。


「嫌味を言うためにわざわざ降りてこられたのですか?ずいぶんお暇なようで」


「違う!私もエインズワース領の仕事の一部を受け持つようになったから忙しい」


「ならなぜここで待っているのですか?」



兄上は私に場所移動するぞという意味合いで、顔で屋敷の奥を示された。


いつもとは雰囲気が違うため、兄上についていく。


応接室に2人で入るが、ソファに腰かけず立ち話だ。



「お前のことは気に入らんが、父上が寝る時間を削って仕事をされているからな。お前も早く父上から子爵領の仕事を少しでも引き継げと言いたかったのだ」


「えっ?!」


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