第63話 先程ぶりだな
あけましておめでとうございます。
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途中、フェリクスの船とも合流して、子爵領へ戻っている船内。
私はリカード隊長、アラン副隊長と滝つぼからのことを話していた。
リカード隊長たちは亀様の件になると、驚きの表情をみせていた。
そしてリカード隊長が話し出す。
「つまり洞窟内に神獣と名乗った亀様がいたということですか?」
「海賊たち、いや人間が奥にいる亀様の所へ来れないように、亀様が結界を張っていたから行き止まりだったんだよ」
私が亀様の所へ行けたのは、侵入ルートが違ったことで、亀様が興味を持ってくれたから会えたのだ。
アラン副隊長も私の言葉を補足する。
「私が確認しましたが、行き止まりで奥へは進めませんでした。ダニエル様が滝つぼから洞窟内を通って、戻っているのですから事実です」
何か起こったようで、こちらに走って向かってくる足音がする。
リカード隊長とアラン副隊長が、ソファーから立ち上がろうとするのを私が止めた。
ドアがノックされ、私が返事をして入ってきたのはナディーヤだった。
何か腕の中に抱えているものがある。
そして私に近づき、ナディーヤが差し出してきたのは亀だった。
『先ほどぶりだな、そこの者』
今話をしていた神獣の亀様だった。
私がナディーヤから亀様を受け取ろうとすると、亀様が空中に浮かび、私と対面する。
「私が何かしましたでしょうか?」
『いや、そうではない。頼みがあって会いにきたのだ』
リカード隊長たちも亀様の言葉が聞こえるようで、目を見開いているが黙って聞いている。
普通なら声を出そうなのにさすがだ。
亀様からの頼みは、私がお礼にと渡した料理を気に入ったから、時々お酒と一緒にお供えしてほしいということだった。
私の管理する島ではないため、、毎回、訪問してのお供えは難しい。
亀様は私の話を聞いて、しばらく考えたあとで、私に話しかけてくる。
『では、そなたが管理する土地があるのか?』
私は成人すれば引き継ぐ土地と島があり、今その島を開発中だと亀様に説明した。
『先ほどの料理は、どこにいけば食べられるのか?』
「お供えした料理を作った人物は、島に滞在中です」
『では、しばらくその島に滞在するとしよう』
私はとんでもないことになったと、内心焦っていた。
『心配するでない。我は怒って人に罰を与えるようなことはせぬ。ただその土地から離れるだけだ』
また心の中を読まれた。
結局、亀様はそのまま私たちと一緒に来ることになった。
ナディーヤに亀様がどうやって現れたのかと尋ねた。
どうやら急にナディーヤの前に現れて、空中に浮かんだまま『ダニエルと呼ばれておる者の所へ案内せよ』と言われたらしい。
周囲には、アウローザや騎士たちもいて、騒ぎになったそうだ。
「亀様、私に御存在をあまり知られたくないとおっしゃられていましたが、派手な登場をされたようですし、今後のこともありますから、島で自己紹介されてはいかがでしょうか?」
私は半分呆れながら、亀様へ提案をした。
『うむ、わかった。あと先程の料理を作った料理人を紹介してくれ。今後世話になるからな』
アグネスの料理を相当気に入ったようだ。
「アグネスが作った料理はまだありますよ。召し上がりますか?」
『うむ、お供えしてくれるのであれば、いただこう』
私は室内にある執務机に移動して、料理をマジックバッグから出して、並べ終える。
ふと気配を感じたので顔を上げると、どうやら亀様も移動してきていて、空中から料理を見ていたようだ。
私はリカード隊長たちの方を向き、話かける。
「リカード隊長たち、お酒を持っている?」
「ワイン樽が船に積んであります」
水が無くなった時の飲み水用に船に積んであるらしい。
アラン副隊長がワインを取りに行ってくれ、亀様がいる執務机にワインを置いた。
『よい心掛けだ。これからも頼むぞ』
ゆっくりお召し上がりくださいと、私たちは部屋を出て甲板に出てから、ほっと一息ついた後で、みなで顔を見合わせて苦笑いした。
翌日、島に戻り、私、亀様、ナディーヤ、アウローザのメンバーは島で降りた。
リカード隊長、フェリクスの船は子爵領へ戻っていった。
あとクリントのメンバーたちは、3日後に私を迎えにくるフェリクスの船で島に戻る予定だ。
それまではフェリクスたちに、船の扱い方の指導を受ける話になっている。
迎えに来て貰うのは、私が宰相様に報告に行くためなのだが、亀様のことはどう報告するか悩む。




