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第60話 疑い

フェリクスたちラクトゥーワ王国からの亡命者たちも、住まいが決まり落ち着いたため、ガルシアさんたちがいた島まで行くことにした。


今はまだ役職を任命できないが、フェリクスにはいずれ船の部門の幹部になってもらう予定だ。


船を使って稼ぎたいから、海軍にしてしまうと商家の護衛船等ができないためだ。


でも海賊船の取り締まりも、業務の一つにしようと思っている。



今回はリカード隊長とフェリクスが、それぞれの船の船長になり、2隻で島を目指している。


船同士の連携も試しながら航海したいらしい。


また今回の同行者は、ナディーヤと冒険者パーティ2組グリントとアウローザで、グリントはフェリクス側に乗船している。



なぜかというとグリントのメンバーたちが、船の操縦を覚えたいと申し出てくれて、フェリクスたちに指導をお願いしたからだ。


グリントのリーダーのエリックさんから話があった時は驚いたが、海軍ではなく護衛船や、他国への貿易船なら自分たちも出来るのではないか試したいと言われたからだ。



「多少の危険はありますが、安定収入を確保して他国なども見られる、また冒険者として磨いた腕も活用できる」

と。


グリントのメンバーたちは、本気でこの子爵領に腰を落ち着けようと思ってくれているようで嬉しい申し出だった。



ちょうどナディーヤが近くにいたので、私から話かける。


「ナディーヤ、アグネスの護衛契約を延長してもらっているが、交代したいとかあれば遠慮なく言って欲しい」


私は冒険者ランクを上げるために、ダンジョンで稼ぎたいのではないかと思ったからだ。



「ランクを上げるのを目標にしていませんから、気にしないで下さい」


ナディーヤは稼ぐ手段としてランクを上げていたらしく、今の生活が楽しいから不満はないそうだ。


それに島の探検や、他の島へ行ったりと、色々刺激も多いのもいいらしい。


だから他の冒険者パーティも、雇用契約を更新しているのだと思うと教えてくれた。


みんなが楽しんで仕事をしてくれているのならよかった。




子爵領を出て2日目にガルシアさんたちがいた島に着く。


私はジョージさんとアグネスから依頼された海藻探しをする。


その間、リカード隊長たちとナディーヤ、アウローザは島に上陸して、アジトの再度確認と島の中を探索。


フェリクスは島周辺を巡回することになっている。



私はいつものように海に潜ると光って見える海藻に近づく。


やはりアグネスたちが求める海藻と似ていたので、光って見える部分から海藻を取っていく。


取る際に周辺のものと比較すると、取ろうとする海藻が大きいのがわかった。



やっぱり私のスキルは、今取るのがベストな海藻をチョイスしてくれているのだろう。


だけどこの海藻、とても長く3~5メートルはありそうだし、1枚1枚幅もある。


本当に調味料なのだろうか?


疑問に思いながらも光っている物を全部取り終えて、島に停泊中の船に戻り、昼食を食べてからまた海に潜る。


リカード隊長たちは、島の探索もするから、夕方まで戻ってこないだろうしね。




高級魚が大量に捕れたため船に戻ったが、まだ見張りのメンバーたちしかいなかった。


それからしばらくして、フェリクスの船がこちらに近づいてきているが、もう1隻知らない船もいる。


見張り役の隊員から、カーセル侯爵家の紋章の旗が掲げられているとの報告があった。



「怪しい動きをしておりましたので、確認のため同行させていただきました。疑いまして申し訳ありませんでした」


カーセル侯爵家の船に、私とフェリクスと数名が乗り込み話をしたのは、ベルクと名乗るカーセル侯爵家で船を任されている一人の男のようだった。



「疑いが晴れたのならよかったです」


「しかし海賊討伐は終わったと聞いておりましたが、なぜここへ?」


ベルクさんは柔らかい口調で話すが、私を見る目つきは鋭い。



「この後、宰相様へ報告に行きますので、最終確認ですよ」


「申し訳ありませんでした。ただ今は我々が巡回しておりますからご心配には及びません」


ベルクさんは私の口から宰相様の名前が出たからか、少し慌ててはいたが自分の意思をきっちりと述べてきた。



「宰相様からは、海賊討伐の余裕はないと、最初に頼んだ貴族から断られたと伺っていますが、カーセル侯爵家ではなかったようですね」


ここはカーセル領なのだから、二度と来るなというような言い方をベルクさんからされ、私は内心ムッとしてしまった。


だから「宰相様にご報告しておきますね」と、私が笑いながら言うとベルクさんは青ざめていた。



「勘違いさせたようで申し訳ありません。ただ連絡なしに来られると、こちらも対応に困りますから・・・・」


ベルクさんの言葉の最後の方は小さくなった。


「情報が相手に流れているようでしてね、我々も被害は最小限に抑えたいのです」


偶には張ったりもいいだろう。



「それは・・・我々を疑っているのですか!!」


ベルクさんは自分たちが逆に海賊と繋がっていると疑われているのかと憤慨していた。


「いいえ、誰がつながっているか不明だからです。この件に関しては国から私への正式依頼です。そこはご理解ください」


宰相から再確認しろとは言われていないが、ここは強気でいこう。


でもまたベルクさんと鉢合わせしたらやりにくいから、調味料になる海藻が必要なときは、別の方法で手に入れることを考えないといけなさそうだ。



「ご不快にさせてしまい、本当に申し訳ございませんでした」


ベルクさんは深々と頭を下げると、後ろにいたベルクさんの部下たちも一斉に頭を下げた。


話し合いは終わったので、私は自分たちの船に戻り、ベルクさんの船が去って行くのをフェリクスと見ていた。


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