第52話 醤油?ショユ?ショーユ?
ジョージさんの案には興味あるし、やってみたいと思うが、今は缶詰工場とオーブ栽培、野菜、お酒で手一杯だ。
ただ作業手順は教えて欲しいとジョージさんにお願いする。
「いいよ」
ジョージさんは機嫌を損ねることもなく了承してくれた。
ヘレン、ジョージさん、ガルシアさんと食堂に行く。
ジョージさんに、ガルシアさんがしている首輪を見てもらい、装置も渡す。
「これ解除設定がないものだ。これを付けた人は一生外せないようにするためだろうね」
ジョージさんはガルシアさんがしている首輪を見るため、ガルシアさんの周りを一周してから、留め金を触りどういう首輪か説明してくれた。
解除設定がないということは、奴隷とまでは言わないが、一生装置保有者から逃れられないようにするためということか。
海賊で、そこまでの知恵者と、この魔道具を作れる人がいるのか・・・・ひどいな。
「ジョージ、あなたでも解除は難しいということ?」
「ヘレン、やってみないとわからない。首輪をしている人がいるから、解除装置も慎重に扱わないといといけない。未使用の首輪があればよかったのに・・・・」
「あるわよ」
ヘレンがあっさりと言う。
「「「えっ?!」」」
私はじめ、ジョージさん、ガルシアさんも、あっけにとられながらヘレンを見た。
ヘレンさんが苦笑いしながら、海賊討伐の今回の戦利品の中にあると教えてくれる。
「すみません。あとでリストをお渡ししようと思っていたのです」
冒険者ギルドも慣れたらしく、準備万端で手続きが早く済んだそう。
ここに来るまで普通の首輪だと思っていたらしい。
「マジックバッグに入っている物なのですから、普通の首輪のわけがないです。不覚でした」
ヘレンはもっと早く気づけばよかったと反省していた。
未使用の首輪はジョージさんに渡して、解除方法を調べてもらうことにする。
「首輪の解除に力を貸してくれること、ありがたく思う。道具で何か欲しいものがあったら言ってくれ。優先で作ろう」
ジョージさんに向かって、ガルシアさんが自分たちに出来ることは協力したいと申し出た。
「上手くできるかはわからないが、最善は尽くす」
「すまん、よろしく頼むよ」
ジョージさんとガルシアさんが握手をした。
クン、クンクン・・・・
急にジョージさんが鼻をぴくぴくしながら、顔を左右に振り始める。
「あっちから匂いがする!」
ジョージさんが食堂の奥に向かって行ってしまった。
慌ててヘレンと私はジョージさんを追いかける。
「醤油だ!」
ジョージさんはアグネスが調理している鍋をのぞき込んでいた。
「何作っているの?」
「えっ?!」
ジョージさんが突然側に来て、アグネスに質問をし始め、アグネスは状況がわからず困惑している。
アグネスが鍋に入れているのは、黒い実から取り出した黒い液体だ。
ケイティさんが見つけてきた、黒い実の中身である。
「ジョージさん、ショユと呼んでいましたね。この黒い調味料のこと知っているのですか?」
「醤油だよ」
「ショユですよね」
「違う!しょうーゆ」
「ショーユ?」
どうも私の言い方がおかしいらしく、何度もジョージさんから指摘が入る。
ヘレンさんが私たちのこのやり取りに入ってくる。
「ジョージ、こだわるところはそこでわないわ。この調味料を知っているの?」
「あぁ」
ジョージさんのひと言で、アグネスの表情が一変する。
「この調味料の使用方法教えてください!!」
ジョージさんの顔にアグネス自身の顔を近ずけて訴えた。
「アグネス、火をつけたままよ」
ヘレンの声でアグネスが慌てて火を止める。
そして逃げようとしたジョージさんの腕を捕まえて、アグネスは聞くまで放さないという、目が笑っていない笑顔をジョージさんに向けていた。
観念したジョージさんは、自分がわかる範囲でという前置きをしながら話すことを承知したので、アグネスはジョージの腕を放した。
「僕が食べたい料理があるんだけれど、材料に海藻が必要でね・・・・」
ジョージさんの言葉を聞いたアグネスが私の顔を見る。
「ダニエル様・・・・」
「わかった、最後まで言わなくていい。私が探すよ」
私はアグネスの言葉を遮った。
私はジョージさんから聞いた海藻の特徴を聞き、この周辺では見たことがないと話す。
「僕が知っている知識だと、寒い地域、雪が降る地域にある可能性が高い」
雪が降る地域となるとナビア王国になる。
アグネスが肩を落とす。
「わしらが住んでいた島は、年数回だが時々だが、雪が降ったぞ」
急に後ろから声がしたので振り向くとガルシアさんだった。
あっ、ガルシアさんを食堂に置いて来ていた。
ガルシアさんは私たちがなかなか戻ってこないから、こちらに来た時に話の内容が聞こえたようだ。
ただし雪は積もっても1、2センチで、すぐに溶けてしまうらしい。
アグネスが掌を組んで、神に祈りをささげるような感じで私の顔を見る。
「島の様子を見にいずれ行くから、その時に探すよ」
「ありがとうございます」
ヘレンとジョージさんがショユの料理を食べたいとのことで、今日は島に泊まることになった。
その日の夜の食堂にいるみんなのテンションが少し高めだ。
料理場から漂う、いい匂いに新しい料理に対する期待値があがる。




