第49話 1か所目
1週間後、ナビア王国に近い無人島に向かって、1隻で移動中だ。
船を近場周辺なら操縦できる人はいるが、海の流れを読むとか、数日間操縦するとかの経験がなく、現在ハンス頼りだからだ。
船はたくさんあっても動かせる人がいない。
ハンスは私からの提案で漁師をやめ、騎士団で新たに作った海軍に在籍している。
船の操縦の指導や船の管理、島への輸送を専門にする業務についてもらった。
今回のように危険を伴う任務もあるため、自己防御ができるように護身術を騎士たちに習うことも業務の一環だ。
リカード隊長班は、海軍兼務の扱いだ。
今ある船を商人に貸すことも考えたが、船員がいない。
他国と取引ある商人は、海上貿易が盛んなカーセル侯爵領を利用しているから需要がないと思う。
子爵領の桟橋を頑丈な物へ変える工事は始まっているが、船の運用方法がまだ見つかっていない状況だ。
今回の同行者は、リカード隊長班とハンス、セド、エスペランサと私というメンバーだ。
ナディーヤは島の管理をお願いした。
芋虫の所にも行って欲しいからね。
まずはナビア王国に近い無人島の海賊アジトに向かっている。
どちらも子爵領からは船で3、4日ぐらいの所らしく、最初にナビア王国側へ行くのは、何かあればカーセル侯爵領に立ち寄れるかららしい。
船員というかリカード隊長たち全員、経験が浅いから気持ちはわかる。
カーセル侯爵領に近いということは、最初に王家から打診がいったのは、カーセル侯爵家かとも、思ったけれど私が気にすることではないと思い直す。
カーセル侯爵領を通るなら、色々な商船が見られることを期待したが、カーセル侯爵領からは遠い島だった。
問題の島に近づいたので、私が先に泳いで海賊船がいるか確認したがいなかった。
なので私も船を降りて、アジトに潜入するがもぬけの空だ。
机や椅子、ベッドなど今までは部屋の中に会ったらしいのだが、どの部屋も何も置いていない。
どうやらおかしいと気づいた海賊たちが、すべてを引き払った後のようだった。
アジトや桟橋を壊している間、私は島周辺を泳いでみることにした。
アジトとは反対側の所で一度海上に顔をだすと、1隻の船が移動していたが、どうしても胸騒ぎがするので後を追う。
普通は最低でも2、3隻で航海するらしい。
1隻なら海賊に襲ってくださいと言っているようなものだそうだと聞いていたからだ。
まぁ、私たちみたいな件もあるから絶対ないとはいえないが・・・・。
あまり近づくと気づかれるので、程よい距離を保ちながら時々海上に顔を出して確認していたら、遠くに見える島に向かっているような気がした。
私は先回りして島を見てまわると、最初は岩でわからなかったが、船が通れて海側からは船が隠れる場所があった。
桟橋もあり、船が避難場所として使っているようだった。
ただ場所的に、海賊のアジトのようなきがする。
もしかしたら私たちが捕まえた海賊とは違うかもしれない。
船がこちらに向かっていることに気づいて離れた。
「今回は空振りかと思ったが、ダルは海だと運を持っているな」
セドが褒めているようには聞こえない言いかたをする。
「ダニエル様、誘拐された人はいましたか?」
「リカード隊長、確認していない。知らせないとと思って急いで戻って来たんだ」
翌日、私が先に昨日見つけた場所へ行き、船がいるか確認したら、慌ただしく船に人が乗り始めている。
身なりからして、商人や他国の海軍でもなさそうだ。
ただ船に乗り込んでいる人たちの中に、誘拐されたような人は見当たらなかった。
もしかしたら船の中にそのままいるのかもしれないが、いないでいて欲しい。
「船がこちらに向かってきている、戦って潰すぞ」
セドたちが乗る船がこちらに向かっていることに気づかれたか。
そのまま岩に隠れて見ていたが、船が出航するようだ。
このまま何もしなくても、セドたちがいるところへ向かうだろうが、早く片を付けたいから、潜ったまま船を引っ張っていくことにした。
セドたちが乗っている船の船底は、私が確認しやすいように赤色に塗りなおしているから、海上に顔を出さなくても確認できるようにしたから楽になり、船をセドたちの船に引っ張っていった。
すぐに戦闘が始まったが、セドたちが乗る船を支えて動かないようにアシストする。
しばらくすると揺れが収またため、私は海上に顔を出すとダルが私を見つけ船上から叫ぶ。
「ダル、ほぼ捕まえたと思う。海賊船の内部をこれから確認する」
「わかった、もうしばらく海の中で待機しておくよ」
「悪いな、頼むよ」
海賊船の内部には、誘拐された人はいなかった。
私は海賊船を引っ張って、海賊たちがいた島にたどり着く。
リカード隊長たちは船を降り、海賊アジトがあるか確認に行ったが、私は船での待機組だ。
私は陸上だと足でまといだからしょうがない。
しばらくしてセドと数名の騎士が、10数名のドワーフの人たちを連れて戻ってきた。




