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第44話 スキル:ちょうせい

「ナナ、メル、久しぶりね。これ果物を絞ったものなの、飲んでみない?」


アグネスがトレーにのせていたのは、木のコップ・・・・ナナとメルに合わせた大きさのコップだった。



ナナとメルがアグネスから受け取ったコップで、果物ジュースを飲んでいる間に尋ねると、ブレナンが作ったものらしい。


私はブレナンの方を見る。


「アグネスにナナとメルが食べやすい食器を作れって言われたので・・・」


照れくさそうにブレナンが教えてくれた。



「ブレナン、アグネス、ありがとう。私が気づいてお願いしないといけなかったのに助かるよ」


「とんでもない。ダニエル様はお忙しかったのですから、これぐらいのこと気にしないでください」


アグネスたちに再度お礼を言った。



ちょっとしたハプニングはあったが、エスペランサとアウローザも最後の方は、メルとナナに慣れたようだった。


さすがは冒険者たちだ。





2週間後、リカード隊長たちとセドと一緒に潰した海賊のアジトに着いたが、桟橋など破壊されたままだったため、上陸はせずに沈没させた海賊船を回収して子爵領に戻った。


子爵領に着くと商業ギルド長のオリバーさんがやって来る。



「ダニエル様、お疲れのところ申し訳ありませんが、ご相談したいことがあります」


今日は1日ぶっ通しで泳いで疲れているから、明日伺うと伝えて、子爵領の屋敷に戻った。


翌日、オリバーさんと会う。



オリバーさんの話は、海賊に誘拐され本国ラクトゥーワに戻らなかった人たちのことだった。


どうやらこの子爵領でも海賊に誘拐されたという話が広まり、生活がしにくいらしい。


だから王都で就職先を斡旋するか、無人島開発に参加してもらうのはどうかとのことだった。



「しかし、彼らは女性が多かったよね。無人島暮らしは誘拐されたことを思い出さないかな?」


どうやら人の目が気になって、静かに暮らせるところがいいと前向きな人が多いそうだ。


あとスキル:テイムを持つ女性がいて、犬や猫の他、動物で試したけれどテイムできなかったため、スキルを疑われているらしい。



「もしかして芋虫で試したらと思っている?」


私の問いにオリバーさんは頷く。


「はい、あと畑や海の幸などの缶詰工場とかはどうでしょうか?」


島で出来ることを考えるから数日時間が欲しいと話して別れた。




島に戻ってみんなの意見を聞くと、移住に賛成してくれた。


「つらい目にあったのだから、穏やかに生活するには持ってこいよ」


「空き家がすぐに埋まるな。予備の家を急いで作らないといけない」


アグネスが言えば、ブレナンは現実的な話をした。



「ブレナン、ジェイごめん。好きな建物を作っていいと言いながら、実現できていなくて・・・・」


「ダニエル様、いいですよ。いずれ作りますから。ただ食堂の拡大は早急ですね」


「缶詰工場ができるまで、作業場を継ぎ手の木で作りましょう」


ブレナンもジェイも、仕事がたくさんあって楽しいから気にしないでと笑いながら答えてくれた。



ブレナンは資材が足りないから買い出ししたい、さらにアグネスから調味料や野菜、肉など食料品の買い出しと冷蔵庫や食器、料理器具など追加を頼まれる。


ちょうど調味料などを持ってきてくれていたハンスの舟で、ブレナンと私は子爵領に行った。




1週間後、島に来ることを希望した・・・・結局は子爵領に残った人全員27名。


あとは川から水を引く土木工事者、島の探検兼警備で追加で2組の冒険者パーティと、アグネスと一緒に料理担当の女性1名が、2回に分けて船で来ることになっている。


さらにアウローザにナナとメルと事を、きちんと話しておいてくださいねと念押しされ、一度島に戻ったのに、私はまた子爵領に行くはめになったりと大忙しの1週間だった。



1回目の船で来たのは、ラクトゥーワからの移住希望者20名だ。


「ようこそ、開拓村へ。私が子爵領の管理を任されている、ダニエル・エインズワースだ。まだ開発間もないから不便をかけるが、食事は美味しいから安心してほしい」


私は船を降りてきた20人に向かって話し、家に案内する。


1つの家に1階に5部屋、2階に5部屋の10人住める、宿のような部屋だ。



私は慌ててベッドや毛布など必要最低限はそろえた。


商業ギルドやヘレンに頼み用意してもらった。


そして部屋は広くはないが、鍵付きでプライベートは確保している。





「もっと条件が厳しいかもと思っていましたので、快適に過ごせそうです」


部屋を見て回っていた20人を代表して、30代ぐらいの細身の男性が私に話かけてきた。


「君がみんなのまとめ役?」


「はい、いつの間にかそうなっていました」


今までの何度もした話し合いで、生活の不安からの喧嘩の仲裁や、話が頓挫して進まい時に、調整案を出したりとみんなを纏めていたようだ。



受け答えも的確だし、話し方も穏やかだから私は尋ねる。


「名前は?」


「大変失礼しました。ハワード・マキャベリーです」



「ハワードさんの前職は何?」


「私は商店で注文の管理が仕事でした。私のスキルが【ちょうせい】でしたから」


「意見や取りまとめで、みんなの信頼があるなら調整役が出来そうだね」



私は開拓の調整役として彼に任せてもいいかもしれないと思ったのだ。


「えっ?!」


ハワードさんが固まってしまった。


私はハワードさん同席で、一人ずつと面談をした方がよさそうだとも考えていた。


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