第41話 どうする?
私とセドは伯爵家の私の部屋で話をする。
「まさか伯爵に陞爵されるとは、しかも子爵領継ぐことを確定されてしまった」
私が喜びよりも戸惑いのほうが大きくて、セドに愚痴っぽく話してしまった。
「ダル、今回のことは他国が絡んだ話になった。もともと子爵領はダルが引き継ぐ予定だったし、陞爵は確実だと俺は思ったね。まぁ、俺もおこぼれで騎士爵もらえてびっくりしているよ」
「海賊のアジト壊滅できたのは、セドの働きが大きかったと報告があったよ。全然話してくれなかったから知らなかったよ」
私はセドが騎士爵をもらえたのは当然だと話した。
「海賊を倒したと言っても、ダルのお膳立てがなかったら上手くいかなかった」
セドは肩をすくめた。
それでも私としては王城の騎士になればもらえる騎士爵を捨てて、私の開拓に付き合ってくれたセドにはどれだけ感謝していることか。
だからセドの騎士爵はすごく嬉しい。
「褒賞金はいくらか見たのか?」
話を変えたかったのかセドが尋ねてきた。
「まだだよ、王城で見るのも悪いかと思って・・・・」
私は早速、巻紙のリボンをほどいて内容を確認する。
「1億レルだってーーー」
思わず叫んでしまった。
セドも驚いでソファーから前のめりになった。
私は巻紙をセドに見せる。
「本当だ、すごいな」
セドもここまで褒賞金が出るとは思わなかったようで驚いていた。
私としてはこれで、島の開発資金やエスペランサやアウローザをしばらく雇い続けられることができるから、気持ち的に楽になったし、気前よく褒賞金をくれた王家に感謝したい。
「海賊討伐で活躍したセドはじめ、ナディーヤ、リカード隊長たち、エスペランサやアウローザにも褒賞金の一部は渡さないといけないな」
「俺はマジックバッグに爵位、給料も出ることになったからいいよ」
セドは受け取りを断ってきた。
「しかしマジックバッグはセドの買取だよ」
私の反論にセドは首を縦に振らずに提案をしてくる。
「ならさ、ハンスやブレナンさんたちに渡しなよ。ハンスも危険を伴うのに船を操縦してくれたし、ブレナンさんたちも引き続き島に来てくれるから」
ハンスには渡すつもりだったが、ブレナンさんたちも子爵領で建築資材を加工してくれている。
島に戻ったらすぐに建てられるようにと考えてくれていた。
一時金は受け取りにくいだろうから、月額の契約料を上げようか。
「ダルさ、伯爵に言われた王都の子爵家、いや伯爵家の屋敷の管理人を探すのか?」
「今は不要かなって。私が成人するまで王都にくることもそんなにないだろうし、島の開発資金にできるだけ回したい」
「そうか。あと海賊船どうする?有効活用したいよな」
そうなんだよな。今あるだけで3隻、あともう1隻、手に入る。
「船員が確保できれば交易船にしたいなぁー」
「品物もないのにか?」
セドが痛いところを突いてくる。
「そこはヘレンさんに頑張ってもらってさ」
ヘレンさんなら他国との交易、難色示されると頓挫してしまうが、商会の拡大チャンスだから乗ってくれそうな気がする。
でも船員がいないことには何も進まない。
「目玉商品が芋虫の生地だけだと少なすぎるし、ダルが領地を正式に継ぐのなら、伯爵領の開発もしないといけないぞ」
セドが島の開発ばかりはできないと指摘したが、私の考えを話す。
「今は島の開発と芋虫の生地以外にも何かないか確認したい」
セドと雑談というか、今後の相談をしていたら、父上たちが王城から帰ってきた。
セドはチャンドラー子爵から数日だけでも家に戻るようにと説得されて、チャンドラー子爵と一緒に実家に戻ることになった。
セドを見送ると、父上そのままついてくるようにと言われ書斎のソファーに腰掛ける。
父上が書斎机から書類を出し、宰相様からだと渡される。
どうやら大粒の真珠2玉とクラーケン、グロースシューレ、エーグラー、新しい生地の料金だそうだ。
ヘレンさん、エーグラーも新しい生地も全部王家に売ったようだった。
こちらも私が思ったよりも高い値で買い取ってくれていた。
私が書類を見終わった後で、父上が話し出す。
「ダニエルが無人島開発をすると家を出て行ったときと状況が変わってしまった」
「はい」
「無人島開発を始めたばかりだ、あと1年は開発だけに専念するのは許すが、そのあとは少しずつ引継ぎを始める」
「父上!」
まだ成人するまで2年以上の期間があるのに、なんでそんなに早めようとするのかわからず抗議した。
「オーガストにもエインズワースの仕事を任せ始めている。あと王都にいる間にマクファーソン伯爵家へ顔出ししておきなさい」
それから父上は私が、今後決めなければならない書類を渡すと退出していいと言い、結局詳しい話はしてくれなかった。
2日後、マクファーソン伯爵家に伺い、アイリスと久しぶりに会う。
「ダル、元気そうでよかったわ。手紙でわかっていたけれど、顔を見て安心したわ」
アイリスが笑顔で話かけてきた。
「心配かけてごめん。でもセドがいてくれたし、今は島の開発に携わる人も増えたから、楽しくしているよ」
2人で話していると、マクファーソン伯爵夫妻がやって来た。




