第4話 商業ギルド
子爵領の領都についたので、父上に指示された建物を探す。
「ここだな」
私たちは馬から降りた。
セドに私の馬も預けて私だけ建物の中に入る。
「いらっしゃいませ、お初めての方のようですが、ご用件は?」
受付の女性に声を掛けられた。
「商業ギルド長のアーカンソー氏に会いたい。エインズワース伯爵から預かった手紙がある」
私は伯爵家の紋章が見えるように受付嬢に手紙を見せる。
手紙を確認した受付嬢は、しばらくお待ちくださいと急いで奥へ行ってしまったが、すぐにもう一人の女性を連れて戻ってきて、その女性が私に声を掛けてくる。
「お待たせして申し訳ありません。ギルド長の部屋へご案内いたします」
ギルド長の部屋に案内されると、執務机に座っていた人物は猫族の獣人だった。
この国には獣人が2割、ドワーフが2割ぐらいいる。
獣人といっても耳と尻尾があるぐらいで人間と変わらない。
ドワーフは人間や獣人より少し身長が低いぐらいだ。
他国では人間至上主義の国もあるが、我が国は女神の教えを守り、みな女神に祝福され地上に生まれ者として平和に過ごしている。
実際この国の成り立ちは、獣人の村、ドワーフの村、人間の村が、他国に対抗するためにひとつになったという歴史がある。
だから貴族に獣人やドワーフもいるし、ハーフの人も多い。
ギルド長は執務机から立ち上がり、私に近づいた。ギルド長は茶トラの女性で、年齢は20代半ばぐらいに見えた。
女性でしかもギルド長としてはすごく若いと思うから、かなりのやり手なのだろう。
「急な訪問で申し訳ありません。お時間をいただきありがとうございます」
「いいえ、こちらこそ、エインズワース伯爵様から至急の手紙を届けていただきありがとうございます。ソファーにおかけください。早速ですが手紙を拝見してよろしいでしょうか?」
私はソファーに座り手紙をギルド長に手渡した。
「まさか、伯爵様からの手紙を届けていただいた方が、ご子息様だったとは大変失礼いたしました」
手紙を読み終えたギルド長が頭を下げてきた。
ギルド長のソファーの後ろにいた、私を案内してくれた女性も、ギルド長の言葉に驚いて一緒に頭をさげた。
「息子とはいっても、次男で伯爵家を継ぐわけではありませんから、かしこまらなくていいですよ」
「そういっていただけるとありがたいです」
商業ギルド長の名前はヘレン・アーカンソーさんというらしい。
「伯爵様からの手紙には、ダニエル様たちが乗ってきた馬の管理と無人島に渡る小舟が欲しいとのことですが、小舟はすぐには用意できません」
ギルド長が用意できるまで、宿かこの土地にあるエインズワース所有の屋敷で過ごすか、漁師に送迎させるか尋ねられたので、送迎をお願いした。
「ですが本当に無人島で暮らされるのですか?」
「はい、何処までできるかわかりませんが、色々とやってみたいと思います」
ギルド長がいうには、伯爵家のご子息に何かあってもいけないから、しばらくは3日に1回漁師が様子を見に行くこと、買い物があればその漁師を通じてするのはどうかと提案されたので、雇う費用を尋ねた。
漁師が一日に稼ぐ資金が5,000レルから10,000レルらしい。
なら中間ぐらいの7,000レルで無人島まで来てくれて、信用できる人を紹介してほしいと頼んだ。
明日午後また来てほしいと言われたので、おすすめの宿を聞き、商業ギルドに2頭の馬を預けて徒歩で宿に向かった。
翌日の午前中、宿で聞いた市場を見に行く。
この市場はこの街では最大の市場だそうで、左右にたくさんの露店が並んでいた。
「ダル、市場で何をするんだ?」
「料理を買うのと、高い魚の値段を覚えれば、魚を獲るときに効率がいいかなって思ったんだ」
「たしかにそうだな。じゃぁ、おれはここにしかない果物や野菜を確認しておくか」
「お願い、島に実っていたら食べてもいいし、売ることもできるからいいね」
私たちは分かれて露店を見てまわった。
みんながよく食べる魚は1匹300~500レル。
鱗を取ってあったり、内臓を処理した魚はもう少し高めになっていた。
手間賃代込みいということだろう。
大きい魚は切り身で売っていたので、一匹の値段は不明だ。
セドと合流して露店で昼食を取り、無人島で食べる料理を買ってから、商業ギルドへ行く。
商業ギルドで紹介された漁師はハンスさんといって、私たちより少し年上の青年だった。
年齢を聞くと16歳だった。
彼は漁師をしているが、あまり魚を捕るのが上手くないらしく、定期的に入る賃金はありがたいという。
また依頼すれば買い物もしてくれるそうだ。
私たちが不安に思っているのがわかったのか、ギルド長が口を開く。
「ハンスのスキルは、海読みなのです。海のどこを通れば安全に、そして早く目的地に着けるというスキルです」
「ハンスさん、すごいですね。心強いです!」
私が褒めるとハンスさんは照れている。
「嬉しいです。最初スキル名を聞いた時は不明でがっかりしたのです。だけど海に出るようになって使い方がわかっったのですが、漁師としての腕はあまりよくなくて悩んでいたんです」
だからお役に立ててうれしいと私たちに話してくれた。