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第38話 投げる

子爵領を出向して2日後、海賊が話していた無人島に近づいた。


遠くから見たときは横に長い島だと思ったら3つの島から成り立っていたようだ。


すると真ん中の島から船が1隻こちらに向かってやって来る。


リカード隊長が私に望遠鏡で確認すると商船や他国とわかる旗などは掲げられていないため、海賊船だろうと言う。



「私が船底に穴をあけても大丈夫かな?」


「おそらく誘拐された人たちなどは、いないかと思います」


我々の船を目指してと言うことは、我々を襲う気だろう。



「ダニエル様、あと申し訳ありませんが、船体が揺れないように補助いただきたいです」


「わかっている、あちらの船底に穴をあけたら、すぐにこの船が揺れないように支えるよ」


「海に飛び込むのが海賊側に見られないように、船尾からお願いします」



リカード隊長のアドバイスに従って船尾から海に飛び込み、海賊船に向かって海の中を泳ぎ、船底を思いっきり足蹴りして穴をあける。


海賊船がひどく揺れた。


しかしこれだと船が沈むと思った海賊が、必死になって我々の船を奪おうとする可能性がある。


もっとセドやリカード隊長たちが楽になる方法ないかな?



私のスキルでは海の中でしか力を発揮できないし・・・海賊の人数を減らせばいいか。


人数を減らすには、船を傾けたら甲板にいる海賊が海に放り投げられるよな。


島からもそれなりに距離があるから泳ぐにしても体力を消耗するだろう。


船にいる海賊たちを片付けてから拾っていけばいい。



私は自分のやることを決めると、海賊船の船底を持って思いっきり左にマストとかが海面につくぐらい傾け、すぐに元に戻した。


数人海に投げ出されたようだ。


こちらに気づかれる前に海賊船から離れた。



我々の船が海賊船に接近したので、我々の船の船底を持って揺れないようにする。


戦闘が始まったのか、船の片側の揺れが激しい。


私は揺れを安定させるためにしっかりと支える。


しばらくしたら揺れを感じなくなったため、浮上して海面に顔を出すとセドから声がかかる。



「ダル、海賊船がもう一隻、島からこちらに向かっている。こちらは終わったが海賊たちを縛りあげたりしないといけない。時間を稼いでくれ」


「わかった、やってみるよ」




私は新たな海賊船に向かって海の中を泳ぐ。


船底に穴をあけるにしても沈没まで時間がかかるしな。


こうなったら船を投げてみるか。


誘拐してきた人たちが船にいるなら応援に来ずに逃げるよね。


沈没しても後から引き揚げればいいし、粉々にまではならないだろう。



私は海賊船の船底を持ちあげ、海面近くまで浮上してから船を思いっきり投げた。


船の近くの海面から顔を出すと、みんながある方向を唖然とした顔で見ていた。


私も振り向いたら遠くの方で船が横倒しになって、少しづつ沈んでいるのがわかった。


結構遠くまで飛んだな。



船から縄の梯子が降りてきたので、登って甲板に足をつく。


「ダル、時間を稼いでくれとは言ったが、まさか船を投げるなんて思わないよ」


「沈没してもまた引き上げればいいし、海賊なら逃げて島に向かうでしょ。そこを拾っていくか、島で待ち伏せするかだね」


セドに私が考えた対策を話した。



リカード隊長が私の前にやって来る。


「ダニエル様、お疲れ様でした。これから海賊が出てきた島に向かいます」


海賊の調書ではアジトは1隻、多くて2隻までしか停泊できないと言っていたから、このまま行きたいらしい。


「私が様子を見てこようか?」


「島に残っているものは少ないでしょう」


リカード隊長たちが島に降りたあと、沈没船に乗った海賊が戻って来ていないか甲板から確認していて欲しいとお願いされた。


捕まえた海賊もいるので船内にも見張り兼護衛で騎士半分は置いていくと言う。


セド、ナディーヤ、エスペランサとアウローザは島に降りるらしい。



3時間ほどしてセドたちが20名近くの人たちを連れて帰ってきた。


誘拐された人たちのようだった。


「捕まえた海賊たちもいる。全員はこの船に乗れないのではないか?」


船の上で私は呟いた後、セドやリカード隊長と話をするために船を降りる。


リカード隊長とセドが隊列から抜けて、私の所に急いでやってくる。



「ダニエル様、沈没させた船を1隻引き上げてください」


「わかった。捕まえた海賊たちを乗せるのだね」


「はい、大変申し訳ないのですが・・・・」


「リカード隊長、全部言わなくてもわかっている。沈没させた海賊船を子爵領に引っ張って行くよ」



「ダル、2日間ぶっ通しで泳ぐことになる。さすがに無茶だ」


「結構、早く泳げるようになったから、2日もかからずに子爵領まで行けると思う」


セドが心配をしてくれるが、私は心配ないと先に子爵領に戻っているからと話すと、2人に唖然とされた。



この島から近いところで沈没させた海賊船を引っ張りあげ、桟橋に接続して、騎士たちがロープで括りつける。


ロープで縛り上げている海賊たちを海賊船に移動させている際に、「死にたくない」「助けてくれー」などと叫んで逃れようとした数名は、騎士たちが海賊船に乗せた後、お腹を殴って意識を失わせていた。


大人しくしている海賊には、海賊のアジトの食糧庫から持ってきたワインを飲ませていたが、眠り薬を混ぜたものらしい。



私はその間食事をして出発に備える。島に1泊せずにそのまま出航するらしい。


アジトにあるものはすべてマジックバッグにしまってから、スキル「解体」を持つ騎士がアジトを潰したそうだ。


出航準備が整ったところで、私は海に入り海賊船を引っ張って子爵領に向かった。


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