第30話 船で来た理由
私は桟敷に近づき、海面から顔を出すと、騎士たちが唖然としていた。
「すみません、昨日話していた海賊だと思われる2人が、私たちのところに現れまして捕まえたのですが、引き渡すまで見張っていていただけませんか?」
「・・・わかった。見張っておこう」
どうやら騎士の一人が、板がこちらに向かって動いているのに気づき、全員不思議に思って注意深く見ていて、板の上に人が縛られた状態でいるのがわかり警戒していたらしい。
海賊2人を騎士たちに引き渡して、私は商業ギルドに行く。
受付でオリバーギルド長を呼んでもらうと、慌ててギルド長がやってきた。
「ダニエル様、どうされました。お部屋に案内いたします」
急ぎだからと断りギルド長に、海賊2人を捕まえて、今桟敷にいる王城の騎士に見張ってもらっていることを話した。
ギルド長が私の話を聞くなり、慌てて部下に指示を出し始めた。
ついでに父上にも連絡してくれるらしい。
商業ギルド長と私は冒険者ギルドに立ち寄り、冒険者ギルドで紹介された冒険者と一緒に桟敷に向かう。
桟敷に戻ると、セドとナディーヤがいて、しばらくすると父上の馬車が到着した。
「ダニエル、ラクトゥーワ王国使節団を襲った海賊を捕まえたとは本当か?」
父上はかなり疲れた様子だった。
「父上、まだ尋問していないので確認できていませんが、砂浜には泳いでなので、間違いはないかと」
そこからは、王城の騎士と父上が話し合いを始めたので、私はセドたちのところへ移動する。
ナディーヤは宿に行くつもりだったらしいが、セドがおそらく海賊を捕まえたときの話を聴取される可能性があると話したため、一緒に来たそうだ。
父上がこちらにやって来くる。
「ダニエル、よくやった。詳細は馬車の中で聞く。あと高級魚があるなら買い取る」
「あります」
ラクトゥーワ王国使節団への料理で使うようだ。父上は頷くとナディーヤを見る。
「父上、アウグスト子爵のご息女でナディーヤ嬢です。島で雇った女性の護衛をしてもらっています」
「伯爵様、はじめてお目にかかります。アウグスト子爵が長女、ナディーヤ・アウグストと申します」
「アウグスト子爵のご息女か。息子が世話になっているようだ。今回の件の詳細を聞きたいし、子爵館に滞在してほしい」
「承知いたしました。お世話になります」
父上、私、セド、ナディーヤが馬車に乗り子爵館に戻る道中、今回の件を父上に報告する。
父上からは王城の騎士が、海賊たちに軽く尋問をしてくれたらしく、ラクトゥーワ王国使節団を襲った海賊で間違いないそうだ。
夜、父上から、明日ラクトゥーワ王国使節団と海賊も連れて王都に行き、海賊は王家に引き渡すらしい。
私は島に海賊の残党がいないか冒険者ギルドと協力して探すこと、沈没したであろう海賊船の引き上げ、島周辺に海賊アジトがないか、無理をしない範囲で確認をするようにとのことだった。
ラクトゥーワ王国の船や難破船の管理で、エインズワースの騎士たちを呼び寄せているそうだ。
だから協力して対応してよいとのことだった。
冒険者を雇うとなるとお金がいるし、父上に交渉しないとと思っていたからありがたい。
それと本来、ラクトゥーワの船の停泊先であるカーセル侯爵家へ手紙を出したこと、ラクトゥーワ王国護衛船が侯爵家から連絡を受けて、この子爵領に来る可能性があることを説明してくれた。
「父上、なぜラクトゥーワ王国は馬車ではなく、船なのですか?」
隣接国なのに不思議だったのだ。
ラクトゥーワ王国の王都から我が国の王都まで、馬車だと片道15日程度かかる。
一方船だと、ラクトゥーワ王国の王都から船に乗るのに1日、船でカーセル領まで3日、カーセル領から王都まで馬車で2日だから、片道6日で着くそうだ。
「しかしなぜ1隻の船で?」
最新の船だと停泊予定だったカーセル侯爵領まで2日で着くが、最新の船は1隻しかなく、護衛船を振り切ってカーセル侯爵家へ行く途中で海賊船とぶつかったらしい。
「父上、速度が速い船なら、海賊船から逃げきれたのではないですか?」
島の影に隠れていて接近するまでわからなかったらしく、対応が遅れたという話だった。
また海賊たちに尋問中だから、アジトがわかり次第教えてくれるらしい。
父上は明日、ラクトゥーワ使節団を無事に王城へ送り届けたら、また子爵領に戻って来る予定だそうだ。
翌朝の朝食時に、父上から海賊のアジトは無人島にいくつかアジトを作って、転々と移動しながら活動しているようだと。
そして開拓中の島にもアジトはあり、私たちが住む反対側、沖の方にあるということだった。
「島にあるのなら、潰さないといけませんね」
私の言葉に、父上からは無茶はするな、応援が必要なら騎士たちが来るまでしばらく待てと言って、慌ただしく王都へ行ってしまった。
まぁ、父上の優先順位はラクトゥーワ王国使節団を無事に王都へ連れて行くことだし、騎士たちを呼んでくれただけありがたいと思おう。




