第29話 救助した船
「君は・・・ダニエル君だったか。小舟を出して早急に先方と話をつけよう」
近くにいた漁師に騎士が話をつけ、王城騎士2名が助けた船に小舟で向かっていった。
私は小舟の横で海面から顔を出して、船の上にいる人と騎士の会話を聞いていた。
船の上にいる人は、パニックが若干落ち着き、助かったことがわかったのか、子爵領に船をつなげることを承知してくれたようだ。
私は早速行動を始める。
まず難破船と同じように桟橋近くまで船を移動させ、船から垂らされたロープを桟橋にいる騎士に渡して、桟橋に船を横づけた。
私が海からあがって桟橋に近づくと、船から人がすでに降りていて、手当を受けていた。
どうやら漁師の人が、商業ギルドに駆け込み薬などを持ってきたようだった。
「オリバーギルド長」
「ダニエル様、お疲れさまでした。またお手柄ですね」
桟橋にはオリバー商業ギルド長がいて、私を出迎えてくれた。
私はギルド長に話しかける。
「どこの船かわかりましたか?」
「はい、今回の国際会議に出席される、ラクトゥーワ王国ご一行様でした」
私は商家の船だと思っていたので、ラクトゥーワと聞いて顔をしかめる。
「私が勝手に、この子爵領に連れてきてしまったのだけれど、まずかったかな」
「大丈夫です。みなさん、助かったことにほっとされていますから」
私はギルド長との話は終わらせて離れ、最初に海面から話しかけた騎士を見つけたので近づく。
「先程はご協力いただきありがとうございました」
「ダニエル君、こちらこそありがとう。まさかラクトゥーワ王国の方々だとは思いもしなかったよ」
「私もです」
騎士から、私がなぜラクトゥーワの船が、海賊船に襲われていたのがわかったのかと、助けた方法を質問されたので、ハンスが海賊船に襲われている船がいると教えてくれたところからすべてを話した。
王城と子爵館にいる父上に連絡がいくように手配済だそうだ。
あと騎士からは、早急に私が半分沈めた海賊船がどうなったか、船に乗っていた海賊たちのことも調べることになるから、父上と話し合いをしっかりした方がよいと言われた。
たしかに海賊なら泳げる可能性が高い。そうなると島に辿りつく可能性があるか。
「一度島に戻って、経緯を話してきます」
「それなら安全が確認できるまで、島に滞在中のみんなは子爵領に戻った方がいい」
私は島にいる人たちのことが気になるから、経緯を話してから子爵領にまた来ると騎士に話したら、みんなが危ないかもしれないと助言されたため、急いで島に戻った。
島に戻ると、セドたちが駆け寄ってきた。
私は海から上がり、船を助けて子爵領に連れて行ったこと、海賊船を沈めたため、この島に海賊が辿りつく可能性があるため、子爵領へ避難するように言われたことを話した。
今日はハンスと一緒にアグネスとジェイとリアムが、明日は残り全員が避難することに話し合いで決めた。
リアムに自分の荷物をまとめることと、ナナとメルに一時的に前の住処に避難するように説明すること、アグネスとジェイにも、自分の荷物を部屋から持ってくるように指示をしていく。
ブレナン、セド、ナディーヤ、私は手分けして、マジックバッグに魔道具や道具をしまっていく。
3人を送り出したあとも、私たちは片付けをしていった。
その日の夜は、食堂で久しぶりに屋台料理を食べていたら、ナナが私たちのテーブルに来て、クルクルと回る。
セドとナディーヤが窓に近づき、海からあがって来る人間が2人いるといい、2人は剣を持って出て行った。
私、ブレナンはメルとナナと窓に寄り、2人の戦闘の様子を見ていたが、セドたちが圧倒的に強く、すぐに決着がついた。
私は外に出て、セドたちにロープを渡し、倒れている海賊と思われる2人を縛る手伝いをしようとしたら、一人は意識があったようで、ナディーヤの足を掴んだ。
しかし一緒に来ていたメルが、足で海賊の手を踏みつけたため、悲鳴を上げて転げ回っている。
またメルが転げ回っている海賊の腹を、足で蹴とばすと意識を失って大人しくなった。
「メル、ありがとう。助かったわ」
ナディーヤがメルの背中をなでていた。
海賊2人を縛り上げて砂浜に放置する。
家の中に戻り、どうやって彼らを子爵領に連れて行くかという話になった。
「私が泳いで子爵領に行くから、彼らを引っ張っていくよ」
板の上に海賊たちを縛った状態のまま乗せて、私が子爵領まで連れて行くことに決まった。
早朝、ブレナンが海賊たちを縛ったロープを通す穴をあけてくれる。
ハンスがやって来て、砂浜にロープで縛られ転がっている2人を見て顔が強張った。
「ダル、昨日、海賊が来たのか?」
「そう、アグネスたちを避難させて正解だったよ」
海賊たちは目覚めると縛ったロープから抜け出そうと、砂浜で体を動かしていたので、ナディーヤが持っていた眠り薬で今は眠らせている。
ハンスの舟にセド、ブレナン、ナディーヤが乗り、私は海賊たちを板に乗せ、縛っているロープを引っ張りながら泳いで子爵領に戻った。




