第21話 新たな助っ人
子爵領に着いたが、ヘレンさんの商会に行く前に白子熊に行って料理を頼むことにした。
それからヘレンさんのエクラ商会に行くと、エクラ商会は子爵領内の一番賑わう大通りに面した3階建ての建物で、周辺の建物と比べても大きかった。
中に入ると端のほうに個別ブースのようなものがあり、商談をしているようだった。
だから商人相手の店かと思ったけれど、個人で買い物もできるみたいで、調味料や小麦、豆など穀物関係が多い。
「ダニエル様、セドリック様、いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
「ヘレンさん、とても賑わっているね。エクラ商会は調味料とか穀物が専門なの?」
「1階はそうですが、2階は個別依頼品を取り扱いますから、装飾品、骨董品なども扱っています」
案内されたのは3階の応接室だった。
待っていたのは顔なじみのダスティンだった。
「ダスティンじゃないか!」
「ダニエル様、お久しぶりです」
ダスティンは王都の紳士服専門店の次男坊で、20代半ばの男性だ。
エインズワース家は、代々ダスティンの家族が経営しているお店に世話になっていて、ダスティンは店に行くと、私についてくれる人だから、私の好みも知っているし話は早く済みそうだ。
ダスティンを寄越してくれたことは父上に感謝しよう。
ダスティンから時間がないので、デザイン、生地、採寸を済ませたいとお願いされ、、セドとデザイン画や生地見本を見て決め、午前中にはだいたい決まった。
ダスティンは私の好みを知っているし、セドも私と同じでシンプルなものを好むから決まるのが早かった。
昼食時間なので昼食を挟んで採寸をとるとダスティンに言われたが、採寸後に昼食でよいと話して先に採寸を済ませる。
昼食はヘレンさんが用意してくれていたので、商店の別の部屋でヘレンさん、ダスティンを交えて食事をする。
「ダスティン、王都からここまで遠いのに悪かったな」
私がここまで来てくれたダスティンにお礼を言うと、、ダスティンは服が出来上がるまで子爵領にいるとのことだった。
予定では2週間後に試着になるそうだ。まぁ、2人分一式だからね、時間もかかるだろう。
私は2週間もいいのかと聞くと、、滞在費は伯爵家持ちだから、心配しないでくださいとダスティンは言った。
翌日、島に戻るとブレナンたちと今後の打ち合わせをするため、ハンスには少し待ってもらう。
私とセドがしばらく島に戻れなくなると食事関係が厳しくなる。
みんなで一旦子爵領に戻る案もあったが、メルとナナがいるから難しい。
結果、時間停止マジックバッグを借りるか、一時的に料理人に来てもらうかの2択になった。
「あと2日もあれば建物の1階は住める状態になる、アグネスに一時的に来てもらうのはどうだろうか?」
建物は全員が住めるように2階建てを建てることになり、外観はすでに出来上がっている状態だった。
「ブレナン、女性一人はさすがによくないし、アグネスさんも無人島に来るのは嫌だと思うよ」
「ダニエル様が高級魚の調理をお願いに行っているから、アグネスはここに興味あるみたいなんだ」
白子熊の店はブレナンの父親が復帰したらしく、アグネスさんがここに来ることは可能のようだった。
もしアグネスさんが来てもいいと言ってくれたら、女性の護衛を1人雇うことを条件にお願いすることにする。
もし断られたら、時間停止マジックバッグをレンタルすることで纏まり、ブレナンが不足品の買い出し兼アグネスさんに交渉するため、ハンスと子爵領に戻った。
3日後ブレナンが戻って来て、アグネスさんと女性の護衛が無人島に来てくれることになったと教えてくれた。
翌日、ハンスの舟にアグネスさんとウサギの獣人の女性がやってくる。
「ナディーヤ先輩がなんで護衛?」セドが砂浜に降りた女性を見てつぶやいた。
護衛の女性はセドの知り合いのようだが、今はアグネスさんにお礼を言わなければいけないから、私、セド、ブレナンはアグネスさんに近づく。
「ダニエル様、大きな家を建てましたね。思っていたより快適に過ごせそうです」
「アグネスさん、無理言ってすみません」
「新鮮なお魚料理を作るのが今から楽しみです。もちろんお肉もたくさん持ってきていますから任せてください」
アグネスさんは、キッチン道具と冷蔵庫、冷凍庫、コンロの魔道具も持参してくれているらしい。
どうやら白子熊で補助用に置いてある魔道具を、割安で貸し出してくれたようだった。
「ブレナン、アグネスさん、ありがとう」私がお礼をいうと2人が慌てる。
「両親は俺が新築を建てたがっていたことは知っているし、あと最近新鮮な魚を店に卸してくれているんだろ。だから気にしなくていい」
「貸すといっても1か月程度で私が使うだけですし、貸出料金を店に払ってくれたから大丈夫ですよ」
貸出料金といっても商業ギルドで魔道具を貸し出す金額の半値で貸してくれる。
だから白子熊に行った際にはブレナンの両親に魚を持っていってお礼を言うつもりだ。
「それから私の護衛のナディーヤです」アグネスさんが紹介後、セドが口を開く。
「ナディーヤ先輩、お久しぶりです。正直冒険者なんて驚いています」
「こんなところでセドに会うとはね。あなたこそ、なんで無人島に?」
「もしかしてナディーヤって、貴族様?」
セドとナディーヤさんの会話でアグネスさんが慌てていた。




