第2話 話し合い
それから私は今後の計画を立てるために部屋に籠った。
周囲の人間は、私がスキルのショックで部屋に籠ったと思っているらしく、何もいってこなかった。
2週間ほど籠っていると、婚約者のアイリス・マクファーソンが屋敷にやってきた。
アイリスは私の1つ年下で11歳。
オレンジが混じった金髪の両サイドを、私が11歳の誕生日にプレゼントした髪飾りで留めている。
伯爵家の次女で父親同士が決めた私の婚約者だ。
「お元気みたいで安心しましたわ。オーガスト様がダニエル様はショックで寝込んでいると、あちこちで話されておりますので心配しておりました」
本当にあの人は、無駄なことに労力を使うな。
伯爵家を貶めることは父上が一番嫌うのに・・・ほんとうに馬鹿なヤツだ。
「アイリス、いつもの話し方でいいよ。寒気がする」
「まぁ、ひどい!本当に心配したのよ。オーガスト様はダルが怖くて仕方ないのよ。すべてにおいて負けているから」
「買いかぶりすぎだよ。私はこの家を出る人間だ。努力していないと何も得ることができないからね」
「オーガスト様は、それをわかっていないのよ!」
アイリスは兄上のことをすごく怒っているようだ。
「アイリスのご両親も、私との婚約を取りやめするようにいっているのかい?」
「いいえ。ダルはいずれ子爵家を継ぐことを知っているから何もいっていないわ」
「そのことだけど、もしかしたら変更になるかもしれない。だからきちんと決まったらマクファーソン家に伺うよ」
「ダル、どういうこと?」
「この2週間、今後の計画を立てていたんだ。まだ父上にも話していない。もしかしたら婚約解消になるかもしれない」
「ダル!!」
「悪いとは思う。でもアイリスはまだ11歳だ、いい良縁はあるよ」
「父上、お時間をいただきありがとうございます」
今私は父上の執務室に来ていて、今後の話について説明するためだ。
「どうするのか決まったのか」
「はい」
「では聞こう」
私はこれからどうしたいか話終えた。
目をつぶって聞いていた父上は、目を開けて私の顔を見る。
「いいだろう。ただし条件がある。期間は3年間だ。その間に結果をだせ。出せなかったら、予定どおりお前が継ぐ予定だった子爵家を継ぎなさい」
「父上!!」
「お前の努力はかっている。オーガストにすべて継がせても、子爵家まで管理はできまい。いやなら私の納得のいく結果を出せ」
「今日はお時間をいただきありがとうございます」
私はマクファーソン伯爵家の屋敷を訪問している。私の目の前には、マクファーソン夫妻とアイリスだ。
アイリスは強張った顔をしている。
「噂では、ずいぶん落ち込んでいるという話だったが、所詮は噂だな」
「伯爵・・・・」
「私たちに話とはなにかな?」
私は話をする前に父上からの手紙を伯爵に渡すと、伯爵はその場で封を切り読み始める。
「お父上からの手紙だと、君はスキルを活かしたことをしたいと言っていると書いてあるが本当か?」
「はい、父上から3年という期限付きではありますが、了承を貰っています。もし成功すれば子爵領を継ぐつもりはありません」
「つまりアイリスとの婚約を解消したいといっているのか?」
「そうではありませんが、私たちの婚約は私が子爵家を継ぐことが条件でした。失敗すれば予定通り子爵家を継ぐことになりますが、できれば継ぎたくないのです」
「どうしてだい?」
「残念ですが、私と兄上は反りがあいません。私が子爵家を継ぐと兄上が嫌がらせをしてくる可能性があるからです」
「爵位がなくとも伯爵家と縁を切りたいというのか」
「父が生きている間はまだましでしょうが・・・・」
「オーガスト殿はそこまで愚かなのか?」
「わかりません。私が家をでると落ち着くかもしれません。しかしアイリスを無駄に待たせて、不幸せにはしたくないので、正直に話をしにきました」
「・・・・われわれもすぐには結論を出せない。いまは婚約を継続ということでよいと思う」
「わかりました。私は準備が整い次第、伯爵家を出ます」
「ダル、手紙を書いてもいいでしょう?」
今まで黙って聞いていたアイリスが話しかけてきた。
「アイリス、私が行こうとしているところは無人島だ。ただ買い出しで島から近い陸地に行くことはあると思うから、私から手紙を送ることはできると思う。でも頻繁にはできない」
「・・・・・」
アイリスは俯いたままだ。
「ダニエル君、伯爵家が管理しているあの大きな無人島に行くのかい?」
「はい、あそこが私のスキルがいかせると思うので」
「しかしまったくの手つかずで、どういった生き物がいるか、植物があるのか不明なはずだ。広い土地だが陸地からはそれなりに距離があり不便な場所だ。それに船はどうするのだ」
「まぁ、行ってから考えます。期限は3年ですから」