第15話 メルとナナ
「メル、すげぇーな」
「すごく器用だね」
セドと私はメルが何をするのかと、メルの行動を見ていて自然と言葉が出た。
「メル上手いぞ、助かるよ」
一緒に見ていたブレナンもメルを褒めた。
メルの話だと元の飼い主さんが木を倒すのが仕事だったらしく、切り株を掘り起こすことと、木を担ぐのがメルの仕事だったそうだ。
ナナは森の中の仕事なので、周囲の見張りをしていて、森の動物が近づいてくるときは、元の飼い主さんに伝えて、飼い主さんも木に登って襲われないようにするか、森から離れるようにしていたらしい。
「連携がすごいね」
「元飼い主との絆がすごいな」
「これなら家が早く建てられるぞ」
リアムから話を聞いた私とセドとブレナンの言葉に、ナナは尻尾を振り、メルは手を頭にやっているので嬉しいと表現しているように見えた。
「ダルは魚を獲りに行けよ。メルが食べるからたくさんいるだろう」
セドの言葉にブレナンも頷いたので私は海に潜ることにした。
50センチ前後の魚なら4、5匹は入れられる籠を腰に括り付けて海に潜っていた。
これは前回子爵領に行ったときに購入した。
海の中なら重たくないし、片手で魚を持つよりも効率がいい。
午前中はメル用の魚を捕ることを中心にして、午後からは大物を狙いに沖へ出るつもりでいる。
午後、沖にでて潜っていると急に何か後ろにいるような気がして振り向いたら、5メートルほどある頭の先が尖った魚が私めがけて来ているのが見える。
大物はいいけれど攻撃性の高そうな魚に感じたので、私も臨戦態勢をとる。
私に近づくと魚は大きな口を開けてきたので、モリを投げたらモリが魚の口を閉じられないように縦に刺さり、しかも刃があごを貫通している。
魚は口を閉じたくても閉じられないし、痛いのと両方だろうが顔を上下左右に振っている。
しばらく眺めていると横顔辺りが光り始めたので、光っている部分を手で殴ると魚が海底に沈んでいったから、慌てて尾びれを掴んだ。
そこから手を腹からあごと持ち替えて、口の中にあるモリを取り出した。
本当に不思議なんだよな、このスキル。
殴るといっても海の中だと私の手は全然痛くない、しかも魚にはちょっと当たったなぐらいの感覚なのに魚は死んでいる。
海の中だと本当に万能スキルだ、さらに沖にでたらどんな魚と遭遇するか楽しみだな。
戻っている途中でまた同じ魚と遭遇してこちらも同じように倒すが、片手がふさがっているので、モリを取ることはできずに魚の口に刺さったまま、尾びれを掴み砂浜近くまで戻る。
私が海面に顔を出したまま、戻ってこないことに気づいたナナがリアムに伝え、リアムがセドに私を指しながら話していた。
セドが慌ててテントに行き、マジックバッグを持って泳いで私のところまできた。
「また、でっかい魚を捕まえたな」
「なんの魚かわからないけど、襲ってきたから退治した」
魚をマジックバッグに入れて戻った。
「だけどさ、ダルはいいよ。スキルのお陰で服が濡れないから。これだけはわかっていてもずるいと言いたい」
砂浜に着いたら全身びしょ濡れのセドが愚痴る。
「ごめん、だけどマジックバッグを海の中に持っていくのはさすがに怖くて……」
「わかっている。食料や衣服など大事なものが入っているからな。だけど言いたくなる気持ちもわかってくれ」
切り株に座っているナナのところへ行って声をかける。
「ナナありがとう、助かったよ」
私の言葉を理解しているのか、ナナは切り株でクルクルと回った。
みんなで夕食を食べたあと、ナナとメルに住んでいる場所はここから近いのか尋ねると、近いらしい。
これから毎日通ってくるのか、ここで暮らすか聞くと、ここで暮らしたいという。
ただ木の実も食べたいらしく、翌日メルたちの案内で、メルとナナがいた場所にみんなで行くことにした。
最初は枝を切ったりしたが、途中からは何もしなくても歩けた。
一時間もかからずに着いた場所周辺には、数種類の木の実があり、メルたちはどれも食べていたらしい。
またメルたちはここに来てから大きな動物には遭遇していないとのことだった。
みんなで手分けして当分来なくてもいいぐらいの量を集め、私のマジックバッグにしまって砂浜に戻る。
夕食になり、ナナに果物、メルにはハーブ塩を振りかけた焼き魚を木の食器に入れて渡すと喜んで食べ始める。
ナナとメルは木の根元で寝て、私たちはそれぞれのテントで寝た。
翌日の夕食時にセドが思い出したように話し出す。
「リアムの獣語ってさ、賢い動物とだけ会話できるスキルなんじゃないか?」
「メルやナナみたいな?」
「おそらくメルとナナの元飼い主も、リアムと同じスキルだった可能性があるんじゃないだろうか」
セドの考えを聞いた私は当たっているような気がしたし、ブレナンも同意していた。
元飼い主さんもリアムみたいな目に遭って、森近くで生活していた時にメルとナナに出会ったのか、メルたちに出会ったから森近くで生活していたとかの可能性が高い。




