第14話 新たな仲間
ブレナンたちからは、だいぶ離れてはいるがクマらしきものが立っているのが見えた。
食べ物の匂いでやって来たのだろうか?
今まで現れなかったから油断した。
セドは用心のためいつもそばに置いてある剣を手にして、ブレナンたちの前に出ていた。
私も急いでマジックバッグから剣を取り出し、セドの隣に立つ。
「待って、このクマは俺たちを襲いに来たんじゃなくて、木を運ぶのを手伝ってくれるって言っている」
リアムが私たちに向かって突然叫んだ。
「はいっ?!」「なんだって!」「お前話せるのか?」
私とブレナンは驚いていただけなのに、セドは冷静に剣をかまえた状態のまま、後ろにいるリアムに尋ねていた。
「クマが話しかけてくるんだ。その代わりハーブ塩で焼いたお魚が欲しいって、クマの肩にいるリスっぽいのは果物が食べたいと言っている」
セドがいうように、よく見ると2足歩行のクマの肩にちょこんと座っているのが見える。
ブレナン、私、セドは驚きつつもリアムに詳しく聞いてもうらため、クマとリスと会話を続けるように促す。
リアムの話だとクマとリスは、もともと人と一緒に住んでいたらしく、その人が亡くなって気づいたときにはこの島にいたそうだ。
亡くなった飼い主がよく作ってくれていたのが、ハーブ塩の焼き魚らしい。
ただ海魚ではなく川魚らしいが・・・・。
匂いにつられてきたけれど、今までは出てくるきっかけがなかったそうだ。
よく見るとどちらも首に首輪らしきものをしていたから、話は本当のことだろう。
リアムは私たちの後ろから出てきて、リスっぽいのがナナ、クマがメルだと教えてくれた。
「もしかして俺を見ていたのはリス、いやナナか?」
セドの疑問にリアムがナナからの返事を通訳してくれる。
「そうだって。2匹とも亡くなった飼い主みたいに、一緒に過ごせるか見ていたと言っているよ」
私はお腹がいっぱいになれば襲われることはないだろうと思い、ブレナンとリアムに断りを入れて2人に焼いて渡していたハーブ塩がかかった魚と、マジックバッグにあった果物を渡すと、ナナとメルは美味しそうに食べだした。
私はリアムの方を振り向き話しかける。
「リアム、動物と話せないと前の雇い主と大喧嘩していただろう。今回はなぜ話せた?」
リアムはバツが悪そうに顔をしかめながら話してくれる。
今まで羊や豚、馬、猫や犬・・・・話しかけても反応なく、まったく動物とは話せなかったらしい。
だからスキルを使わない仕事を探していたけれど、雇ってくれるところはスキルに期待するところばかりだったそうだ。
「話せる条件は何なのだろうね」
「とにかくリアムが話せて助かった」
「まだ油断はできないけれど、話し合いができるということは助かるよ」
私、ブレナン、セドがリアムに話しかけると、リアムが涙目になったのが恥ずかしいのか片手で目をこすっている。
「いままでこのスキルで苦労してきたけれど、こいつらに会うために女神様が俺に与えたスキルかもしれない」
「そうだね。あと元飼い主さんの家族か親戚がこの子たちを持て余して、眠らせてこの島に連れてきたのかな?」
私の予想にセドも同じことを思っていたらしい。
ただ元飼い主さんの家族なり、親戚がメルたちを殺さないでくれたことには感謝だし、この子たちが人を恨んでいなくてよかったと思う。
私はリアムにナナとメルにこの島のどのあたりに住んでいたのか聞いて貰うと、木の実がたくさんある場所にいたそうだ。
ナナとメルは食べ終わると満足したらしく、明日からお手伝いをするといって帰って行く後姿を見ながらセドと私は話す。
「木の枝を伐採していったから、ここに来やすくなったのかもな」
「そうかも、でもリアムがいる時で助かった」
「まったくだ」
翌朝、朝食をとっていると、メルとナナが私たちのところへ向かってきていたが、メルはずっと2足歩行で歩いていて、ナナはメルの肩に乗っている。
私たちの傍まで来るとメルは立ち止まった。
昨日とは違って今は朝だから、メルとナナの容姿がはっきりとわかる。
メルはこげ茶色の毛並みで可愛らしい顔をしている。
ナナは尻尾が大きくふさふさで全体的に薄茶色の毛並み、首下からお腹辺りは白い。
2匹の首輪にはそれぞれの名前が彫られたネームプレートがついていた。
「メル、ナナおはよう。お魚と果物食べる?」
私が聞くと、食べたいとの返事をリアムが教えてくれたので、お魚をハーブ塩で焼く。
メルは魚を食べ終わるとリアムに土を掘る道具があるかと聞いてきたらしいので、私はツルハシと鍬を、マジックバッグから出した。
するとメルはツルハシを持って2本足で歩いて切り株に行く。
そして切り株周辺の土をツルハシで柔らかくした後、切り株を持ちあげた。




