表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

佐藤大輝、パーティーに行く

都心から少し離れた場所に建つ小さな雑居ビル、その地下へと続く薄暗い階段を降りていた


DDパーティーに潜り込むために


DDと悪魔を関連付ける情報は今のところない

正直関係があるかどうかもかなり疑わしい

それでも何故わざわざ今こんな事をするのかというと、山田や山田の彼女にDDというドラッグの影が近付いているからだ


仮に、もし仮にだ

悪魔とDDに因果関係があるとする。例えば【DDの副作用で人が悪魔になる】とか

そうだとしたら、山田や山田の彼女が危ない

俺は実際に人が悪魔になる瞬間をこの目で見ている


ギャル店員は少なくとも一週間前までいつもと同じで変わった様子はなかった

悪魔になるにはきっと何かしらの条件がある筈だ


俺はそれを知りたい確かめたい

自分の為にも


考えている内に扉に突き当たる

鬼が出るか蛇が出るか悪魔が出るか

覚悟を決め、扉を開けた


途端に耳をつんざく高音と身体を震わす重低音が俺を迎える

中は薄暗くカラフルなライトで照らされ、行ったことは一度もないが恐らくクラブというのに近いだろう


想像していたより広く、複数のテーブルがあり奥にはバーカウンターの様なものもある

客はざっと30人くらい

驚く事に人目を憚らずテーブルをベットにして身体を重ねる男女が数組いた

つまりセックスをしている

周りは特にそれを気に留めもせず、口と耳を寄せ合い談笑したり、肩や腰を揺らし踊ったり、各々好きに過ごしている様だ


呆気にとられたが棒立ちして不審に見られるのもマズい

気を取り直しなるべく平然を装いバーカウンターを目指す


バーカウンターにはテーブルを挟みバーテンダーが一人、それ以外に人はいなかった

取り敢えず俺は座る


「何か飲みますか?」

声をかけられた


「ビールで」

この状況で酒を飲む余裕は正直ないが、何も飲まずにこの場所にいるのも不自然だろう

仕方なくビールを注文した


背を向けて改めて会場を見渡す

異様な光景だ

異様な光景ではあるが、悪魔もいなければ化物もいない

あの日のギャル店員の様に、明らかに具合の悪そうな人もいなかった


「お待たせ致しました」

振り向くと目の前にはビールと。籠に乗せられた大量の錠剤があった


「これは…」


「ビールとDDでございます」


これがDD…見た目はただの緑色のカプセルだ

手を付けないのも不自然だろう

それを1つ掴むと口に入れるフリをしてビールを飲んだ

飲みたくもないビールのグラスを傾け無理矢理流し込んでいる途中、ふと視線を感じて横目で隣を見る


カウンターに頬杖をつきながらこちらを眺める人がいた

少し大きい灰色のパーカーを着てフードを深く被っている。

フードの下には艶々とした黒い髪、フードの横からはウサギの耳の様なものが垂れ下がっていて、青いチェックのミニスカートは露出度が高く、組まれた綺麗な足はかなりギリギリのとこまで見えてしまっている


個性的なファッションだ

最近はこういうのが流行っているのか?


「おにーさん、ソレ飲んだの?」

久し振りにそう呼ばれた

ソレとはビールのことではないだろう

少々面食らったかが馬鹿正直に答える訳にはいかない


「あ」

答える前に彼女の肩に手が回される

筋骨隆々で全身に入れ墨の入った男だ

驚くべきことに男は全裸だった


「ねーちゃん、あっちで俺らと遊ぼうや。女の数が足りなくてよ」

無意識に胸へと手を伸ばす

胸にはお守りとして銃を忍ばせている

実際に撃つつもりはないが、やむを得ない場合には脅しの道具として使うつもりでいた


「貴方はソレ、飲んだの?」

細い身体に太い腕を回されているのに彼女は一切動じず、同じ質問を男にもした


「ああ?DDか?飲んだに決まってんだろうが!ねーちゃんも飲んだ方がいい!こいつは最高だぜ」

唾を飛ばしながら笑う


「最高なんだ」

そう言うと彼女は籠に手を伸ばし錠剤を片手一杯に掴みとった


咄嗟に止めようとするが。それよりも速く彼女が動く

肩に伸ばされた男の腕を掴み捻り上げ、どこにそんな力があるのか片手で男を壁まで押しやる


「いででででっ!」

かなり体格のいい大男だが抵抗すらできず、叫ぶことしか許されない


「そんなに好きならもっと飲んだらいい」

男の口に掴んでいた錠剤を押し込み、細く綺麗な足で男の顎を真下から蹴り上げた


「あっ…ガッ…」

前歯を飛ばして白目を剥き、よろめきながら大の字で仰向けに倒れる男


俺はその様子を口を開けて呆然と眺めていた

凄すぎる…出し物かなんかだろうか…



「アッ…ガ…がガガガがガ」

明らかに気を失っていただろう男の様子に異変が起きる

駄々をこねる子供の様に手足をジタバタと動かし、目は血走しり口から泡を吹く


尋常じゃない…

これは、あの時と同じ…!


「ア゙ア゙ァ゙ア゙アア゙アッー!!!」

男が割れた

中には全身に毛がない緑色の皮膚、グルグルと忙しなくギョロつく焦点の合わない目、異常に発達して膨張した筋肉


悪魔だ…!

悪魔はのそりと立ち上がり首だけをグルりと360度回すと、グルグルと回していた目をピッと一箇所に合わせた


パーカーの彼女に向けて


「逃げて!!」

叫び、胸元から銃を取り出す

彼女は悪魔の方を向いていて、こちらには目もくれない

恐怖で身が竦んで動けないのか!?


悪魔に銃口を向け狙いをつけていると

視界の端に動きがある

パーカーの彼女が両手を自身の前の何もない空間に向けてズボッと差し出す

すると驚いたことに前腕から先が透明になり消えてしまった

そして両手を後ろに一気に引き抜く

消えていた筈の前腕が現れ、その両手には巨大な黒い塊が握られている

彼女自身の身体より巨大なそれは、6つの銃口を円形に揃え長い首を伸ばしている

ガトリング砲

何もない空間から巨大な銃火器が姿を現した


悪魔が飛びかかるも、ドルルルルルと巨大な銃が回転しがら火を吹く

悪魔の身体は空中で一瞬にして穴だらけになり、彼女に触れることなく床に倒れた

圧倒的だ…


途端にキャーッという悲鳴があがり音楽が止む

パーティーの参加者達が異変を理解したんだろう

さもありなん

人が化物になり化物が撃ち殺される

俺も初見であれば迷わず逃げ出している


参加者達が一斉に出口へとかけだす

最初に扉へと辿り着きドアノブへ手をかけた人が崩れ落ちた

なんだ?と身を乗り出して確認しようとすると、横にいるパーカーの彼女の存在を思い出す、彼女の両手にはまだ巨大な銃が構えられていた


扉に向けて


ドルルルルルという音と共に弾丸が舞い血が跳ね人が倒れる


数十秒後、俺と彼女以外に立っている人間は1人もいない、辺りは一面血の海だ

悪魔は死んだ

でも地獄は目の前にある


「さて」

パーカーの彼女が声を出す

その手からガトリング砲はいつの間にか消えていて、こちらに向かって歩いてくる


「と、止まれっ!」

銃口を彼女に向け、警告をする

こいつはいかれてる!頭がおかしい!

逃げ惑う人間を30人以上撃ち殺した!


「あ、あれ?」

おかしい手に銃がない

それに気付いた時には目と鼻の先に彼女がいた

俺の銃をこちらに向けて


「もう一度聞くよ?おにーさんはソレを、DDを飲んだの?」

最後の審判とばかりに問う


「の、飲んでないっ、俺はDDと悪魔について知りたくて潜り込んでいただけだ!」

両手を上げ抵抗の意思が無いことを示す


「ふーん…」

銃を興味深そうに眺めているが、銃口は俺から外れない


「本当だ信じてくれ!」


「これ、いい銃だね?どうやって手に入れたの?」

銃を持っている事を怪しんでいるのか?


「ダークウェブで売人から買った」


「何の為に?」


「悪魔から身を守る為に」


「そんなの警察に任せなよ」

それができたらそうしている


「自衛隊は俺を助けてくれたが、俺の記憶を消そうとした。警察も信用できない、記憶を消されたら悪魔に対抗する術がなくなる。今度こそ悪魔に殺される」


「ふーん…そっか…」

彼女は俺の身体を下から上まで眺めると、クルッと手首で銃を回転させ銃口を外し、持ち手をこちらに向ける


「疑ってごめんね、おにーさん」

パーカーから生えた耳をぴょこっと揺らなしながら

銃がこちらに差し出された

受け取ろうと手を伸ばすと銃が渡されると同時に小さな柔らかい手が俺の手を軽く握った


「でもこれ以上悪魔やDDに積極的に関わるのはオススメしない」

真剣な声音と真剣な眼差し、その時初めてこの女の子の顔をはっきりと見ることができた

白い肌にすこし青みがかった目、小さな鼻に薄いピンク色の唇

可愛い…

いやいやそんな事を考えている場合じゃない


「言われなくてもそのつもりだよ。DDは人を悪魔に変える薬なんだろう?」

ガトリング砲で人を撃ち始めた時には大いに混乱したが、彼女が狂人なら俺はとっくに殺されている

なら人を撃ったのには何か理由がある筈だ

やむを得ない理由が

彼女はそれに何も答えず、握っていた手にキュッと力を込めるとこういった


「悪魔に気をつけて」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ