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転生したら大国の大統領だった件 ~魔法に200%の関税をかけたら平和になった~

作者: 多摩川一人


異世界転生ものはたくさんありますが、今回は「大統領」という立場から異世界を平和に導こうとする物語です。ヒーローでも勇者でもない、しかし強引すぎるくらい現実的な主人公が、ファンタジー世界にどんな風を吹かせるのか。少し風刺がかったコメディとして、お楽しみください。

「……え、ここどこ?」


目を覚ました瞬間、小川は天井の高い黄金の部屋でソファに座っていた。絢爛たる内装に目を奪われていると、黒スーツの美女が目の前に立ちふさがった。


「大統領、次の演説まであと五分です」


「え?」


「補佐官のミナです。ご記憶が混乱しているのは魔法転移の副作用かと」


小川――いや今やユカイ国大統領レオニダスは、脳内で起きている事象を整理する間もなく、壇上へと連れ出された。



初演説。

目の前には何千、何万という市民と魔導通信を通して見守る何百万の視線。


(やばい、人生で一番緊張する……)


脳裏に浮かぶのは、元の世界で苦しんだブラック企業の記憶。理不尽なルール、意味不明な会議、上司の逆ギレ、深夜残業――そして、絶望。


彼はマイクを見つめ、口を開いた。


「魔法のせいでこの国が乱れるなら、いっそ魔法には――200%の関税をかけよう」


一瞬の静寂の後、万雷の拍手が起こった。


(え、ウケた?)


この日、魔法課税法案が誕生した。



魔法が自由に使われる世界。

それは便利だが、平和とは限らない。


貧民層は魔法を買えず、富裕層だけが「火球」や「治癒」を私有化。

犯罪に使われる魔道具、戦争を引き起こす魔晶兵器。


レオニダスの決断は一見過激だったが、経済と治安に安定をもたらした。


「関税収入の一部を、公共教育と福祉に回します」

「国内魔法学校は無税です。地産地消が基本ですから」


ミナの冷静な補佐により政策は整備され、市民の魔法依存は徐々に減っていった。



次に着手したのは、紛争地帯のモンスター問題だった。


レベル3以上の高位モンスターが跋扈する地域では、軍も治安も機能しない。


「モンスター管理法により、紛争地域からレベル2以上のモンスターは国外退去処分とする」


「人権は?」と記者が問うた。


「レベル3オーガが人の言葉を理解したら考えよう」


こうして、危険モンスターの一掃が始まった。

代わりに、弱いレベル1モンスターたちが住民と共存するエリアが増え、農村の平和が戻ってきた。



国際会議。


魔法輸出国アズワール共和国の大魔導師は怒り狂っていた。


「ユナイ国のせいで我が国の魔法経済は破綻寸前だ!」


「破綻するほど依存してるのが問題なんじゃないですか?」


静かに答えるレオニダス。


「我が国は武力を一切行使していません。ただ、魔法を買うなら正当な税を払ってもらうだけです」



数年後、世界から戦争は消えた。


魔法の流通が制限されたことで、国家間の力のバランスが安定。

ユナイ国は強引な政策により批判されながらも、最も安定した国として評価されていた。


「大統領、また他国から非難声明が出ています」


「いいよ。言わせておけ」


レオニダスは笑った。


「平和ってのは、全員が納得するもんじゃない。誰かが腹をくくるもんなんだ」


ミーナは静かに頭を下げた。


「…あなたは悪役かもしれません。でも、この国は笑っています」


――その日、大国の大統領はまたひとつ関税を上げた。 誰にも見えない未来を、ひとり静かに背負いながら

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

異世界×政治×風刺という、ちょっと異色な組み合わせでしたが、楽しんでいただけましたら幸いです。「異世界の勇者」はもうたくさん見ました。ならば、次は“異世界の悪役大統領”でもいいじゃないか。そんなノリで書きました。

もし続きやスピンオフを読みたいという声があれば、ぜひ感想で教えてください!



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